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恋奉人~貴方の片想い奉仕します~  作者: 蓮之都
協調篇
5/7

協力条件

長い間お待たせして申し訳ありません。

漸くあらすじ通りの展開を書き終えました。


長めですが読んでいただけると嬉しいです

( ・∇・)

窓から差し込む日差しに照らされて俺は目を覚ました。


見慣れない部屋の天井に見慣れない壁。ふかふかのベッドに最新式の防虫作用が搭載されたクローゼットに勉強机と本棚。

居間には、40インチ程の大きめのテレビにソファとマッサージチェア。キッチンにはダイニングキッチンと冷蔵庫そして食器洗浄機。これらを眼に入れて漸く実感が湧く俺はあの迎才に来たんだと。


「顔洗ってこよう」


ボサッと呟いて頭を掻きながら洗面所ヘと向かった。昨日一通り出しておいた洗顔料を使って頭を洗い、愛用しているタオルで顔を拭く。


現在6時半と丁度良い時間帯だ。


キッチンでエプロンを掛けて冷蔵庫から肉、野菜、缶詰めと取り出し軽く調理して朝食を済ませた。


家ではよく家事をしていたから苦ではなかったが弁当を作るのが大変だ。健康を心掛けて栄養を考えて作るとなると食べる量も考えなければならない。


作り上げた弁当を風呂敷に包み鞄の中へと入れエプロンを脱いで寝間着から制服へと着替え玄関に向かった。


部屋を出る前に部屋の方へと顔を向けて改めて思う。


一人2LDKって広くね?

寮っていうかマンションじゃん。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



現在エレベーター内で最悪な事態が発生中。


「はぁ~」


溜め息を吐きながら俺は自分の目の前にいる人物を見た。間違いようがない黒い髪に白い肌、整った顔立ちにきっちりと着こなされた制服。雨野雫だ。


「何か不満でもありますか」


不満か、いや不満ではない男子としては嬉しいシチュエーションだからな。しかし、俺はこの空間が気まずいのだ。


エレベーター内には俺と雨野さんの二人だけ、同じクラスの雨野さんが俺を男子だと知っているだろう。

だからこそ場違いな気がするんだ、昨日の夜から寮内で男子と擦れ違ってすらいない為だろうか。

ここって男子禁制の女子寮でしたなんて事ないよね。


「いや、不満はないよ。只、雨野さんもあの階にある部屋を使っている寮生と知って心細くなっているだけ」


あの階にいる人物は俺が知る限りでは、今のところ俺と実恋さんと隣の部屋の女子と雨野さんの四人だけで、男子は一人だけだからだ。


「何を言っているのか分からないけれど。昨日は男子達に群がられたせいで、他の女子とまともに話が出来なかったのよ。でも貴女に会えて良かったわ、同じクラスの女子同士(・・・・)仲良くしましょう」


気のせいですかね。今、女子同士って言った?

嘘だろ、男子だって理解されてないの?マジで。


「まぁ、よろしく」


うん、もうね、どうでもいいや。

なるようになってしまえ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



寮を出て龍之支部へと向かった俺は、途中でハンバーガーでお馴染みの某ジャンクフード店によって登と合流し一緒に登校した。


教室に着くと俺の席の近くで鮫川(玩具を見つけた少女)さんがメイク道具を両手に構えて俺の方を見ていたので、東雲先生が来るギリギリまで教室の外で待つことにした。


ホームルームを終えてクラスの女子から逃げようと試みるが教室の扉(退路)を絶たれて捕まった。


「逃げなくていいじゃん」


「本当にやめてくれないか」


「「「それは無理だね」」」


この三人覚えておけよ。絶対、俺にメイク(悪戯)したこと後悔させてやるからな。


「ねぇ少し良いかしら」


三人に抵抗していた俺に雨野さんが話しかけてきた。

その瞬間教室の談笑の声が無くなり静まり返った。何が起きたのか、その場にいた全員が分からなかったのだ。


「良いよ」


気が付くと俺はそう返答していた。美少女に話しかけられた嬉しさからか、それともこの三人(脅威)から逃れるためか、それは分からなかったがどちらにしろ俺にとってはプラスでしかないので良かった。


雨野さんに付いて行くと彼女は人気のない廊下で立ち止まり深呼吸をして俺の方を向いた。

仄かに赤みがかった顔を見て不意に、ドキッとしてしまった。


「あ、あのね、私実は…」


この時俺は悔しさを抑えていた。

このシチュエーションはどう考えても告白する場面だろう。しかし、俺は彼女に女子だと間違えられている為、それだけは絶対になかった。


俺がそんな事を思考していると彼女は口をゆっくりと開けて続けた。


「私、実は彼氏が欲しいのよ」


は?


