17 デート⁉︎
その内タイトル変えます
保健室での一件後、ガーネットはスカーレットとお昼を食べに行く約束をしていたらしく、そのまま学校に残るそうだ。
俺とロエはする事が無くなったので、一先ず帰宅する事にした。
──その道中
「京太郎、『考えておきます』ってどうゆうこと? 」
ロエはジト目で睨んでくる。どうしよう……つい口走ってしまったという言い訳は通用するだろうか? 内容が内容だけに、さすがに無理だろう。
というか、アスカ先生初対面なのに積極的過ぎじゃないですか? ガーネットの時もロエの時もそうだが、この世界の人はフレンドリー通り越してアメリカン過ぎないですか? 実はここアメリカなんですか?
「何って言葉通りだよ…… 」
取り敢えず返答を濁す事にした。
「というと? 」
「つまりアレだよ」
「アレって? 」
「アレって言ったらアレに決まってんだろ? 」
「どれよ? 」
「アレだよ」
ぐっ……何で今日に限ってこんなに食いついてくるんだ?
ロエは言いあぐねる俺ジロジロとを見る。
いかん、この無言はマズイ。相手のペースに乗せられてしまう。こうゆう時はあえて取り繕わず、それでいて相手を欺ける様な──何て言うのかな、詭弁を弄するって……
うわっ、俺ってゴミ人間かよ……いや、最近人間辞めたんだったな。なら何の問題も無いじゃないか! 魔法使い万歳‼︎
「まあアレだよ、今はお前たちと一緒に冒険してる方が楽しいからな」
「そ、そう…… 」
「そうだよ、だから後でギルドに行ってクエスト受けに行こうぜ」
「うん……まあいいけど」
なんか許してくれた。良かった。
そういえばロエを見て思い出した。
「ロエ、その前に服を買いに行くぞ」
「服? 誰の? 」
「お前のだよ」
「へ? 何で? 」
「何でって…… 」
俺はロエの姿を、頭から足までを一通り見る。相変わらず露出度の高い服装だな……目のやり場に困る。
「もう少し落ち着いた服がいるだろ。今日も学校で凄い見られてただろ? あれはお前の容姿もあるがそれ以上にその痴女めいた服装が原因だ」
「だ、誰が痴女よ! 」
「そんなセリフをそんな服着て言うんじゃねぇ! お前8割がた服着て無いじゃん! 四捨五入したら全裸だぞ! 」
「そんなの大体皆んな裸じゃないの! 」
「違ぇよ。常夏の楽園ベイベー達だってもう少し落ち着いてるぞ 」
しかもロエの場合は通常でこの露出だからな。サンシャインクレイジーし過ぎだよ。
「じゃあどうするのよ! 」
「……だから服を買いに行くんだよ」
そう言って俺はロエに封筒を渡す。
「何これ? 」
「昨日の報酬だよ、ほらミノタウルスの」
「えっ──…… 」
ロエは急に硬直する。
「え……? 何で私に? 」
「は? パーティーメンバーだからに決まってるだろ? 」
何言ってんだ、この女は? あんなにパーティーに入れてくれって泣き叫んで来たのに……
「これ……くれるの? 」
「うん、やるよ」
「────……」
ロエは一度手を伸ばすが、手前でピタリと止めて引っ込めた。
「でも私は全然役に立たなかったし……」
「──ああもうッ! ガーネットと言いお前と言い、うちのパーティーは何でこんなに謙虚な奴しか居ないんだ! 」
俺は頭をわしゃわしゃと掻き毟る。
「だって私は──」
「だってじゃない、同じパーティーだろ? それじゃあ足りないか? 」
「足りなくは無いけど…… 」
ロエは俯いたまま顔を上げない。
「はぁ……ロエの血の雨でミノタウルスの報酬金が上がった。まだダメか? 」
「…………」
「分かった、隊長としての権限を執行する。これからは報酬は均等分配だ。それが守れないなら脱退してもらうぞ」
俺はロエを見てニヤリと笑う。
「ほら、隊長命令だ」
「……京太郎ズルい」
「フン、なんせ隊長だからな」
俺は茶封筒を差し出す。
「いいから貰っとけ」
「……うん」
ようやく決心したのかロエは茶封筒に手を伸ばし受け取る。
────手前、
「いやぁねぇ、こんな朝から……」
「やだねぇ、はしたない」
俺とロエのやり取りを見た、買い物帰りの主婦たちがヒソヒソと話していたのが聞こえた。
「しっかりしてそうな人なのにねぇ」
「三丁目の旦那さんも遊んでたそうよぉ」
────は?
