6 大女神様は信者が少ない
略してはが(ry
「目を覚ましなさい、朝山京太郎! 」
「…………」
誰だ? 誰かが俺の名を呼んでいる。
「朝山京太郎、目を覚ましなさい! 」
誰だろう……しかしすごく眠たい。
「朝山京太郎! 朝山京太郎! 」
随分呼んでいるが、すごく眠たい。
「…………童貞 」
「なんだとコラァアアアア──ッ! 」
一瞬で目が覚めてしまった。
「やっと起きたわね腐れ童貞! 」
「だ、誰が腐れ童貞だ! 」
「あなたの事よ、朝山京太郎」
「ぐっ……」
ど正論のため何も言い返せない。というかこの声は誰? ここはどこ?
真っ白な空間に、既視感を覚える幻想的な光が──もの凄く差し過ぎて何にも見えない。声的には女なのは間違いないのだが……
「ちょ──、光が強過ぎて全く見えん! 」
「当然よ! 私を誰だと思っているのよ」
「分かんねーよ! せめて光を弱めてくれ」
「ダメよ、あんたみたいな童貞が私を見たら昇天するわよ」
「だ、だだだ誰が童貞だ! 」
「だからあなたよ」
「ぐぅ……」
こ、こいつ……
「まあ、いいわ。私の正体を当てれたら弱めてあげるわ」
『もの凄い妥協してあげました』みたいな口ぶりでその女? は言う。いや、じゃないと話が進まんだろ!
まあいい……
まずは状況整理だ。この真っ白な空間、そして物凄いものの美しく既視感を覚える幻想的なこの光──
「さては女神か? 」
「女神様! 」
「……さては女神様でしょうか? 」
「いやははぁ! まあ、さすがに、私みたいに女神オーラ溢れまくってたら分かって当然か〜、でへへぃ」
何だこの女神は……女神って当てられてすごく喜んでいる。以前あった女神──ユラさんとは大違いだ。
「当たったんなら光を……」
「うーん、でも30点かな。その回答だと」
この女神めんどくさいな……
「なら、超絶美人の女神様! 」
「でへへ! えへへぃ、50点! 」
あー、そうゆうやつか。褒めちぎれば点数上がりそうだな。俗にいうチョロい奴だな。
「スーパーグラマーで超絶可愛い女神! 」
「えへへ、えへ、えへへ、そんなに褒めても点数しか上がらないよ、もー! 」
「よっ! 世界一の美しさ、皆んなに愛される女神様! 」
「いや〜、参ったね! こんなに熱心な信者がいるなんて、えへへへ、80点! 」
あと少しだ
「いよッ! 全ての頂点に立ちし大女神様!」
──その途端
幻想的な光が消え、一人の女が迫ってくる。そして勢いそのまま抱きついてきた。
「ぐほぉアア 」
「朝山京太郎大好き! もう大好き! 好き好き! 」
その女は俺の顔に頬をスリスリしながら言う。
「なっ、」
「だーい好き! 朝山京太郎! 」
スリスリスリスリ──
「ちょ──、離れろ」
色々追いつかないので、とりあえずその女を引き剥がす。剥がされた女はむぅっとしている。
「だ、誰? 」
「さっきあなたが答えたじゃない」
「え、じゃあ女神様? 」
「それだと30点と言ったはずよ」
「超絶美人でスーパーグラマーで皆んなに愛された全ての頂点に立っている女神様? 」
「えっへへへ、間違いではないんだけどね〜でへへぃ」
その女神様は照れながら頭をかく。
「簡単に言うと、No,1女神。女神の頂点に立つ大女神・ベリル様よ! 」
「──なっ 」
目の前の大女神様は胸を張ってドヤ顔をする。スーパーグラマーって程では無いが、黄金比にも似たその体に合った胸のサイズは、大きくなくとも妙な色気を感じさせる。
そしてユラさんより一回り幼い体、白銀に輝く長髪をさらりとなびかせ、エメラルドに煌めく美しい瞳で俺を見据える。
「な、No,1女神……様? 」
「そうよ、私が女神の頂点に立つ大女神よ! 」
「と言うことは、魔法使いと転移させたのも……」
「そうよ、私のお陰──きゃあぁ痛い痛い」
「お前かアアアア──ッ! 」
俺はベリルにアイアンクローをかます。こいつだったのか!
「痛い痛い──って、離しなさい! 」
ベリルは俺の手を振りほどく。若干泣きそうな顔で。
「朝山京太郎、図が高いわよ! 私はNo,1女神なのよ。大体の人は私の正体を知ると頭を下げるのよ! 」
他の人はどうか知らんが、俺は一発殴ってやろうと思っていたのだ。それがこんな幼い子だったので気は引けたが……
ガーネット程は幼くは無いが、No,1女神って言うからお姉さん系かと思った。
「私が女神になってから初めての暴挙よ、あなたの言動は」
「そうか」
「そうかって……もー! 信じられない! 許さないんだから! 」
「悪かったよ、超絶美人なスーパーグラマラスなベリル様」
「ま、まあ? 大女神の私は寛容だから許してあげるわ! 」
チョロいな〜
「それで、ベリル様。何の用ですか? 」
全く、やっと話が進められそうだ。
「そうね、まずはそこからね」
ベリルはようやく女神っぽい顔に戻った。
「簡単に言うとあなたは今半分死んでるの」
…………またか。
「何ですか? また俺の魂はどこかに転移されるんですか? 」
「いいえ、あなたは寝てて意識が無いからそう例えただけよ」
「…………そっすか」
「そして、今あなたの夢に私が入り込んだの。重要な話があるから」
「そうなんですか。何でNo,1女神様がわざわざ? 」
分からない事だらけだが、一番かになるのがそこである。なぜNo,1女神様が直々に?