聞き間違えか?今、雨野は彼氏が欲しいと言った気がする。


「雨野さん。貴女の場合、作ろうと思えば直ぐにできるのでは」


「それじゃあ駄目よ」


「何で?彼氏が欲しいだけなんでしょ」


「私が欲しいのは私の事をちゃんと考えて優しく接してくれる彼氏!!それ以外の只付き合って周りから羨ましがられたいだけの彼氏なんていらないのよ」


成る程それは一理ある。

確かに雨野に群がる男子の殆どが周りから羨望の視線が欲しいという一方的な理由からだと思う。

本当に彼女の事を理解して、彼女を受け入れてくれる男子と交際するとなると相手を慎重に選ばなければならない。


「あのさ──」


「だから理想が高いって、しずちゃんは」


俺が何かを伝えようもするも、後方から聞き覚えのある声が遮った。


後ろを振り向くとそこには、長い茶色い髪をシュシュで纏めて肩に掛けた女子───実恋さんが居た。


「結、何でそう思うの」


「え、どうして実恋さんがここに」


「おはよう。えっと、そういえば名前聞いてなかったね。何でって、人間関係上で誰か一人を完全に理解する人なんて存在しないのよ。しずちゃんの場合は、自分がして欲しいことをしてくれる男子ってだけじゃなく優しさ迄求めてるから、探すのも結構大変なんだよ」