……って誰が援○だッ! ふっざけんな!
主婦たちは、俺がロエに報酬(茶封筒)を渡す所を変な事と勘違いしているらしい。
ヤバくね? 俺この町で暮らすんだぞ。世間体が……
「じゃあ、お言葉に甘えるね」
そんな俺の心配をよそに、ロエは封筒を取ろうとする。ヤバイ、今ロエに渡したら完璧に死ぬ、世間的に。
「──やっぱあげない! 」
「えっ⁉︎ 」
「ふふふ……サービス期間は終わったのさ……」
ロエは俺のスーパーエリート級の手の平返しに困惑している。本当に申し訳ないが、このお金は渡せなくなった。
「ちょっと京太郎……あんた脱退したいの? 」
「隊長権限を再び執行する! 」
「……サイテー」
ぐっ、ロエの言葉が突き刺さる。しかし譲れない、譲ったら死ぬ。世間的にだが……
主婦たちがチラチラと見ている。
「と、取り敢えず場所変えようぜ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
──洋服屋
女性向けの洋服店はすこぶる入りづらい。私服のほとんどが大きな会社の無地のシャツだった俺には何がオシャレなのかはさっぱり分からない。
だから──
「京太郎、こっちとこっち、どっちが良いと思う? 」
この様な二択に迫られると戸惑ってしまう。多分どっちも似合うんだよな……
世間でいうかわいいが分からないので、俺が似合うと思った方でいこう。
「左のやつの方が良いんじゃないか? 」
「えー……」
ダメかー。というか決まってんなら聞くなよ。
「と、取り敢えず試着してみたら良いんじゃないか? 外で待ってるから」
「じゃあちょっと待っててね」
そう言ってロエは試着室に入っていった。
「はぁ……」
相変わらずファッションセンスは皆無だなぁ、俺は。
ボーッとしながら辺りを見回す。服の他にも帽子や靴、小物なども売られている。
ガーネットにも何か買っていくか……
「二人には40時間の看病のお礼もあるしな」
ミノタウルスを倒した直後、俺は40時間も気を失っていたのだ。その時二人がずっと付き添っていてくれたらしい。
「ロエまだか? 」
「もう少し待って! 」
「はいはい」
この時間に二人に何買うか考えておこう。ロエは一応吸血鬼だし日光防ぐために……帽子とかかな?
ガーネットは別に服や靴とかに困って無さそうだし……うーん、小物かぁ?
その時、カシャァっとカーテンが開かれる。
「ど、どうかな? 」
そこには純白のワンピースを着たロエがいた。羞恥があるのか、やや頬を染め上目遣いでこちらを見てくる。
「────ッ! 」
言葉を失った。ワンピースも至って普通の、露出だって着替える前の方があったにも関わらず見惚れてしまった。
「あ、ああ……悪くないと思う、ぞ」
「ほんとっ! 」
ロエもこういった服を着るのは初めてらしい。だから返答を聞いて安堵している。そして喜んでいる様にも見えた。
「待っててね、他にもあるから! 」
「ああ 」
そして再び試着室に入っていった。
「…………はあぁぁぁぁぁ」
何だよ『悪くない』って……もっと気の利いたセリフは無いのかよ。雑魚すぎんだろ、童貞かよ。
「はあぁぁぁぁ…… 」
そいえば童貞だったな、俺……
「はぁ……」
その後もロエの試着会は続き、正直どの服装もめちゃくちゃ似合っていた。だから普段何であんな格好しているのかが不思議でならない。因みに試着したやつは全て購入した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロエの洋服を買い二人で昼食を済ました後、俺たちは家に帰りぐうたらしていた。
働かないってサイコーだな。このままだとダメ人間になってしまいそうだ……いや、そういえば俺はもう人間じゃ──以下省略
「ただいまー」
「おう、おけーり」
「……キョータローだらけ過ぎ。まだお昼だよ」
帰宅してきたガーネットに指摘されてしまった。15歳下の娘にこんな事を言われるのは少しばかり心苦しい。
「ガーネットさん、ロエもダラけてるぞ」
だから秘技『俺だけじゃない! 』を発動する。これは俺が小学校の時に身に付けた歴史のある技だ。
「え、えーと、ロエさんは吸血鬼だからいいの! キョータローは人間でしょ! 人間はお昼に活発になるって聞くよ? 」
ガーネットもロエの名前を出されて少し戸惑っていたが、すぐさま切り返してくる。
「ふふ、さすがガーネットだ。俺の秘技を容易く打ち破るとは…………しかしまだ若いな。異世界の人間の知識には疎いと見える」
「なっ⁉︎ 」
「ここは一つ、元異世界の人間としてティーチングしてやろう。さっきの情報は正しくない! 」
ビシィッと人差し指をガーネットに突き立てる。今の俺、多分超かっこいいはず!
