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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第2章 魔術師と猩々
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6 この後滅茶苦茶○○○○した!



「おい……どうすんだよ」


「知らないわよ」


「そうか……」


「そうよ……」


 俺と役人は、只今ギルド前の広場で三角座りをして黄昏ている。


「はぁ。というか俺、お前なんかに構ってる暇ないんだけど」


「奇遇ね。私もあんたなんかに構ってる暇なかったわよ」


「そうかよ……」


「そうよ……」


 はぁぁ……。お互いため息をこぼすしかない。この役人も、どうやら受付嬢に用があった様だ。


「なぁ、いい加減700万くれよ」


「あげる訳無いでしょ……」


 今の役人には、ギルドにいた時の覇気はまるで無い。会話をする度にため息をついている。


「とりあえず700万くれよ」


「絶対あげない!」


 ご覧の様に、役人はどうしても700万トルカを渡す気は無いようだ。俺のパーフェクトプラン──略してPPが根っこから崩壊する。


 200万の返済もオジャン。凄腕錬金術師を雇う金も無い。というかこの町に本当に錬金術師なんか居るのか?


 それも含めて受付嬢に聞きに来たと言うのに、この国から来た役人にパーにされ……


 待て──


 こいつって役人だろ? しかも国から来た役人……


「なあ役人さん?」


 もしかしたらだが、町のギルドの受付嬢よりも全然詳しいのではないのか?


「なによ」


 脱力した声で喋る役人。


「いや、さっきは俺が間違ってたなって思ってな」


「はっ?」


「ルールはルールだもんな。それを伝える役人に怒るのもお門違(かどちが)いってモンだよな」


「へ? あ……ま、まあ? 全くその通りなんだけど? ようやく気付いたのね」


「ああ。俺が悪かった。済まない」


「えぇ⁉︎ ちょっと、頭まで下げなくても」


 役人は俺の手の平返しに戸惑い、慌てて俺の頭を上げさせる。やめさせるって事は、少なからず自分にも非があると実感していたのだろう。


 俺はここに新たな活路があると見た。どんな世界でもヒトとヒトは通じ合えるのだ。世界の共通言語は謝罪と誠意で間違いない。


「いや、この件に関しては全面的に俺が悪い。済まない、許してくれ」


 今考えたら確かに俺が悪いのかも知れない。全面的かは置いといて。だが頭を下げてでも切り替えるべきだ。固執して全てを失うくらいならカウント4で切り替えてやる。


 チャンスの神様は前髪しか無いらしい。唯一の前髪を力強く引っ張るのも気が引けるが、掴めるならどんな手を使ってでも掴むべきだ。


「わっ、分かったわよ。分かった分かった。許すわよ……」


 ワタワタとした手つきで、頭を下げた俺を宥める役人。


「ありがとう役人さん!」


「分かったから」


 これで少しは話を聞いてくれるだろう。ギルドの時は全く話を聞いてくれなかったからな。


「はぁ……。それで? 何が目的なの?」


 役人は大きくため息をついた後、ジト目で俺を見てくる。


「も、目的ってどうゆう事だよ」


「超が付くほどの手の平返しされたら、何か企んでると思うのは当然でしょう。言っとくけど700万トルカは払わないわよ?」


「いやいや、純粋に俺が悪いなって思っただけだよ。だから700万は諦めるよ」


「え⁉︎ あ、そう。随分と物分かりが良いのね」


 予想外の展開に目を見開いて驚いている。まあ、出来れば700万トルカは欲しいんだけどね。マジでくれないかな、もしくは空から降ってこねぇかな……金。


「それでさ、役人さんって国から送られた人でしょ? それならやっぱり色々詳しい訳でしょ?」


「そうね。色々にもよるけれど、大概のことなら把握してるわ」


「そんな役人さんにお聞きしたいんだけど、この町に半壊したギルドを直せる程の凄腕錬金術師って居る?」


「もしかしてギルドを壊した犯人はあなただったの?」


 この場合どう答えるのが正解なのか。別に俺が壊した訳では無いのだが……


「俺と言うかピラルクィーンと言うか……この件に関して容疑者が曖昧なんだよ」


 ピラルクィーンからしても突然ギルドの真上に転送された訳だし、俺にしても確かに転送魔法は頼んだが……そもそも転送魔法をさせる要因になったのは祟りジジイの訳であって、ガーネットが失敗したのだって祟りジジイ……