「ううう」


「それがわかったら彼氏を作るの諦めたら」


実恋さん言っている事は間違いじゃない、でも何故か最初から諦めているような気がする違和感残る。


彼女達の関係はよく分からないが、雨野さんに彼氏を作らせないように実恋さんが誘導しているようにも思えた。


「もう一度考え直して見る」


雨野さんは下を俯きながらトボトボと先に教室へと戻って行った。

そして二人だけになった為、俺は先程の疑問を実恋さんに訊ねることにした。


「もしかしてだけどさ、誘導してたりする」


実恋さんはニコニコとした笑顔から虚を突かれたように驚いた表情になった。


「よくわかったね」


「まぁなんとなく、雨野さんに彼氏ができると何か困る事でもあるの?」


「恋愛奉仕活動をしていても傷付くことはあるんだよ」


そう静かに呟いて彼女も自分の教室へと戻り、俺も一時間目に間に合うように教室へと戻った。

勿論、質問攻めにあったものの東雲先生が来たことによって直ぐにその場は収められた。


その後、午前の授業を終えて昼休みに差しかる頃、俺はあることに気が付き確認のために隣の席に座っている明るめの茶色い髪のサイドポニーの女子に話を掛けた。


「あのさ、鮎澤(あゆざわ)さん」


「もー詩野って読んでよ」


「流石にそこまで親しくはないから難しいなぁ」


「そういうこと言うから男子の友達出来ないんだよ」


関係ないよ。

女子に近い容姿を俺は気に入ってる訳じゃない。

どちらかといえばコンプレックスだ。


「そんな事よりさ、実恋さんって知ってる?」


「実恋さん?あ~、あの茶髪の」


人の事言えるのか。

しかし、鮫川さんが言っていた。彼女はフランクな性格で1日あればそれなりの交友関係が気付けるらしい。

実恋さんがどんな人かは彼女に聞いておいて損はないだろう。


「確かねぇ、面白い活動してるらしいよ」


面白い...活動。


「えっとねぇ、何でも恋愛相談というよりは違って、片想いしてる子に最高の状況で相手に告白させて恋人同士にしてるんだって」


なるほど、恋愛相談とはまた違う意味合いでサポートをしているという事か。

それで自分から堂々と恋愛奉仕活動人(あんなこと)を口にしてたんだな。


「何々、もしかして実恋さんに興味でもあるの?」


「いや、ちょっと気になっただけ」


「その想い届くと良いね!!」


人の話を聞いてないな。


「恋バナですか?楽しそうですね」


弁当を食べようと鞄から出した時だった。鮎澤さんと俺の席の間にいつの間にか大原 莉菜(おおはら りな)が弁当袋を片手に持って立っていた。


彼女の家は母が占い師をしている所為か、他人の恋愛話を聞くのが好きでこういった話題においては地獄耳だそうだ。


鮫川さんと鮎澤さんが教えてくれた。

でも変な誤解を招きたくないので強引な方法で話題を変えようと思ったが無理だな。

諦めるか。


「それで要くんはどんな人に恋心を抱いたんだ?」


以外にも先に質問をしてきたのは他でもない、前の席に座って椅子を180度回転させた科樹だった。


「何故科樹まで参加しくるんだ?」


「友人の恋を応援しないなんて野暮な事はしないよ」


即座に後ろから腕を回して肩を組むように近寄ってきた登がドスの掛かった声で参加してきた。


「まぁその恋の相手次第で命はないと思えよ」


「だから雨野さんみたいな存在感が大きい人は苦手だから大丈夫だって言ったろう」


お前の殺意は柱さん並みにあるよ。なんで彼女でもないのに、そんな重い愛が現れるの。

不思議だよ

俺は弁当箱出して蓋を開けて食事を始め、質問攻めに対して黙秘権を行使した。


午後の授業を終えてから俺は放課後にもかかわらず勉強を開始した。

誰もいない教室は自室よりも集中力が向上している気がして頭に入りやすいからだ。


「ねぇ橋内さん?」


「!?」


突然背後から声を掛けられた所為か俺は咄嗟に素早く後ろを振り向いた。

昨日と今日で登が背後から現れた事によって、条件反射のように身構えてしまった。


「何もしないよ」


予想外にも目の前には実恋さんが居て彼女はニコニコとしていた。


「実恋さん?何してるのこんな時間に」


「橋内さんに用があって、恋愛で悩んでるって詩野っちゃんから聞いたよ」


俺の頭の中では瞬時に状況把握が出来てしまった。

鮎澤さんに実恋さんの事を訊ねた結果、俺が彼女に好意を抱いていると思われ、一緒に居る状況を作ったのだろう。


まぁ、しかし、丁度良かった。

俺自身の恋の悩みはないが登の恋を成就させてやりたいからな。

協力を要請しよう。


「あぁ恋の悩みごと。登...城之崎の恋を応援することになったんだけど。協力してくれないかな」


「城之崎くん?なるほど。良いよ。城之崎くんとやらを橋内さんに振り向かせてあげれば良いんだね」


彼女は腕を組み上半身だけ考える人のようなポーズを取り頭を働かせている。


えっ?は?えっ?

今なんて言った。鮎澤さん、もしかして俺が男子だってこと伝えてないのかよ!!