「いいか、こっちの世界では『パリピ』という夜になると活発になる種族の人間がいるんだよ」
「ぱ、ぱりぴ? 」
「そうだ、人口照明に誘われて夜の街に現れる、簡単に言ったら羽虫みたいな奴らだよ。夜はパリピ共がウジャウジャ居るから一人で出歩くんじゃないぞ? 」
こちらの世界の人は皆んなフレンドリー過ぎて変な男に引っかからないか心配だ。初対面の男の家にホイホイ泊まってしまうのだから……
「キョータローはそのパリピって種族がよっぽど嫌いなんだね……」
俺が熱弁したせいか、ガーネットは少し引いている。まあパリピは好きじゃ無いけどね。むしろ嫌いだ。
「違わないが、それ以上にお前たちが心配なんだよ。変な男について行くんじゃ無いぞ」
「フフッ、そうだね、キョータローも変な人だもんね」
ガーネットは笑いながら答える。
「そうそう、それだよ。こんな変な奴にホイホイ付いて来るから心配してんだよ」
「大丈夫だよ、だってキョータローは童貞だもん! 」
「うげぇフゥッ! 」
ガーネットの一言がクリティカルヒットしてしまった。やはり強い……
「フン、ここで魔法使い卒業してもいいんだぞ? 」
「キョータローには無理だよ、だってキョータローチキンなんだもん」
「グハッ──! 」
ついに吐血した。そして地に膝をついてしまった。ふっ、やはり俺が見込んだ優秀な奴だぜ……強い……
「ま、まあ、変な奴には気をつけて下さいね。あとロエもだぞ! 」
「大丈夫よ、私を誰だと思ってるのよ」
ロエは寝っ転がりながら答える。いや、そんな服で言われてもなぁ。
「どちらかと言うとお前の方が心配なんだよ」
「なっ、どうしてよ! 」
「ガーネットはそこら辺しっかりしてそうだが、お前は初対面の相手に血を吸ってきたり、体押し寄せてきたりするから心配だよ」
「そ、そんな事血が美味しそうな人にしかしないわよ! 」
「おいおい、熱弁するポイントそこかよ。否定してくれよ…… 」
やはり心配だ。そもそもあの容姿に、あのスタイル、そしてあの服装……普通襲われるだろ。何で俺は襲わなかったんだ?
はーい、チキンだからでーす。
「まあいいや、とにかく変な奴には気をつけてくれよ」
「京太郎ほど変な人は居ないから安心してよね」
「いやいや、何言ってんすかロエさんまで…… 」
「フフッ、何でも無いわ」
ロエはクスッと笑いながら俺を見る。そうゆう所ですよ、そうゆう所が魔法使いになる様な奴を勘違いさせるんですよ。気をつけて下さいね!
敗北を知った俺にはもはや通用しないが、トゥンクってなりそうだから怖い……
「まあ、二人とも揃った事だしクエストに行こうぜ! 」
だからこうゆう時は話を逸らしてしまう。
「いいよ行こう! 」
「そうね行きましょ! 」
まあ二人とも賛成してくれたし──
「それじゃあ行くか! 」
最後まで読んでくださりありがとうございます!