3 貴方が好き
もうそろそろギルド行きます(行くとは言ってない)
「私、──あなたが好きなのッ! 」
なッ────⁉︎
「ロ、ロエ……さ、ん? 」
「二度も言わせないで……」
口元を隠しながら視線を逸らす──
思い出す──中学二年のあの頃を……
「私、朝山くんの事すきだよ! 」
「ほ、ほんと! 」
「ほんとだよ、朝山くんが一番すきだよ! 」
そのとき見た君の笑顔を忘れた事は無い。そして、その二日後に違う男とベロチューしていた君────絶対忘れねぇえええ‼︎ 忘れてやらないかんなッ!
女の子は、『嘘と何かと何かで出来ている』と聞いたことがあるが、全くその通りだと思った。
今考えればあの頃からかなぁ、女の子の言葉を信じなくなったのは……
だが感謝しているよ、その敗北のお陰で今冷静にいられるのだからなッ!
「ロエ、そんな冗談はいいから──」
「冗談じゃないッ! 」
ロエは必死に答える。
「ロ、ロエ……? 」
つい目が合う──
「見ないで、へ、変態ッ! 」
そして、赤く染まった顔を隠す様にソッポを向く。
……ガチなのか⁉︎
「本当なのか……? 」
「本当よ……」
ロエは近づき
「私は好きよ、────あなたの血が」
──はっ?
「私、あなたの血が好きになったわ。もう吸い殺したいほどに──── 」
ロエはニッコリと笑い
「だからあなたのパーティーに入れて」
「…………
──却下に決まってんだろ‼︎‼︎ 」
「ねええええええッ、お願い! パーティーに入れてよぉおおおおおお」
ロエは泣きつきながら、縋り付く。
「ええい、離せ! お前みたいな痴女吸血鬼なんか手に負えないんだよ! 」
「ち、痴女じゃないわよ! この童貞! 」
「だだだ、誰が童貞だッ! この痴女! 」
「ま、また痴女って言った! 私はまだ──」
ロエは、しまったと両手で口を閉じた
「…………マジで? 」
「……この変態ッ! 」
俺は思いっきりほっぺたをビンタをされた。理不尽ッ!
その後、ロエが『何故かどこもパーティーに入れてくれない』と泣きつくものだから話くらいは聞いてあげた。
「……つまり、友達が居ないからパーティーに入れて欲しいと? 」
「と、友達くらいいるもんっ! 大体みんな友達だし──」
「なら、そのみんなの名前を挙げてみろよ」
「え……⁈ 」
携帯を持ってない小学生が親に『みんな持ってるから』と交渉する時のみんなは数人説。
「どうした? 名前を挙げてみろよ、ほらぁ……ホラァッ! 」
ロエは既に泣き目だ。
……少しやり過ぎたかも知れない。
「はぁ……分かったよ」
俺も甘いなぁ。ぼっちを見ると、自分を見ている様でつらい。
年間を通して日曜日の予定が空いている系の学生だった俺には、どうにも見過ごす事は出来なかった。
「京太郎だ」
「へっ? 」
「俺の名前だよ。朝山京太郎、気軽に京太郎って呼んでくれ。同じパーティーメンバーなんだから」
「──ッ⁉︎ 」
ロエはあわあわしている。
「これからよろしくな」
そう言って、手を差し出す。
ロエはキョロキョロと周りを見渡し、自分に手を差し出されている事を確認する。
そして、おずおずと手を出す
握る手前で一度止まり、俺の顔と自分の手を交互に見て──
「よ、よろしく…… 」
「ああ、よろしく」
ようやく俺とロエは手を繋ぐ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
──程よくして
「キョータロー、その人は誰? 」
「ああ、この人は──」
「私は吸血鬼! 吸血鬼のローリー=エリントンよ、このハゲ! 」
「「………………」」
こいつ、俺の時もそうだったが何で初対面の奴にこんなに高圧的なんだ? だから友達がいないんじゃないのか……?
ガーネットは目をパチパチさせて、驚いている。
「……キョータロー、その人は誰? 」
「ちょっと、何で同じ質問するのよぉおおおおおお! 」
「いや、さっきのじゃ普通分からんだろ」
ロエは少し泣きそうな顔をしている。不器用かッ!