「いや、容疑者は祟りジジイだ。割合的にあいつが悪い。したがって黒幕はあいつだ!」


「誰よ祟りジジイって」


「祟りぃ! 祟りィイイイイイイイ! いっイぃー! って叫ぶジジイがこの町には居るんだよ。あいつのせいで俺に借金がァ」


 よし決めた。次祟りジジイを見つけたら、3回殺した上で三途の川で溺死させてやる。


「あなた借金なんか抱えてるの?」


「抱えてるもクソも現在5,200万トルカの負債だよ」


「ごっ! 5,200万トルカですって⁉︎ そんなの700万トルカが入ったってどうにかなるレベルじゃないじゃない!」


「ところがどっこい。ギルドが直れば5,000万トルカは支払わなくていいんだよ」


「はあ、それで錬金術師を探してるのね」


 納得がいった様に手をポン、と叩く役人さん。この流れで700万くれないかな。いかん、さっきから全然諦めきれてないじゃないか。


「私が思うに、あれだけ大規模な物を直そうとなると一端いっぱしの錬金術師では無理ね。それこそ大魔導士クラスでないと」


「大魔導士……」


 ふと思い出す1人の顔。


「丁度この町にはとびっきりの大魔導士が居るじゃないの!」


「もしかしてこの町にはユスタしか大魔導士居ないの?」


「そうだけど……どうしたの? ユスタリエ=アンノリーでは不満なの? 言っておくけど彼は大魔導士の中でも屈指の実力者よ」


 違う。ユスタの実力は見たことないが、多分凄い奴って事は何となく分かる。


 そうゆう事では無くて……


「はぁ、あなたって面倒臭いのね」


 いいあぐねる俺を見て、役人は何かを察した様だ。


「男はみんな面倒臭いんだよ」


「あっそう。ユスタリエ=アンノリーはあなたの事なんてどうとも思ってないわよ」


「……ンな事分かってるよ」


 ユスタに頼りたくないという対抗心が、心のどこかに僅かに存在し、今の様に渋っている。


 たった数回会っただけなのに、自分でも分からないがライバル心にも似た変な感情をユスタに対して抱いているのだ。俺は魔法も使えないというのに。


 まあ、あれだ。『男ってバカね』ってやつだ。


「はぁ、他には居ないわよ。凄腕の錬金術師なんて……」


「そんな訳ないだろ。鋼の錬金術師とか居ないのかよ」


「居ないわよ」


 ですよね。居たら居たで問題になりそうだから居なくて良かったかも知れない。


「まあ、あなたがユスタリエ=アンノリーに頼らないならそれでいいけれど、最終手段として頭の片隅に入れとくのね」


「ああ、助かるよ」


「どちらにしても元金が足りないわね。あれ程の修復なら依頼金は相当張るわよ」


「金なぁ……」


 チラチラと役人を見ても、一向に目を合わせてくれないんですが大丈夫ですかね?


「べ、別のクエストを受けるのね! 私はこれから用事からあるから!」


「クエストか……今出禁中なんだよな。というか役人さんも出禁中だろ?」


 ビクッ、と思い出したかの様に震えだす。


「…………」


「…………」


「……謝りに行くか」


「そうね……」



 この後滅茶苦茶セ──滅茶苦茶謝罪した。



 それはもう、『ゼロバースト・改』を3連発して体がボロボロになるまで……





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