「う~ん、そうだなぁ。まず最初に城之崎くんがどういう人か知りたいから教えてくれるかな?」


「ちょちょちょっと待って!!」


「ん?」


俺の声を聞いて実恋さんはキョトンとした表情で俺の方を見た。


「あのさ。もしかしてだけど、実恋さんって俺の事女子だと思ってる?」


「当たり前でしょ!!何を言ってるの?」


質問に対して、さも当然のように答えた実恋さんは俺を見ながら眉間に皺を寄せてじっと見つめてきた。


「だったら!!!それは間違いだから」


彼女の顔は真剣に思考を巡らせるような表情から徐々に青ざめていき軽蔑するような眼で一言呟いた。


「キモ」


「え?」


俺は何が起きたの全く理解できなかった。

ただ単純に信じられなかったのだ。常にニコニコとして愛想よく接していた彼女からそんな言葉が出てくるとは思いもよらなかった。


「キモい。そんな容姿で女子と仲良くなって、最終的には、あわよくば襲うつもりだったんでしょ!!!」


怒りや憤りといった感情が彼女を昂らせて冷静さを失わせているのだろうか。

普段の彼女からは全く想像の出来ない言葉が投げ掛けられる。


「(キモいか...ははは...キモいか)」


「近付かないでよ。私にも、他の女子にも、特にしずちゃんには金輪際半径三メートル以内に近づくな!!!」


「(俺は今現在何を責められているのだろうか)」


全く理解できないし、全く良い思考判断が行えるようには思えない。ただ言えることは一つだけだ。


「(何で俺はこんな容姿で生まれてきてしまったのだろう)」


実の両親からもらった唯一の形見のようなこの容姿すら、俺にとっては釣り合いのとれていない神様が授けた一物なのだろうか。

どんなに自己嫌悪に陥っても俺は自分自身を本当に嫌いになった事はなかった。

それどころか両親から受け取った一生涯かけがえのない宝物なのかもしれないと思いながら、ちゃんと向き合うことを選んだし後悔はしていない。

しかし、それを自分以外の誰かに貶されたのは始めてだった。


「女子の気持ちを少しは考えなさいよ!!!」


プツンと俺の中で何かが切れた。


張り詰めた緊張の糸だろうか。

理性で抑え込めなくなった本能だろうか。

いや、違うな。

両方だろ。


「うるせぇよ。俺だって好きでこの容姿を持って生まれてきた訳じゃない、俺にだって苦労があるんだよ。お前に何が分かる?恋愛活動奉仕人?なんだそりゃあ?俺からしたら只痛々しい発言してるようにしか見えてねぇよ。お前からしたら男なんて最低な奴っていう印象があるのがしれない、でもな、だからって生まれもった容姿(もの)否定される筋合いはねぇんだよ」


恐らく俺の顔はひどい有り様だったのだろう。先程の実恋さんの顔は笑顔から女子をたぶらかした事に対する憤りヘと変わっていたが、今は只怯えているのが分かった。

小動物のように弱肉強食の世の中で必死に生き抜こうとしていたときに、天敵に見つかり恐怖を感じ動けずにいた。


暫くの間、俺達の間には静な沈黙が訪れたが、その間に俺は冷静さを取り戻し、荒れた息を整えた。


「(やってしまった)」


女子相手に思いっきり罵倒してしまった。

俺は頭を掻きながら下を向いた。


「ゴメン。なんか知らない間に触れちゃいけない逆鱗に触れちゃったみたいだね」


謝られるなんて予想しておらず、実恋さんの方ヘと視線を向けると彼女は水滴を床に溢しながら頭を下げてきた。


「謝らなくていいよ。俺も言い過ぎた。初めてだったよこの容姿をあそこまで貶されたのは」


しかし、彼女は頭を上げずに再び謝って来た。


「ゴメン。私、身内の関係で男性は最低な奴って勝手に決め付けて。貴方に酷い事を言っしまった」


「謝らなくていいって。慣れてるよ。女子に間違えられるのと容姿を貶されるのは」


そうだ。慣れている。今回は今まで以上に辛辣な言葉を向けられた為、我慢できずに爆発してしまったのだ。


「実恋さんの家庭に何があったかは知らないけれど、俺の友人に恋愛奉仕活動をしてくれるのであれば手伝ってくれないか」


しかし、未だに上がらない彼女の頭を見てから、今度は俺が頭を下げた。


「実恋さんの気持ちを考えようともしないで酷い事を言ってしまいすみませんでした」


俺は頭を上げずに彼女の方を見た。すると彼女はまだ潤んだ瞳ではにかみながらも笑顔で口を開いた。


「お互い様だよ」


そんな彼女を見て一安心し、俺は一度頭を上げて再び頭を下げた。


「頼む!登の交際できるように協力してくれ」


体感時間的に数分だろうか。彼女から返事はなく只々時間だけが過ぎていった。


暫くしてから彼女はいつも通りの声で真剣に答えてくれた。


「無理、どんな事情かは知らないけど。協力は出来ない」


本来ならこの辺で諦めていただろう。

しかし、引くわけにはいかない。唯一の親友の初恋だ。そして、雨野さんは言っていた。


『自分の事を考えて優しく接してくれる彼氏が欲しい』と


登は俺みたいな奴に接してくれた。容姿を気にせず同じ男子として友人でいてくれた。

アイツはアイツなりに周りの人の事を人一倍よく考えて接してくれる奴だ。

裏切ることは今まで一度も有りはしなかった。


「手伝えることなら協力するから」


俺は頭を下げたまま再び実恋さんの協力を要請した。


俺は瞼に力を入れ閉じていたので、今実恋さんがどんな表情をしていたのかなんて、これっぽっちも分からない。

でも俺は微かに呟く彼女の声をちゃんと耳で聞き取った。


「それなら...いいけど...条件がある」

今回で序章が終わり

次からは一章です。


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