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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第2章 魔術師と猩々
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9 太陽の騎士団



「よし! クエストに行こうぜ!」


「……はい?」


「クエストだよ、クエスト!」


「誰が?」


「京太郎が!」


「……誰と?」


「俺らと!」


 …………えぇぇ。


 いつの間にかこの町随一のパーティとクエスト受ける事になってるんだが……


 俺魔法使え無いの、ロイにはバレたくないんだけど……


「行こうぜ!」


 ロイは俺と肩を組み、ニコニコ顔で急接近してくる。


「ええ、ちょ、ちょっと待ってくれ」


 本当に待ってくれ。お前が俺と仲良くしていると後ろの5人の殺気が恐ろしい事になるんだよ。


「何キサマ風情がロイと仲良くしてんだよカス」と、口には出さないが顔にモロ出ている。それも全員。


 ロイには悪いがここは断ろう。後ろの5人も来んなオーラ出してるし、「受けたら殺す」とでも言いたげに睨んでくるし。


「すまんロイ。悪いが俺は──」


 途端、ロイの顔が急激に萎えだし、ションボリとなる。なんか凄く申し訳ないが、これも────はっ!


 急に背筋が震える。俺は恐る恐る5人を見ると今まで以上に殺気立っていた。


「何ウチのリーダー泣かせてんだよ……殺スゾ」と言いそうな目つき。


「不本意だが受けろ。受けないと……殺ス」と訴えかける眼光が俺を貫く。


「…………どっちだよ!」


 というかどっち選んでも死ぬのかよ。ならば1人でも笑顔にして死のうじゃないか。


「分かった。受けよう……かな」


「やったね! それじゃあ行こうか!」


 萎えた顔が一転、ぱあぁと輝くロイの顔。そしてルンルンで外に向かって行った。


 それに連られて後ろの5人も動き出す。


「殺ス……」


「へっ?」


 5人の先頭のを歩く女が、俺とすれ違う時に小声で放った。聞き間違い……かな?


「調子乗ンナよ……」


「……あっ」


 2人目の女も俺とすれ違う際に暴言を発してきた。どうやら聞き間違いでは無かった。


「……失せろ」


「えぇぇ……」


 まさかの男にまで言われたんですが……


「消えろカス」


「……」


 嗚呼(ああ)……辛い。


「死ねドブが!」


「…………」


 知ってました。どうせ全員言うと思ったよチクショウが!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ここで一つ、『太陽の騎士団』というパーティについて触れておこう。


 『太陽の騎士団』とはこの町随一のパーティと称されるチームである。


 1番クエストを受けたとか、貰った報酬の額とか、倒したモンスターの強さとか、純粋な個々の強さや連携など……パーティの強さを測る指標は様々だが、どれにおいても群を抜いているそうだ。


 そんなパーティだが、『太陽の騎士』という異名を持つリーダーのロイを筆頭に、4人の男、2人の女で編成されている。


 ずは、俺を睨んでいる槍使いのランス。このランスという男、ロイに次ぐ実力者とも言われ『一番槍』という異名を持つそうだ。そして俺は何故か嫌われているっぽい。


 次に、俺を睨んでいる盾使いのシール。このパーティの守りの要として皆からの信頼も厚い。そしてこの男も俺の事が嫌いっぽい。

 

