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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
24/89

21 My Gift To You


 ──酒場



「とりあえず生で! 」


 やはりクエスト後の一杯目はこれに限る。ジョッキいっぱいに注がれたビールの半分以上を飲み干す。


「くぅはァ──ッ! うまスッ! 」


「京太郎……オッさんが出てるわよ」


「おい、誰がオッさんだ! 」


 自分でオッさんと言う分には問題ないが、人に言われると気にするお年頃だから気を付けてね。


「はぁあああ…… 」


 揚げ物をつまみつつ、残ったビールを飲み干す。そして大きなため息をつき、今日一日の出来事を振り返る。


 早朝にユスタに出会い、ガーネットと朝食を取り、その後学校に行きアスカ先生に会い、ロエの服を買ってクソババァ──


 ババァの印象が強すぎて忘れてたが、今日も色々なことがあったなぁ……


 そして何よりは──


「魔力00か…… 」


 酒! 飲まずにはいられない!


「生追加で! 」


「京太郎そのペースで飲んだら酔っちゃうよ? 」


「大ー丈夫、で〜じょーぶ! 」


「ほんとかな…… 」


 俺は追加で来たビールもガブガブと飲んでいく。


「ロエさん、ビールって美味しいの? 」


 俺のがぶ飲みっぷりからガーネットがお酒に興味を示したようだ。


「え⁉︎ えーと……ガーネットちゃんにはまだ早い、かな」


「ぶぅーー 」


「ごめんね、20歳になってからの楽しみだよ」


 ロエはアワアワしながら説得し、ガーネットが凝視している手元のビールを勢いよく仰ぐ。


「あのねガーネットちゃん、ビールは人によるけどあまり美味しい飲み物じゃ無いんだよ」


「えっ! そうなの? キョータローはあんなに美味しそうに飲んでるのに? 」


「まあ、人にもよるんだけどね。確かに最初の一杯目は美味しいんだけど、私の場合二杯目以降はそうでもないの」


「そうなんだ……なら何で飲んでるの? 」


「そ、それは…… 」


 ロエは言葉を濁し、チョイチョイとガーネットを近くに手招く。


「私がビールを飲むと京太郎が嬉しそうな顔をするでしょ!」


「確かに……」


「もういらないって言ったら凄く悲しそうな顔をするのよ。ふふっ、可笑しいでしょ」


「そうだね、キョータロー今も凄く楽しそうだもんね」


 二人はクスクスと笑いながら続ける。


「京太郎ってクエストとかよりも、こういった晩餐を楽しみにしてる節があるのよね」


「それは分かるかも! 」



 ……何か二人が、二人だけで楽しそうにコソコソ話している。いいもん! 俺にはお酒があるもん!


「すみませーん、生追加で! 」


「はーい! 」


「おいロエー、ロエもいるか? 」


「「……フフッ! 」」


「ん? どうした二人して? 」


「何でもないわよ。京太郎、生二つで! 」


「さっすがロエさんだ! 」


「……何かいいなぁ」


「どうした、ガーネット? 」


「いいや、私も飲みたいなぁって」


「お酒は20歳になってからだぞ! 」


「京太郎、そうゆう所はしっかりしてるのね」


「おい、失礼だぞ」


「ごめんね」


 ロエは微笑みながら謝ってきた。


「まあ、あれだ。自分の娘や息子だったら飲ませたかも知れないけどな」


「京太郎……」


「まあ、ガーネットにはちゃんとするから」


「そこはちゃんとしなくても良いのに……」


 ガーネットはむすっと不貞腐れてしまった。


「ガーネット、安心しろよ。20歳になったら俺が最初に注いでやるから」


「ほんと⁉︎ 」


「ああ、それまで死なずにいてやるよ! 」


 冒険者という職業だ。明日も平和に生きていけるという確証は無い。だが俺は、俺だけは自信を持って言える。


 どこかの大女神さまの加護を承ってるからな。


「ちなみに、フラグでは無いからな! 」


「……誰に言ってるのよ」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「キョータロー……臭い」


「ええ、本当に臭いわ」



 お家に帰り「ついたぁーー! 」と発しただけなのに、この有様である。


「誰が童貞臭どうていしゅうだっ! 」


「そっちじゃ無いわよ! 」


「えっ……⁉︎ 」


 割と冗談で言ったつもりなんだけど、そっち(、、、)じゃ無いって言われたんですけど……



 ────えっ⁉︎ マジで童貞臭するの? というか童貞臭って何だよ!



