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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
4/89

3 貴方が好き

 もうそろそろギルド行きます(行くとは言ってない)



「私、──あなたが好きなのッ! 」




 なッ────⁉︎


「ロ、ロエ……さ、ん? 」


「二度も言わせないで……」


 口元を隠しながら視線を逸らす──




 思い出す──中学二年のあの頃を……




「私、朝山くんの事すきだよ! 」


「ほ、ほんと! 」


「ほんとだよ、朝山くんが一番すきだよ! 」


 そのとき見た君の笑顔を忘れた事は無い。そして、その二日後に違う男とベロチューしていた君────絶対忘れねぇえええ‼︎  忘れてやらないかんなッ!


 女の子は、『嘘と何かと何かで出来ている』と聞いたことがあるが、全くその通りだと思った。


 今考えればあの頃からかなぁ、女の子の言葉を信じなくなったのは……


 だが感謝しているよ、その敗北のお陰で今冷静にいられるのだからなッ!




「ロエ、そんな冗談はいいから──」

「冗談じゃないッ! 」


 ロエは必死に答える。


「ロ、ロエ……? 」


 つい目が合う──


「見ないで、へ、変態ッ! 」


 そして、赤く染まった顔を隠す様にソッポを向く。



 ……ガチなのか⁉︎



「本当なのか……? 」


「本当よ……」


 ロエは近づき


「私は好きよ、────あなたの血が(、、、、、、)


 





 ──はっ?







「私、あなたの血が好きになったわ。もう吸い殺したいほどに──── 」


 ロエはニッコリと笑い


「だからあなたのパーティーに入れて」



「…………






 ──却下に決まってんだろ‼︎‼︎ 」







「ねええええええッ、お願い! パーティーに入れてよぉおおおおおお」


 ロエは泣きつきながら、縋り付く。


「ええい、離せ! お前みたいな痴女吸血鬼なんか手に負えないんだよ! 」


「ち、痴女じゃないわよ! この童貞! 」


「だだだ、誰が童貞だッ!  この痴女! 」


「ま、また痴女って言った! 私はまだ──」


 ロエは、しまったと両手で口を閉じた


「…………マジで? 」



「……この変態ッ! 」



 俺は思いっきりほっぺたをビンタをされた。理不尽ッ!


 その後、ロエが『何故かどこもパーティーに入れてくれない』と泣きつくものだから話くらいは聞いてあげた。


「……つまり、友達が居ないからパーティーに入れて欲しいと? 」


「と、友達くらいいるもんっ! 大体みんな友達だし──」


「なら、そのみんな(、、、)の名前を挙げてみろよ」


「え……⁈ 」


 携帯を持ってない小学生が親に『みんな持ってるから』と交渉する時のみんなは数人説。


「どうした? 名前を挙げてみろよ、ほらぁ……ホラァッ! 」


 ロエは既に泣き目だ。


 ……少しやり過ぎたかも知れない。


「はぁ……分かったよ」


 俺も甘いなぁ。ぼっちを見ると、自分を見ている様でつらい。


 年間を通して日曜日の予定が空いている系の学生だった俺には、どうにも見過ごす事は出来なかった。


「京太郎だ」


「へっ? 」


「俺の名前だよ。朝山京太郎、気軽に京太郎って呼んでくれ。同じパーティーメンバーなんだから」


「──ッ⁉︎ 」


 ロエはあわあわしている。


「これからよろしくな」


 そう言って、手を差し出す。


 ロエはキョロキョロと周りを見渡し、自分に手を差し出されている事を確認する。


 そして、おずおずと手を出す


 握る手前で一度止まり、俺の顔と自分の手を交互に見て──


「よ、よろしく…… 」


「ああ、よろしく」


 ようやく俺とロエは手を繋ぐ




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ──程よくして



「キョータロー、その人は誰? 」


「ああ、この人は──」

「私は吸血鬼! 吸血鬼のローリー=エリントンよ、このハゲ! 」



「「………………」」



 こいつ、俺の時もそうだったが何で初対面の奴にこんなに高圧的なんだ? だから友達がいないんじゃないのか……?


 ガーネットは目をパチパチさせて、驚いている。


「……キョータロー、その人は誰? 」


「ちょっと、何で同じ質問するのよぉおおおおおお! 」


「いや、さっきのじゃ普通分からんだろ」


 ロエは少し泣きそうな顔をしている。不器用かッ!