 そして、遠くで俺を睨んでいる回復術師のヒラ。周りがよく見えており、皆んなのお兄さん的存在だそうだ。男の中では1番睨みに力が入っている。……俺への。


 今度は、ヒラとは対照的に俺の目の前でガンを飛ばしている女──マホとシエンだ。2人とも魔法使いでこのパーティでは後方で支援に徹している。


 マホは問答無用で俺が嫌いらしい。


 シエンは断トツで俺が嫌いらしい。



 結論、この5人は俺が嫌いらしい。



「……辛い」


 この現状に、つい弱音が溢れてしまった。


 するとシエンはニッコリと微笑み、肌が触れそうなほど近くまで顔を寄せる。


「〜〜ッ⁉︎」


 何だ、こ、このシチュエーションは……


 慌てる俺を無視してシエンは近づき、俺の耳元で囁く。


「──喋んな殺すぞ」


「…………はい」


 どうやらラブコメの神様は死んだそうです。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ──草原



「今回は京太郎も居る事だし、大物にチャレンジしてみようぜ」


「大物か……例えばどんな奴だ?」


 ロイとランスが話しながら先頭を歩く。すぐ後ろをシール、ヒラ、シエン、マホが歩く。そしてその5メートル後ろを俺が歩いている。


 最初はロイの隣を歩いていたのだが、後ろからランスに刺されそうだったので靴紐が解けたフリをして1番後ろに行った。


 因みに機嫌を取りに「荷物持ちますよ」と言ったら「触るなカス」と言われた。泣きそう。


「京太郎に実力を分からせるくらい強い奴が良いよなぁ〜」


「そんなモンスターここら辺に居るの?」


「ここは雑魚しか居ないものね」


 雑魚……か。


 余談だが、この草原は俺たちがミノタウルスに辛勝した場所だ。先程のシエンとマホのセリフからして、このパーティは本当に強いのだろう。


「そうだよなぁ。なら少し遠出だが山奥まで行ってみるか」


「山奥?」


「ああ、あそこに見える山の奥だ。知ってるか京太郎? あそこの山にはドラゴン級のモンスターがうじゃうじゃ居るって噂だぜ」


 俺はロイが指差す山に目を向ける。なんかあの山だけ禍々しいオーラを放っている。


「あの山奥に居るヒュドラを討伐しようと思う」


「ヒュドラってあの『不死の百頭竜』のヒュドラ?」


 今、ランスの口から恐ろしい言葉が聞こえたんですけど……


「そうだランス。そのヒュドラの討伐をしようと思う」


「ロイ……本気なのか?」


「俺たちなら出来るだろ!」


 一見(おど)けて言っている様で、ロイの眼は真剣だ。それだけパーティを信用しているのだろう。


「……そうだな」


 その瞳にランスが折れ、


「はあ、ロイの言うことなら仕方ないわね」


 そしてシエン、マホ、シールが折れ、


「それじゃあ作戦はいつも通りでいいな」


 そしてヒラが話を纏める。


「ああ、問題ない」


 ロイはにっと笑い答える。


 これが随一パーティと呼ばれる所以の一つ。個々の実力は勿論、この信頼関係は中々築けるものではない。


「…………」


 うん……俺帰っていいかな?


「どうした京太郎?」


「ああ、いや、俺はヒュドラを詳しく知らなくてさ」


「そんな事か」


 ロイはケラケラと笑いながら俺の肩を叩く。


「大した奴じゃないよ。猛毒を吐き散らす不死身のドラゴンなだけだから」


「全然大した奴じゃねえか!」


 今の話だけ聞いてると勝てる見込み無いんだが。


「……勝てんの?」


「安心しろよ。この町では無いが、他所でドラゴンは倒した事があるから」


 そう言ってグッ、と親指を立てるロイ。


「そうしようか。マホ、【テレポーテーション】をお願いできるか?」


 お兄さん的存在のヒラがマホに声を掛ける。


「あれ魔力一杯使っちゃうんだよねえ……」


 マホ自身あまり乗り気では無いらしい。


「頼むマホ」

「分かったわ! 任せてロイ!」


 この落差である。どんだけ好かれてんだよ。


「それじゃあ行くわよ。あっ、後あんた!」


「え? 俺?」


 なんとマホからご指名が来ました。


「そうよあんたよ。私人見知りで知らない人が近くに居たら上手く魔法が起動できないから離れて。できればロイの半径10メートル以内に近寄らないで」


「最後のは明らかに関係ないだろ!」


 俺の激しいツッコミに、小声で「ウゼェ」と舌打ちするマホ。


「……分かったよ」


 だが従うしかない。俺は大股10歩、後ろに下がり待機する。


「ったく、さっさと下がれっての……それじゃあ行くわよ!」


 小さい声で愚痴をこぼしたマホは杖を握る。


「《()がれ、ゆがめ、もつれたまえ、むす二点(にてん)観測かんそくすべしは同質どうしつなり》──ッ!」


 カッ! と眩い光をあげる。ガーネットの指定座標転送魔法とは違い、変な浮遊感もなく、自分が動いたと言うより空間が変わった様な感覚。


 俺はその眩しさに思わず目をつぶってしまう。



───


───


───



 サアァ……ザッザッ……


 葉っぱが風で靡く音。落ち葉が潰れる音。


「うっ、ここは……」


 ゆっくり目を開けると、一面木々が並ぶ。閑散とした地に緑が揺れる音、遠くからは小川のせせらぎも聞こえる。


「へっくしょぉおおらぁああ!」


 落ちてきた葉っぱが鼻に当たり、思わずクシャミをしてしまう。


「…………」


 咳をしても1人──


 日本にはこんな字足らず足らずな俳句がある。過程と展開は全く違うが、今の俺の状況を現す言葉としてはピッタリだ。


「誰も居ねぇ……」


 俺の目の前には誰も居ない。ロイもランスもシールもヒラもマホもシエンも……──



「あっ……。



 …………。




 ………………。





 あのヤロォオオオオオオ──ッッ!!!」






槍→ランス

盾→シールド→シール

回復術師→ヒーラー→ヒラ

魔法使いの後方支援→マホ、シエン


覚えてあげて下さい

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