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恋奉人~貴方の片想い奉仕します~  作者: 蓮之都
協調篇
3/7

協力関係

今回は


妹登場です


最後まで読んで頂けると嬉しいです。

男子トイレの手洗い場を使って俺は顔を洗っていた。


何のため?決まっている頑固なメイクを落とすためである。


「やっと取れた」


「おっす。あらら可愛い顔に戻りましたか。折角、魅惑的な顔にして貰ったのに」


洗った顔をタオルで拭いていると後ろから登が話しかけてきた。声色で登が笑っているのが判る。


(こういう時の登は無性に腹が立つ)


鏡越しで登を見ると右手にスマホ持っていた。トイレなのに。


「完全にトラウマができた」


「あ~あ、写メ欲しかったなぁ」


(だからスマホ手に持ってるのかよ)


本当に最悪の一日でしかなかった。メイクをさせられた側の気持ちにもなって欲しい。そのお陰で、一時限目に東雲先生にも笑われてしまった。というか教師のくせに生徒を笑うってどうなんだよ。


「次は校内案内だよね」


「あぁ確かな」


濡れた髪の水分をタオルで拭き取っていると登が顔を赤らめながら真剣な表情で話をし出した。


「あ、あのさ要。俺の話を聞いてくれるか?」


「どうせ、雨野さんのことでしょ」


雨野さんとは、先程教室内で登が静止するほどの黒髪の美少女である。


本名は雨野あまの しずく


ホームルーム終了後、俺と同じく周りには生徒たちで埋め尽くされていた。その中の男子は本命なんだろうな。確実に。


考えを当てられ驚きを隠せない登の表情が笑えたのは黙っておこう。


「よくわかったな!!」


「だって入学式前に一目惚れしてたじゃん」


「雨野さんと交際したい。つーか結婚したい」


交際したいまではなんとなく解るが、その後のぶっ飛んだ発言には呆れるしかない


「なんか、色々と飛んでない?」


「目標は大きく持つことが大切だからな。そこでだ、協力してください」


両手を合わせて頭を下げている登には申し訳ないが凄く面倒な事になりそうだから断ろう。


「恋っていうのはさ、悩んで、迷って、足掻いて実を結ぶんじゃないかな?という訳で頑張って」


「お前のファンクラブ設立して、卒業迄女子扱いしてやる」


断りを入れてすぐに聞こえたおぞましい発言に耳を疑う。


(は?コイツ今何て言った?)


「やめろ!!」


「二つに一つだ。女子扱いされるか、それとも俺の恋の補足をするか」


(どっち選ぶか決まったようなもんじゃねーか!)


出された選択肢に悩む意味などなかった。選ぶのは間違いなく片方だけだとお互いに知っているからだ。


「わかったよ。登には恩があるし、協力するよ。それに選択の余儀ないし」


(本気なんだろうな。出会ってから見たことない位に真剣な眼差しをしている。だとしたらまずは関わりを持つことからか)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



教室に戻り席に着いて先生が教室に来るまで待っていた。戻って早々鮫川さんたちには、ショックを受けたみたいだけど。他のクラスから女子扱いされるのは御免だ。


「えっと、橋内...君?でいいんだっけ」


突然前の席に座っている男子から呼ばれた。凄く迷っていたのでまだ信じられないようだ。


「あはは、要でいいよ」


「え、でも……」


「その方がすぐに反応できるし、呼ぶ方も違和感ないでしょ」


「わかった。えっと俺は」


酒元さかもと君でしょ」


「あぁ。できれば俺の事も科樹しなきって呼んでくれないかな」


「わかった。よろしくね科樹」


「よろしく」


科樹と挨拶した後、少し気になり雨野さんの席の方を見てみると、やはり他の生徒たちで埋もれている。


「やっぱ、倍率高いよな」


背後から聞こえた声で誰なのかはすぐにわかった。というか背後に突然現れないで欲しい。ビックリするから。


「何その必ず誰かと結ばれるのだけは確定みたいな発言は」


「要も狙ってんだろう」


背後から殺意と怨念が伝わってくるのが判る。


「俺は危険を冒さない主義です。ちゃんと身をわきまえています」


「ならよかった。今ここでお前の命を奪わなければならないところだった」


なるほど、だから背後をとるのかよ。


「登は俺に恨みでもあるの?」


「ライバルは少ない方がいいからな」


「俺は協力すると言ったよね」


「告白されたら断れよ」


マイナス思考をやめて欲しい事この上ない。命の危険に関わるかもしれないからだ。


(絶対ねぇよ)


「俺はあんまり目立ちたくないんだよ。関わりすら持ちたくないね。自分の心配をしてろ。お前のライバルは他支部にもいるぞ。きっと」


誰かと交際したいのであれば、まずは友達から始めるのが必然だ。その為に雨野さんの友達と関わりを持つべきじゃないだろうか。


「友達の友達から始めていけば?」


「そうする」


キーンコーン カーンコーン


「よーし。それじゃ校内案内行くぞ~。立ちたまえ君たち」


本礼が鳴ると同時に教室に東雲先生が入ってきた。


校内案内と言っても迎高では案内するのは校舎ではなくて、各支部の生徒達が合同で使う共同スペースだ。


迎高では、支部祭という本校だけの行事があり。そこで使われる施設に共同スペースも含まれる。


「ここが、中央ホールだ。10月に行われる支部祭もここで行う。支部祭の支部の代表は、3年生が三人、1、2年生は四人の計七人だ。学業及び生徒間での信頼や人望、部活動での成績によっては君たちが選ばれる可能性もあるというのとを忘れるな。行事が無い場合でも食堂や購買があるため活用する生徒が多い」


