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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
41/89

エピローグ 終わりと終わりの始まりの始まり



「すげぇ……」



 おじさんが震えながら言葉を紡ぐ。


 目の前に広がる光景。


 大勝利の光景、はたまた地獄の光景。


 関係者からすれば前者。


 しかし、


「やっぱり川の上流は空気が澄んで最高ね」


「そうだね。そんな場所でこの天気。ピクニックにはうってつけだね」


 たった今ピクニックに来た赤の他人からすれば──


「「きゃあああああああああああッ‼︎‼︎」」


 後者も後者。


 顔が吹っ飛び、臓器が丸出し状態の巨体。そして血の海に浸された生首……


「きゃああああああああああ! 生首ッ⁉︎ 」


 ピクニック気分でこんな禍々しいカオスな空間に迷い込んだら誰だってそうなる。


 それでも迷い込んのがカップルだったのでザマァと思いました。すみません、そんな事言ってる場合じゃなかったですね。

 

「何の騒ぎだっ…………ってうわぁあああああああああああああああ‼︎‼︎ 」

「どうした⁉︎ 何か悲鳴がぁ……って何じゃこりゃああああああああああああ‼︎‼︎ 」


 悲鳴が悲鳴を呼び、人が溢れカオス度が上昇する。


「ぎゃあああああああ──ッ‼︎‼︎ 」

「いやぁあああああああああああッ‼︎‼︎ 」

「祟りじゃあああああああああッ‼︎‼︎‼︎‼︎ 」



 うぅるせぇええええええええええ!!



 取り敢えずこの状況をどうにかしないと。


「が、ガーネット! 転送魔法だ。あの刀の時みたいに竿殺し(ロッドアウター)をギルドに送ってくれッ! 」


 早急にこの諸悪の根源をどうにかしなければならない。そして俺は知っている。竿殺しことピラルクィーンは700万トルカ(、、、、、、)するって事を。


 釣りクエストの時にギルドの掲示板でチラッと見た。現状の問題も解決されるし金持ちになれるでダブルピースだ!


「いやぁあああああああああああッ! 」

「きゃああああああああああああッ! 」

「たぁッ! 祟りじゃぁあああああああああああああああああああああッ‼︎‼︎‼︎‼︎ 」


 どんどん人が溢れ、事態が悪化していく。というか1人おかしいやつが居るし。しかも近づいて来てる! 


「ががが、ガーネット早くぅ‼︎‼︎ 」


 俺は竿殺し(ロッドアウター)の肌をベシベシと叩きながら催促さいそくする。


「で、でもそんなに対象物と近いと……」


「たぁ、たぁ……祟ぁあああ〜〜 」


 ガーネットの言葉を遮る様に、目をギラつかせフラフラと近寄って来る。


「たぁ……たぁあっへぇっへっへッ! 」


 怖い、怖い、怖い、怖い、怖いッ‼︎‼︎


 何故こうなった!


 あとこいつ誰だ‼︎‼︎


「ガーネット早く早く早くッ! 」


「〜〜〜〜ッ! 」


 何か言いたげだったガーネットはクゥゥっと両腕を振り、葛藤する。


「もう! どうなっても知らないんだから! 《魔力まりょくを以て《もつ》て── 」


「祟りじゃぁ〜〜……祟りィイイイイイ! 」


「《もと召喚しょうかんッ── 」

「あっ、顔の方もッ! 」

「──せ⁉︎ よ、》あっ、しまっ──ッ⁉︎ 」


 刹那、


 竿殺し(ロッドアウター)の胴体と首の周りに魔法陣が浮かび上がり、いびつな光をあげる


「ちょっ、ちょっと! これだと俺も転送されるんじゃあ……しかもなんか魔法陣がゆがんでんだけどッ⁉︎ 」


 ガーネットが目を合わせてくれない。


 嫌な予感が……顔面が蒼白する。


「祟りィイイイイイイイ」

「うっせぇ、ンのバカッ!」


 最早こんなイカレポンチに構ってる暇は無い。大慌てで魔法陣の中から逃げ出す。


「ごめんキョータロー、少し失敗したから早く逃げてッ! 」


「何となく察したよ」


 どう失敗したかは知らないが早急に避難しなければヤバい気がする。


「祟りィイイ── 」

「じゃかましゃァああああああ──ッ‼︎‼︎ 」


 俺はそいつに飛び蹴りした。


「たがぁほぉァアアアっ‼︎‼︎ 」


「ザマァみろ、クソルーピーが」


 そいつは血を吐きながら吹っ飛んでいく。


「俺も早く逃げぶふぉッ⁉︎ 」


 逃げる左足を誰かに掴まれ、顔からズッコケる。


「たたァア〜〜 」


「サイコパスかッ! 離せクソヤロ── 」


「ごめんもう無理ッ! 」


「えっ──── 」


 カッと光をあげ、収束する様に消える。消える、消える、竿殺し(ロッドアウター)の顔も胴体も──そして俺も。




「どうしよ……座標……ズレちゃった……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 土下座──それは日本人特有の謝罪スタイル。そして文化が発展した現在では様々なバリエーションがある。



