28 それは死んでるのと同じだよ
「準備はいいか?」
「ああ、いつでも大丈夫だぜ」
「そうね。いつでも行けるわ」
大剣を携え嬉々とする先頭の男に、3mを越える長い槍を担いだ男が、ローブを着て杖を持った女が答える。
小屋のような小さな家を目の前に、6人の戦士が息を飲む。
「つ、強いのかしら?」
「さあな」
「はははははッ! どんなに強くても俺らは負けねぇよ」
剣士はケラケラと笑いながら周囲の不安を取り除く。
「じゃあ行くぜ」
そしてドアノブに手が触れキィい、と乾いた音を立てゆっくりドアが開く。2人の魔法使いは重心を下げて身構える。
「い、居ない⁉︎」
狭い空間に大きなダイニングデスク。飲みかけのコーヒーに出しっ放しの1つの椅子。
「はぁ、外出中ね」
少し安堵にも似たため息を魔法使いの1人が吐く。
「どうする?」
「とりあえず夕方まで待ってみよう。それでダメなら明日の早朝に出直そう」
「そうだな。見た感じ、もう少し早い時間には居たっぽいもんな」
「そうね」
話は大方まとまり、1人の男がチームを仕切る。
「まあ皆んな気を抜かずに行こう」
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「ヤバい……」
どうも。ペトラ30です。崖っぷちです。ロイのチームが先に壺の持ち主を見つけたらしいです。
(クソ、今頃戦っているのだろうか……)
実はさっきまでこっそりと後をつけていたのだが、ヒラがそれに気づいたのかマホに耳打ちして【テレポーテーション】を使いやがった。
「くそったれが……」
もう猩々の壺は望みが薄いかもな。今までの事も全て水の泡だが、こればかりは切り替えるしかない。
だとしたから他の手段は──
『あるとしたらワールドクエストとか──』
ふと以前に言ったセリフを思い出した。
「ワールド……クエストか……」
残り時間は今日を入れて2日。このままでは明後日には死ぬのだから死ぬ気で億を取りに行くのが賢い判断なのだろうか?
そしてA級の数名とS級の魔王は顔が割れているのだ。今考えれば壺を持ち攫った男よりも探すのが容易いのではないだろうか?
「魔王倒すか。名前からしてラスボスっぽいけど」
だが挑むしかない。もはや猩々の壺は手に入らないのだから。
勝つか死ぬか──。
全く、日本に居た時とは真逆だな。こんなギャン鬼みたいな選択肢なんかでできてすらなかったのによ。
朝起きて会社に行って、遅くまで働いて風呂入って、弁当屋の弁当とビール飲んで寝て起きての、生きてんのか死んでんのか分からん日々の繰り返しだったのによ。
何が勝つか死ぬかだよ?
めちゃめちゃ生きてんじゃんかよ!
もうやるしかないな。でないと死ぬのだから!
「すぅううう──……はあああぁ……」
不思議と体が軽い。恐怖はあまり無い。
俺は大きく深呼吸をし、つけてきた道を引き返しギルドへと向かった。




