1:こんにちわドラゴン、お帰りはあちらです。
はじめまして、河巳八一と申します。
小説を投稿するのは初めてで、拙い文かと思いますが
徐々にでも上達していければと思いますので、よろしければ感想・指摘などお願い致します。
僕は夢を見ている。
『―これは契約だ』
微睡みの中、色んな声色が混じった不可思議な声が聴こえる。
『―貴様は契約を果たさねばならぬ』
謎の声が靄がかった不思議な空間に響き渡る。
『―運命からは消して逃れられない。戦え…戦って戦って…』
靄の中に薄っすらと影が浮かんでゆく。
影は徐々に、そして棘々しい様に大きくなっていく。
『そして我に喰われるのだ…!』
ついにはその影に…。
「うわぁああああああああ!?」
影に喰われるかと思った瞬間現実に戻され一安心すると同時に、誰かに声が聞こえたかもしれないと思い恥ずかしさから周りを見渡してしまう。
「はは、何やってんだろ僕は」
周りを見渡しても、目の前には木、木、木…木しか見えない。
背中にはひんやりと冷たいコンクリート、校舎しかない。
ここは言わば校舎裏というところだ。
「っつぅ…イテテ。毎回毎回飽きない奴らだよな…、ご丁寧に腹ばかり殴りやがって」
僕はざっと身体に残ってるダメージを確認する。端から見たら手慣れてると思われるだろう、僕は一般で木にはいじめられっ子というやつだからだ。
腹の痣ぐらいで、他に目新しい傷といえば地面に突き飛ばされたときに出来た擦り傷ぐらいだろうか。
「よっ…と。タコ殴りにされるわ、いつもの気味悪い夢は見るわ…今日はツイてないな」
いつまでも座っているわけにもいかず、立ち上がりながら体中についたホコリを払っていく。
ふと、周りが薄暗いのが気になりズボンに突っ込んだままの多機能処理端末…通称"コミュ"を操作し、時間を見ると18時半を示していた。
「あー…1時間近く気絶してたのか、今日バイト休みで良かった。これじゃ絶対遅刻だった…」
コミュを待機状態にして再びズボンのポケットにねじ込み、家に帰るため校舎裏からトボトボと校門へ歩き出す。
「やっぱり入るんじゃなかったかな…、でもここでなら"ドライブ"の使えない理由がわかるかもしれなかったし」
はぁ、とため息をつきながらアレコレとネガティブな思考に陥っていると、いつの間にか校門を通り抜けてしまっていた。
振り返り、校門から見える校舎群…国立英宝学園を見渡す。
この学校は"ドライブ"を扱う者、通称"ドライバー"を育成する国立機関であり、誰でも入学できるわけではないのだ。
ドライブ…物語やゲームで表すと魔法や必殺技のような超常現象を起こすための道具である。
そしてドライブも誰もが使えるわけではなく、スキルと呼ばれる能力を持った者しか使うことが出来ないものだった。
このスキルであるが誰もが持っているわけではなく、人口の割合で言うなら500~1000人に1人の割合でスキルを持ったものが生まれてくる。
スキルを持っているからと言って、魔法みたいに炎を飛ばしたりなどできるわけではない。スキルとはその人が持つ特性であり、特技というわけではないのだ。
また、スキルの種類は多岐にわたっており、火・水・風・土などのわかりやすい属性スキルと言うものから、剣・槍・斧・銃・弓などの武術スキル、穴・音・匂・形成など特殊スキルなどがある。
実際にスキルは千差万別であり、人によっては被っている場合もあれば今までにはなかったスキルが発現したりする人もいる。
では、ドライブとはなんなのか。それはその人が持つスキルを現実に作用させる干渉装置であり、増幅装置なのだ。
スキルを持っているからと言って、そのままでは何も起こせないのでドライブを使い、現実に干渉して現象を起こす。
だが、稀に力の強いスキルを持った者はドライブ無しでも現実に干渉してしまい、現象を起こしてしまう者もいる。
ではそのような傍迷惑なやつらを野放しにしておくか?答えはNoだろう。
じゃあどうすればいいか、答えは簡単だ。制御させる術を身に着けさせるかスキルを押さえ込んでしまえばいい。
昔は任意だったらしいスキル判定検査も、今では義務化させ、国民全員が14歳になるとこの検査を受けてスキルが見つかれば問答無用でこの学園にぶち込まれる。。
まぁ色々あるんだが要するに、この学校はスキルを持った子供(宝石の原石)を集めて、普通のスキル持ちも問題児なスキル持ちも皆ドライバー(宝石)に仕立て上げる学校なのだ。
「まぁ中にはスキルが強すぎるとは別の問題児もいるんだけどさ」
スキル持ちはその力の強弱にかかわらず、ドライブを起動させることができる。
「ていうか、スキルはあるのにわからないってどういうことなんだって話だよ」
しかし、この学園に1人だけスキル持ちなのにドライブを起動させることが出来ないものがいた。
「まぁ悩んでも仕方ないか、今できることをするしかない」
そうこの僕、篠宮一郎はスキル持ちなのにドライブを起動できない。
「落ちこぼれにでも出来ることはあるんだしな」
スキルも判らず、ドライブも起動できない欠陥品なのだ。
「とりあえず帰ったら風呂に入ってご飯食べるか」