「それはあなたが私の加護を選んだからよ」
「加護ってあのセンスの無──」
「そうよ! あのかっこいい名前の加護の事よ!」
フフンと胸を張って答える。
……センスの無い名前の加護って言わなくて良かった。
「加護と言うのは女神が作るの。そしてその加護を承った者の担当をしないといけないの」
「なるほど……」
「私の加護はハイセンス過ぎて誰も選ばないのよね、だからあなたは中々のセンスの持ち主よ! 」
「そっすか……」
あの時、時間が無くてヤケクソ気味に選んだなんて言えない……
「そうよ、あなたはセンスが良いのよ! 断言したあげるわ」
これ、俺を褒めてるようで自分を、そして自分の加護を褒めてないか?
あまり釈然としないが断言までしてくれるのは嬉しいな。
「そして、選ばれると思ってなかったから加護の力あまり強くないのよね」
「えっ⁉︎ あれでか! 」
ロエに噛まれた傷を一瞬で治癒し、盛大にこけた時も……
「当然よ、私はNo,1女神なのよ! そこらの女神なんかと一緒にしないで」
「すみません……」
「まあ、朝山京太郎は熱狂的な私の信者のようだし許してあげるわね、えっへへ」
いや、信者でもないんだがなぁ。この女神もしかして信者とか居ないんじゃ無いのだろうか……
「あ、ありがとうベリル」
「ベリルですって⁉︎ 」
しまった、つい──
「いや、ベリル様! 今のは言葉の綾でして、俺より幼く見えたのでつい……」
ベリルは顔を赤くして、口をむぐむぐする。
「ま、まあ? 朝山京太郎は? 私の信者第1ご──」
「1号⁉︎ 」
ベリルは急いで口を押さえる。
「あっ、いや違──ご、5000兆……そうよ5000兆よ! あなたは5000兆1人目の信者よ! だから調子に乗らないで! 」
「そんなにいねぇよ! 」
「ヒイィィ! 」
思わず突っ込んでしまった。あーでも5000兆円欲しいなぁ〜
「その、だから端数代表のあなたは、特別にベリルでいいわ……」
もはや何言ってるか全く分からないが、俺の脳内翻訳機で翻訳すると
『初めての信者が出来て嬉しいな! 仲良くなりたいからベリルでもいいわ。別に好きとかそうゆう事じゃないんだからねっ! 勘違いしないでよね!』
と言う事だろう。納得。
「分かったよ。これからもよろしくな、ベリル」
俺はベリルに手を差し出す。ベリルはまずは周りを見渡す。そして自分にされているのかを確認する。
ロエの時と全く一緒である。まあ、俺でもまずは周りを確認するからな。気持ちは分かる。
そして異性からなら広範囲を確認する。影でクスクスと笑うカースト上位勢が居るかもしれないからな。
そしてベリルは、おずおずと手を握る。
「「よろしく 」」
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「それでベリル、加護の力が弱いっていうのは? 」
「そうだったわね。今あなたに働いている『体力がエグい』って加護なんだけど、急だったから本来の1/3の能力も発揮されてないの」
「マジか! あれで……」
「そうよ、あなたあのキショいオッさんに右腕砕かれたでしょ? 」
キショいオッさんって……確かにキショく悪かったけど。右腕の骨をバキバキに折られたんだよなぁ。
「あなたは今40時間以上寝ているのよ」
「40時間! 」
思い出した、確かにミノタウルスにジャーマンしてガーネットを褒めた後に倒れたんだっけか。
「そう、あんな怪我で40時間もかかってるの」
「あんなって、右腕の骨バッキバキを40時間で直すのも凄いけどな」
「まあね、でへへ! 私は大女神だからね〜」
デレデレと頭を掻くベリル
「でもね、あの加護はもっと凄いモノなの。なんせ私が作ったモノだからね〜へへぃ」
「そっすか……」
まあ、確かに凄い加護だと思う。
「だから今回は特別に私が直したあげる」
「それって? 」
「まあ、見てなさい」
ベリルは俺の右腕に手を当て──
「《いたいの、いたいの、とんでいけ〜》」
するとベリルの手が光りに包まれ、俺の右腕が猛スピードで治癒していく。
「はい、おわり〜」
俺は手をブンブン振ってみる。
「すげー、本当に治ってる……」
「だーって、私は大女神なんだもん! 当然でしょ! 」
「ありがとう、ベリル」
「えへへぃ〜もっと褒めていいよ! 信者の敬意は素直に受け取っておくわ」
「さすが大女神様! 」
「まあねまあね! よく言われるからね〜!」
ベリルはえっへんと胸を張る。
「まあそうゆう事だから、加護が本来の力を取り戻すまでは無茶厳禁だからね、折角の信者なんだから死なないでよね! 」
「ありがとう、気をつけるよ」
「要件はそれだけだから、今日は楽しかったよ朝山京太郎。暇な時に遊びにいくからね〜」
「ああ」
そういうとベリルの姿は消え、空間自体も消えていった。
最後まで読んで頂きありがとうございました!