「そっちじゃ無くて、お酒臭いってこと! 飲み過ぎなんだってば」


「ど、どうて……俺は、臭いのか……」


 やばい……大ダメージだ。思考が停止しそうだ。四肢の力は抜け、うっかり失神しそうになった。



((……冗談のつもりだったのに))



 ロエとガーネットはお互い目を合わせ、


「「プフッ…… 」」


 何やら楽しそうに笑っている……。晩飯の時もそうだが、俺だけ置いてけぼりで何か悲しい。

 まあ、だが二人が仲良くなるのは良い事だな。


 俺は、俺得な百合百合ゆりゆりとした二人だけの世界を遠くから眺める事にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ──リビング


「どうしたのキョータロー、急に呼び出して」


 広々としたリビングには俺とロエとガーネット、三人が集合している。ロエとガーネットが各自、自分の部屋に行こうとした時に俺がストップをかけたのだ。


「まああれだ、すぐ終わる用だから」


 そういって俺はクローゼットに隠しておいた袋を取り出す。


 その袋を見たロエは、


「あれ? 京太郎も服買ってたんだ」


 そう、この袋はお昼に行った服屋さんの袋なのだ。隠しながらロエと帰宅するのは大変だったぜ。


「昨日のミノタウルス戦は覚えているだろ? 」


「「ん? ミノタウルス戦? 」」


 いきなり話をぶっ飛ばしたからだろう、ロエもガーネットも首を傾げている。


「その後、俺倒れちゃっただろ? 」


「あの時はビックリしちゃったよ」


「そうよ、私がスーパーから帰って来たらガーネットちゃんはアタフタしてたし、逆に京太郎は倒れてピクリともしないからビックリしたわ」


 そうだった、ロエのやつ本当に薬味買いにスーパーに行ってたんだった。まったく、これだからアホっ子は恐ろしい。


「そうそう、その時に看病してくれてたんだろ? そのお礼がしたくてな、二人にプレゼントを買ってきた」


 柄にもない事をするもんだから、今メチャクチャ緊張している。顔が熱い、心臓弾けちゃいそうだ。しかしあくまでも冷静にクールを気取る。


 ……だって恥ずかしいじゃん?


「べ、別に気にしなくて良いのに」


「そうだよキョータロー、そんなの気にしてないよ」


 謙虚なのか、はたまた拒絶なのか、二人ともプレゼントを受け取ろうとしない。後者だったら泣くまである。


「おいおい、最後まで格好つけさせてくれよ。童貞は繊細なんだから」


 そういって俺はロエの頭に、魔法使いが被りそうなつばの広いハットをボフッと被せる。


「わわっ…… 」


 突然ハットによって視界を奪われたロエは、ふためきながら手をやる。


「ロエはあれだ、吸血鬼だからあまり日に当たらない方がいいんじゃないかと思ったから帽子にした」


 ……あれだな、クッソ恥ずかしいな。だがリア充はこんな事日常茶飯事なんだろ? 尊敬するわ、全く……爆発すればいいのに。


 チラリと、つばの下のロエの瞳と出くわす。


「────ッ⁉︎ 」


 ロエはビクッと震わせながら、慌てて帽子を深く被る。



「────……ありが、と」


 ポショポショと、紅潮した儚い声が身体をまさぐる。


「……どういたしまして」



 ──クッソ恥ずかしい! まだネクストバッターが控えてるってのに。



「ンごっほ! 次はガーネットだな」


 変な咳払いをしながら気を取り直す。


「ガーネットにはこれ、似合うか分からんが…… 」


 俺は屈み込み、バッテンの形をした髪飾り──クロスヘアピン? をガーネットのサラリと枝垂れる左の前髪に留める。


「うん、可愛い! 似合って── 」


 ガーネットの顔の位置まで合わせたため、より近く感じる。


 だから、やや朱に染まる幼い頬が鮮明に投影される。


「ちょ、ガーネットさん……そんな反応しないでくれよ。俺が恥ずかしいだろ」


「う、うん…… 」


 サワサワ……と、髪留めをいじりながら俺を見つめ──


「ちゃんと聞きたい、かな」


「──ッ! 」


 可愛すぎて逝っちゃうかと思ったぜ。ロエの我慢してた分もあるから、そろそろ俺のキャパも限界だ。


 だがいつだってクールに、朝山さんは最後まで格好つけ通すぜ。


「ああ、似合ってるよ」


「そう……ありがと」


「ユアウェルカムだ」



 ……うん、そろそろ無理ぽ



「はい、以上です! 朝山さんからの用事はこれで終わり! 」


 パンッ! と手を叩き、強制的に終了さ

せる。




 ふぅ……



 やはり柄にもない事はするもんじゃないな




ガルパの新曲が良すぎて更新が……



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