東雲先生に連れてこられたのは、各支部の中間地点に存在するドーム状の建物だった。


その大きさは東京ドームに並ぶ程と言われることもあるらしい。その壮大建物を前に、皆があっけらかんとしている。


その後、他の施設を見て回り校内案内は幕を閉じた。


「おーい、要くん」


「あれ?科樹どうしたの」


その日の放課後、面倒事を避けて下校しようと登と一緒に玄関に移動したら科樹が走って追いかけて来た。


「クラスに来てくれないか。他のクラスの人達が君に会いたいらしくて、教室に群がってるんだよ」


(あぁ~なんか察し)


「う~ん場が収まるなら行ってもいいんだけど。生憎と今日は急ぎの用事があってすぐに帰らなきゃ行けないんだよ」


逃げるための嘘ではなく事実だ。この後、家に帰らなければいけない。

少しでも遅れると依代に何をされるか判ったもんじゃない。


「そうなのか、すまない時間を取らせてしまって」


「悪いね、科樹から先に帰ったと伝えておいてくれないかな?」


「わかった。伝えておくよ」


「ありがとう。じゃあ、また明日」


科樹と別れて、玄関で靴を履き替え帰路についた。


「良かったな」


「うん。男子と関わりを持つことができてよかったよ」


この容姿だと女子に間違えられるから、男子の知り合いを作るのが困難だった。


しかし、今回は科樹という存在がすぐにできたので少し楽になった。


暫くすると学園南部にある雀之支部すずめのしぶに到着した。


校門の前には人だかりができていて誰が中心に居るのかすぐにわかった。


「助け出す?」


「うん。スルーしたら後々面倒になるから」


人だかりの中に入ろうと試みるが人の壁がこんなにも頑丈とは思いもしなかった。


(仕方ない。あれをやるか)


人の壁を作っている一人の男子の肩を軽く叩く。


「あぁん?なんだよ」


その男子生徒が振り向いた瞬間を狙って眼を限界まで開き御願いしてみた。


「あの~通して頂けますか?」


「は、はい」


「ありがとうございます」


何度も同じ事を繰り返して、漸く中心に到達した。


そして、そこには間違える筈もない。予想通りの人物がいた。腰辺りまで伸ばした鮮やかな紫色の髪に、左の額に白い鳥の羽の髪止めを付けた。蒼い瞳を持つ女子生徒。


「やっぱり依代だ」


そう、何を隠そうその女子生徒は俺の義妹いもうとの橋内 依代いよだ。


俺がそう呟くとこちらに気付いた様子で、先程まで周りの誘いを断るのに精一杯だったのが、やっと来たかと眼が訴えていた。


「ごんめなさい。そろそろ帰らなきゃまたねー」


そう周りにいる皆に言って。俺の手を引っ張り逃げるかのように走り出した。


学校の敷地内から出てすぐに、依代は走るのをやめて手を離した。


「相変わらずだな。依代の周りは」


「迎えに来るのが遅すぎなのよ。もっと早く来てよ」


そういう依代の表情は完全に苛立ちを見せていた。


「お前が走り出したおかげで、登と別れちゃったよ」


「え?」


俺は登が来ていた事を敢えて言うことにした。理由は単純だ。


「今、何て言ったの?」


「お前が走り出したおかげで登と別々になったって言ったの」


「な、何でそれを先に言わないのよー!!」


先程よりもご立腹の様子だ。その証拠に依代の眉間に皺ができている。顔もどんどん赤くなっている。


それもその筈、依代は登に想いを寄せているからな。


今は怒りよりもおそらく俺が好きなのかもしれないと思われた。ショックの方が大きいのかもしれないな。依代の瞳は潤んでいて今にも水滴が零れ落ちそうだった。


「言う前に人の事引っ張って走り出したのお前だろ。待ってろ」


仕方ない、今回の件に関しては俺が一人で人溜まりに入って行った事にも責任がある。俺はスマホを取り出し登に電話を掛けた。


『ほーい』


「潮崎商店の前にいるから、そこまで来てくれる」


『了解』


電話を切って約五分後に登と合流を果たし、家に到着した。


家に入って俺は自室に残していた荷物を取りに向かった。


他の二人は、登が夕飯を食べていくと聞いた依代がやる気満々になったことでリビングとキッチンへと向かっていった。


俺も遅れてリビングに入るとそこには、今までに見たことの無い程に豪華な料理が数種類既にできていて、テーブルに置かれていた。


「なんだこれ」


としかいいようがない。


久々に登が来たことが、嬉しくて堪らないのだろうか。


当の登はというとソファに横たわりながらゲラゲラと笑いテレビ番組を見ていた。


(おっさんか?お前は)


リビングに向かうと依代はまだ色々と料理を作っていた。


(これ程の量を食べきれる自信は、とてもじゃないが無い)


冷蔵庫の中が気になったので一応確認してみた。だが、中がとても寂しい状態になっているので、それをこの後義母さんに伝えるのは酷だった。


(ごめん義父さん。多分今月の食事は質素な物になるのがほぼ確定です)


眼をハートにしながら無我夢中に包丁を下ろしているこの子には、後々ご両親の天誅が降るだろう。


すみません。俺はこの状態モードに入った依代を正気に戻す術を知りません。

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誤字脱字があるかもしれませんが許してください


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