「あー、ガーネット。この人は新しいパーティーメンバーだ」


「そーだったんだ! てっきり変質者かと思った」


「どうゆう事よぉおおお」


「だって、そんな露出狂みたいな格好で」

「ろしゅ──ッ⁉︎」


「それに初対面の人にいきなり暴言吐くんだもん」


「────ッ」


 もうやめて、ロエのライフはゼロよ!


「てっきり、キョータローが弱みでも握られてるのかと思ったよ。童貞だし……」


「ちょ──、ばかおまっ」


「え、京太郎って童貞だったの……? 」


 ロエが驚きの目で見てくる。言いあぐねる俺を肯定と捉え──


「へ、へぇーそうなんだー………………ふふっ」


 ロエは何故か嬉しそうに笑った。


 なんだ? 仲間が出来て嬉しいのか?


「そ、そんな事より、この子がガーネット。俺のパーティーメンバーだ」


「よろしくね、ロエさん! 」


「──ッ⁉︎ 」


 ロエが泣きそうだ……というか泣いた。


「こ、ごちらごぞ、よろじぐね! ガーネットぢゃん」


「おいおい、何でそんなに泣いてんだよ」


「だっで、女の子の友達なんで、初めで出来だんだもん、ヒック……」


「こ、こっちこそよろしくね……」


 ガーネットはロエを宥めながら、俺に助けを求めるような顔をしている。悪い、俺では無理だ。


 まあ、ロエの完璧な容姿と、全てを虜にするような圧倒的プロポーションから、同性にはジェラシーを抱かれていたのだろう。

 ガーネットの様な妬みのない、純粋で優しい子に今まで会えなかったのか……


「まあ、落ち着けよ。これからいっぱい友達を作っていこう! なっ! 」


「…………ゔん」


 ロエはずびーっと鼻をすすり、満面の笑顔で返事をした。



「────ッ! 」



 ……まったく



「キョータロー、あれがギルドだよ!」


「おー、中々立派な建物だな」


 俺たちはようやくギルドに到着した。


「ねえ、早く入りましょう! 」


「そうだな」




 ──ギルド



 ギルドの中はマンガやアニメで見るような感じに似ている。男の冒険心をくすぐる様な雰囲気だ。


「キョータローこっちこっち! 」


 ガーネットは受付らしい所に走って行き、俺とロエを手招く。


「いらっしゃいませ! クエストの受注ですか? 」


 受付では美人の受付嬢が愛想よく対応してくれる。


「その通りよ、このハゲッ! 」



「「「……………………」」」



「この、バカッ! 」


「いたいっ! 」


 俺はロエの頭をチョップする。


「あー、すいません。クエストの受注に来ました。初心者にでも出来るようなクエストってないですか?」


 俺は受付嬢に謝りながら説明する。受付嬢も若干引きつってはいたが、すぐさま笑顔を戻し対応する。さすがプロだなぁ


「それでは討伐クエストはどうでしょう? 」


「「討伐クエスト? 」」


 俺とロエがおうむ返しの様に聞き返す。


「キョータロー、ロエさん、討伐クエストは指定されたモンスターを一定数倒すクエストだよ」


「はい! そちらの方の言う通り、ギルドが指定したモンスターを討伐すると報酬を与えます。モンスターの強さで報酬額が変わりますが、自分の力量を見極めてクエストを選んでください」


 なるほど……


「そいえばガーネットって攻撃魔法とか使えるの? 」


「うーん、使えるには使えるんだけど、私は攻撃型じゃないから戦闘であまり期待しないで欲しいな。支援なら任せて!」


「そうか、じゃあロエはなんかあるのか? 」


「私? 私は血の雨降らせるくらいなら……」

「採用‼︎ 」


 そうか、ロエは吸血鬼だったな。だとしたら相当強いんだろうな。


 なんだ? 幸先良すぎだな。なら多少強いモンスターのクエストでも大丈夫そうだな。ロエさん、その美貌に強さも兼ね備えてるのかよ。さすが吸血鬼だせ!


「なら、そのミノタウルスの討伐にしようぜ」


「ミノタウルスですね、承りました」


 とりあえず、すぱっと終わらしてもらいますか。そしてガーネットに奢る分を稼がないとな。


「よーし、じゃあ行くか! 」


「「 おー‼︎ 」」


 ガーネットとロエは腕を突き立て決起する。


 待ってろミノタウルス! 血の雨を降らせてやんよ!






 ……まあ、ロエがだけど。






 最後まで読んで頂きありがとうございました!

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