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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
27/89

24 釣りクエスト



 ──ギルド


「いらっしゃ……げっ」


「ちょっと! なんか聞こえましたよ」


「……気のせいですよ」



 ギルドに行くと、美しく慈愛じあいに満ちた受付嬢が出迎えてくれる──くれてたはず……なん、ですけどね……


「さっき『げっ 』って言いました? 」


「気のせいですよ」


 にっこりと、いつだって受付嬢の顔は笑っている。少しだけ引きつってるけど……


「今日はピンクの女性は居ないんですね」


「ああ、あのアホっ子は学校ですよ」


「そうですか」


 受付嬢は、ホッと胸をなでおろす。まあ気持ちは分かる。会う度にハゲハゲ言ってくる奴なんて仕事とはいえ、誰だって会いたいとは思わない。


「マジですみませんでした。パーティーメンバーとして、しっかりしつけときます! 」


 俺は誠心誠意を込めて謝罪した。受付嬢だって人間なのだ、イヤなものはイヤらしい。


「いえいえ、それより本日はどういったご用件ですか? 」


「釣りのクエストをしようと思ってるんですが、竿とかってレンタル出来ますか? 」


「レンタルは可能です。ただしレンタル料が発生しますが構いませんか? 」


 今、俺のお財布はほっかほっか亭なのだ。多少の出費はいとわない。


「全然構いませんよ」


 俺の返事を聞くと、受付嬢はいつもの様な営業スマイルではにかむ。この受付嬢はこの町で人気ありそうだなぁ。


「それでは朝山さん、こちらがレンタルの竿になります。破損や紛失されたら弁償となりますのでお気をつけて下さい」


 そういって渡される竿……


「あのー、これはジョークですか? 今流行りの受付嬢ジョークですか? 」


「ジョークでは御座いませんよ。そして流行ってもいません」


「これは竿ですか? 」


「それは竿です 」


「…………」


 かたなに竿と名乗るこれ──長い木の棒に糸が吊るされ、その糸の先になんかクレイジーハンドみたいなのが付いてるこれ……


「なんすか、このお座敷釣り堀とセットで出て来そうなやつは? 」


 再度じっくり見た上で、もう一度確認する。


「それは竿です」


「…………」


 いや、確かに竿なのは分かるが……そうゆう事を聞いてるんじゃないんだよなぁ。


「あの……一応言っておきますが、そちらの竿はれっきとした国公認の魔道具ですので安心してさい」


 俺があまりにもしつこく、いぶかしげな眼差しを向けるので受付嬢もため息を吐きつつ説明する。


 国公認か……以前国公認の魔道具が俺の目の前で破裂したから、あんまり信用無いんだよなぁ。


「それで、これはどうやって使うんですか? 」


「海、もしくは川に入れるだけで後は勝手に捕まえてくれます」


「はい、了解しました」




 ……もう驚かないもんねっ!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ──川


 ギルドから少し離れた場所にある、水と自然に囲まれた上流部。人里離れた街並みは空気がみ穏やかな気分にさせる。


「さて! 釣りでもしますかな」


 受付嬢は、このクレイジーハンドを川の中に入れるだけで良いと言っていた。


「国公認って……こんなドラ○もんのひみつ道具みたいなのがかよ」


 もしかしたら国とネコ型ロボットは繋がってるのかも知れない。


「まあ、物は試しだ」


 俺は川辺に近寄り、クレイジーハンドを投入する。すると水中で勝手にクレイジーハンドが動き、遊泳中の魚を捕まえる。


「マジか! 」


 俺は急いで竿を引く。


 水飛沫(しぶき)をあげ、ジタバタ暴れる魚が虚空で跳躍する。最初の一匹目が釣れたのだ。


「おいおい……入れたばっかりだぞ」


 速すぎだろ! どれ位速いかというと、修学旅行の行きのバスで『楽しみすぎて俺今日寝れないわ〜』って言った奴の就寝時間くらい速い。


 まだ修学旅行に行った事無い人は気を付けてくれ。なんならアイツ等、誰よりも速く寝るからな。


「開始2秒でボウズ回避か」


 とりあえずボウズは回避できたので、後はゆっくりゆったりして、釣りを楽しもう!



───


───




「ひゃはははははははははははははははははははははははははははははははは──ッ! 」


 釣れる、釣れるぞ! 爆釣だッ!


 用意したバケツは既に魚でミッチミチになっている。


「おいすげーぞ! 」

あんちゃんスゲーぜ!」


 俺の狂った様な哄笑こうしょうに、現地のおじさん達が集まって来た。そして最早狂気と言って良いほどの爆釣ぶりに野次馬のテンションも上がっている。



───


───



「うひゃひゃははははははははははは! 乱獲じゃああああああああああああああああ──ッ! 」


 止まらん、止まらんゾォ!


「ギャハハハハハハハハハハハ──ッ! いいぞ、もっとやれエエエエエエ! 」

「ひゃははははははは! このまま川の魚絶滅さしちゃおうぜエエエエエエ! 」


 異常が異常を呼び、野次馬すらも狂ってきている。


「バケツが足りネェ! じゃんじゃん持ってこいゃあああああああ──ッ! 」


 俺の目の前には魚がギッチギチに詰まったバケツが7つある。自分が用意した分では足りなく、それを見た野次馬がバケツを貸してくれたのだ。


「「「ダァッッハッハッハッハッハッハッハ──ッ!」」」




「って違ァーーーーうッ‼︎‼︎‼︎‼︎」




 俺はバケツの中の魚を全て川にぶちまけた。


「「ぎゃぁああああああ──ッ! 何やってんだよ兄ちゃん! 」」


「ちがっーーうんだよッ! 俺は釣りをしに来たんだよ! なにフルオートで魚捕まえちゃってくれてんの⁉︎ 違うんだよ! 俺に巻かせろよ! ドキドキさせろや! 」


 鬼気迫るほどの勢いで熱弁する俺に、周りが若干引いている。


「だけど兄ちゃん、兄ちゃんが言ってる事は分からねぇが釣りはこうゆうもんだぜ」


「マジで言ってんの? 」


「ああ、大マジだぜ」


 野次馬のおじさんは答える。


「マジかよ……なら帰ろうかな」


 なんか思ってたのと大分違う事実に、ショックが隠しきれない。


「まあ待てよ兄ちゃん」


 しかし、おじさん達は俺を止めてきた。


「兄ちゃんならやれるかも知れねぇ」


「……何が? 」


 待ってましたとばかりの問いかけに、ニカっと笑いながら──




「──この川の主を釣るんだよ 」

 



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