 片膝ずつ地面につき両手を添えこうべを垂れる『スタンダード土下座』


 助走をつけ全力でスライディングしながら謝る『スライディング土下座』


 バク宙からの謝罪態勢に入る『ムーンサルト土下座』


 頭を下げると思いきや、ヘッドスピンして謝る『Bボーイズ土下座』


 対象者のすぐ近くで頭を下げ、そのまま靴を舐める『リーマン土下座』


 圧倒的筋肉を見せつけながら頭を下げる『筋肉土下座』


 地位・名声の高い者が葛藤しながら、崩れ落ちる様に膝をつく『大和田土下座』


 そして土下座の神髄。高温で焼かれた鉄板の上で10秒以上オデコを付けて謝る『焼き土下座』 うぅぇっふっへぅっへ。


 その中で、たった今俺がしたのは(、、、、、、、、、、)スライディング土下座からBボーイズ土下座を織り交ぜ、最後にムーンサルト土下座をねじり込んだ複合技。


 完璧だ。ここまでくると恥辱を通り越して美しいまでもある。


「……喧嘩売ってるんですか? 」


「──えっ⁉︎ 」


 俺は頭上から聞こえたセリフに絶句する。ま……まだ足りないと言うのか。


「朝山京太郎さん、でしたよね? 」


「そ、その通りで御座います」


 頭上からの冷たい声に、ダラダラと汗が。


「どうゆうおつもりですか? 」


 頭上からの声一言一言にビクリと体が震える。


「ど、どうゆうつもりと申されましても……わたくしからも不運な事故としか……」


「朝山さん! 」


「ハヒィイッ! 」


 力強く呼ばれ、声まで震える。


「世の中には不運な事故では片付けられない案件もあります」


「ぞ、存じ上げております……」


「では……弁償(、、)──で、宜しいですね? 」


 ビクゥッ!


 俺の顔色が氷点下を振り切る。


「かっ……」


 口元を震わせながらも、言葉を紡ぐ。


「か……神様、仏様、受付嬢様(、、、、)。お一つ尋ねたい事があるのですが……宜しいでしょうか」


「許可します」


「弁償費用……の事なのですが…………幾らになるでしょうか? 」


 俺はカタカタと震えながら、受付嬢の顔を見る。


「そうですね」


 受付嬢は腰から電卓を取り出し、高速で弾き出す。


「まず、巨大な魚と朝山さんが突然空から落ちてきてギルドが半壊しました(、、、、、、、、、、)ので(、、)、その部分の解体に400万トルカ(、、、、、、)


「ゴファッ‼︎‼︎ 」


 俺は口から盛大に血を吐き出す。


 いや落ち着け。竿殺し(ロッドアウター)が700万トルカだ。差し引いても300万──


「更に新しく建て直すのに3300万トルカ(、、、、、、、)


「ギャフアァッ‼︎‼︎‼︎‼︎ 」


 体中の傷が開き血が噴き出る。


「そしてその工事期間中、営業が妨害されますのでその分も払ってもらいます。またギルド内の家具、食器、食品も全て崩壊しましたので払ってもらいます」


「あ、あっ……ああアヒ、アヒヒあはアひ」


 思考停止。奇声を発しながら顔から崩れ落ちる。あれ? 3000万……? アヒヒあ……負債?


 受付嬢はそんな事全く気にせず電卓を弾く。


「朝山さん、出ました」


 打ち終わり俺の方を見る。


 そして天使の様にニッコリと笑い──




合計5000万トルカ(、、、、、、、、、)の弁償となります」




「…………………………おっふ 」


 天使の様な受付嬢にトドメを刺され失神する。


 俺を倒したのは竿殺し(ロッドアウター)なんかでも、極楽とんぼのおじさんなんかでも無かったのだ。


 どんなに辛くても気丈に振る舞い、天使の笑顔で冒険者を迎える受付嬢。




 そんな5000万トルカの瞳には、加護の力も無力と化し、俺はあえなく轟沈した。





とりあえず第1章終わりです。読んでくれた方、ありがとうございました。


1章ではガーネットを中心とした物語でした。過去への清算……そんなところですかね



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