「あー、ガーネット。この人は新しいパーティーメンバーだ」
「そーだったんだ! てっきり変質者かと思った」
「どうゆう事よぉおおお」
「だって、そんな露出狂みたいな格好で」
「ろしゅ──ッ⁉︎」
「それに初対面の人にいきなり暴言吐くんだもん」
「────ッ」
もうやめて、ロエのライフはゼロよ!
「てっきり、キョータローが弱みでも握られてるのかと思ったよ。童貞だし……」
「ちょ──、ばかおまっ」
「え、京太郎って童貞だったの……? 」
ロエが驚きの目で見てくる。言いあぐねる俺を肯定と捉え──
「へ、へぇーそうなんだー………………ふふっ」
ロエは何故か嬉しそうに笑った。
なんだ? 仲間が出来て嬉しいのか?
「そ、そんな事より、この子がガーネット。俺のパーティーメンバーだ」
「よろしくね、ロエさん! 」
「──ッ⁉︎ 」
ロエが泣きそうだ……というか泣いた。
「こ、ごちらごぞ、よろじぐね! ガーネットぢゃん」
「おいおい、何でそんなに泣いてんだよ」
「だっで、女の子の友達なんで、初めで出来だんだもん、ヒック……」
「こ、こっちこそよろしくね……」
ガーネットはロエを宥めながら、俺に助けを求めるような顔をしている。悪い、俺では無理だ。
まあ、ロエの完璧な容姿と、全てを虜にするような圧倒的プロポーションから、同性にはジェラシーを抱かれていたのだろう。
ガーネットの様な妬みのない、純粋で優しい子に今まで会えなかったのか……
「まあ、落ち着けよ。これからいっぱい友達を作っていこう! なっ! 」
「…………ゔん」
ロエはずびーっと鼻をすすり、満面の笑顔で返事をした。
「────ッ! 」
……まったく
「キョータロー、あれがギルドだよ!」
「おー、中々立派な建物だな」
俺たちはようやくギルドに到着した。
「ねえ、早く入りましょう! 」
「そうだな」
──ギルド
ギルドの中はマンガやアニメで見るような感じに似ている。男の冒険心をくすぐる様な雰囲気だ。
「キョータローこっちこっち! 」
ガーネットは受付らしい所に走って行き、俺とロエを手招く。
「いらっしゃいませ! クエストの受注ですか? 」
受付では美人の受付嬢が愛想よく対応してくれる。
「その通りよ、このハゲッ! 」
「「「……………………」」」
「この、バカッ! 」
「いたいっ! 」
俺はロエの頭をチョップする。
「あー、すいません。クエストの受注に来ました。初心者にでも出来るようなクエストってないですか?」
俺は受付嬢に謝りながら説明する。受付嬢も若干引きつってはいたが、すぐさま笑顔を戻し対応する。さすがプロだなぁ
「それでは討伐クエストはどうでしょう? 」
「「討伐クエスト? 」」
俺とロエがおうむ返しの様に聞き返す。
「キョータロー、ロエさん、討伐クエストは指定されたモンスターを一定数倒すクエストだよ」
「はい! そちらの方の言う通り、ギルドが指定したモンスターを討伐すると報酬を与えます。モンスターの強さで報酬額が変わりますが、自分の力量を見極めてクエストを選んでください」
なるほど……
「そいえばガーネットって攻撃魔法とか使えるの? 」
「うーん、使えるには使えるんだけど、私は攻撃型じゃないから戦闘であまり期待しないで欲しいな。支援なら任せて!」
「そうか、じゃあロエはなんかあるのか? 」
「私? 私は血の雨降らせるくらいなら……」
「採用‼︎ 」
そうか、ロエは吸血鬼だったな。だとしたら相当強いんだろうな。
なんだ? 幸先良すぎだな。なら多少強いモンスターのクエストでも大丈夫そうだな。ロエさん、その美貌に強さも兼ね備えてるのかよ。さすが吸血鬼だせ!
「なら、そのミノタウルスの討伐にしようぜ」
「ミノタウルスですね、承りました」
とりあえず、すぱっと終わらしてもらいますか。そしてガーネットに奢る分を稼がないとな。
「よーし、じゃあ行くか! 」
「「 おー‼︎ 」」
ガーネットとロエは腕を突き立て決起する。
待ってろミノタウルス! 血の雨を降らせてやんよ!
……まあ、ロエがだけど。
最後まで読んで頂きありがとうございました!