矢鯨芽依那の告白と試験の意義
恋愛奉仕活動始動‼
迎高之龍 一年c組 矢鯨 芽依那。
現在俺と実恋が机を隣り合わせにして誰のかわからない席に座っていて、矢鯨さんが机を挟んで向かいに座っている。
「この時期に依頼って来るもんなんだな。まだ入学してから一週間も経ってないから意外だな」
「入学して初めての依頼だよ。それで、矢鯨さんの依頼内容について聞いておきたいんだけど話してもらっていいかな」
「は、はい。実は恋愛関係で頼みたいことがあるんですよ」
「「うん知ってる」」
「それで、相手のことで少し引っかかるものがあって」
「その好きな人が誰かに恋心を抱いているんじゃないかってこと?」
「そうではなくてですね。実はすでに告白はしているんです」
「返事を有耶無耶にされたってことか。もしくは、他の人たちからも告白を受けているかもしれないといいうやつか」
「相手は年上。二年の水戸瀬 勇次先輩だよ。サッカー部エースの」
「お前なんでそんな情報持ってるわけ」
「情報がこの活動では必要不可欠なんだよ」
いや。だとしてもおかしいだろ。この短期間でよくそんな情報を得られるな。
入学して数日で校内の生徒全員分の情報を把握してたりしないだろうな。
なんかこいつならあり得そうな気がしてきた。
「引っかかることって、何か隠してるってことか」
「告白したときは違和感はなかったんだけど。その時、先輩は近いうちに試験があるはずだからその結果で決めさせてほしいっていっていたんだよね」
なんつーか、決め方が俺と実恋の協力関係と似てるというか、ほぼ同じじゃねぇか。
「生徒間で成績を把握できるのは確かだし、学校側はそれを利用して生徒同士切磋琢磨してくれるのを狙っているんだと思う」
「先輩の言い方も気になる。試験の順位が上位だったらとか、学年や支部順位が何位だったらじゃなくて結果でていうのは必ずしも上位の人じゃなきゃいけないって訳じゃないかも」
確かにその通りだ。今回の一番の問題はそこにあるのかもしれないな。
もしその先輩が成績優秀な人が好きな場合学年上位に入れば解決するが、平均的な頭脳の持ち主がいい人だっている。またこれは数少ない例だが、成績の悪い子に教えてあげたいがため頭の悪い子が好きという可能性がある。
「でも、今回の試験内容が難解すぎて同じクラスの友達に聞いてみたら、みんな問題内容が一人一人違ったんだよね」
彼女のその一言に俺は、いや。俺と実恋は目を見開き口を開いたままポカーンとしていた。
「やはり俺達一人一人に出題されていた問題の内容は全部違ったか。となると先生方は一体どうやって順位をつけるつもりなんだ」
「それはやっぱり。問題の解答内容で点数を決めるんじゃないかな」
「(何言ってんのこいつ。)」
普通の筆記試験ならば確かに解答内容が正解か不正解かで配点された得点の取得率により順位が決まっていただろう。でも今回の試験はそうではない。
一人一人の問題の内容すら違い、更にどの教科からの問題なのかも分からず、問題の模範解答の姿でさえ見えはしない。その上、問題数がたったの五問だけという史上稀にみる問題にも思えてきた。
「取り敢えず。東雲先生にでも訊ねてみっか」
俺たちは、その日その場で解散するも全員が寮生だったため一緒に下校した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして翌日のことだった。
俺の部屋には土曜にも関わらず私服姿の実恋と矢鯨さんのお二人が俺のソファーに寄りかかりながら、氷とシュワシュワと気泡が弾ける透明な液体が入った水滴を張ったガラスのコップにストローを差しながら差しながらくつろいでいた。
「おい何してんだよ」
「昨日の話の続きをしに来たのよ~」
「だるそうに寄りかかっている時点で既にやる気ないようにしか見えないんだが」
「私たちが悪いんじゃなくて、この人を駄目にするフカフカのソファーが悪いのよ」
「そのソファーに座ったお前たちが悪い」
何時まで経っても話が進まないので俺は実恋の閉ざしかけている瞼が完全に隠れるように上から先程蒸し上がった熱々の蒸しタオルを投下した。
「あっっっっっっっっっっつっぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
両目を抑えつけて狼狽えて悶絶している実恋の隣に座っていた矢鯨さんは目を見開いて絶句していた。
「目が目が焼けるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
「そんなことどうでもいいから早本題に入れよ」
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