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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
17/89

15 魔力ランク




 ──保健室


 一般的には日本の学校と同じように器具やベッドがあり、様々な薬品が並べられ微かに香る独特な匂いが鼻孔をくすぐる。

 そして机には白衣を着た保健室の先生らしき人が腰を掛け、何やら日誌を書いている。


「せんせー、お早うございます! 」


 ガーネットの挨拶に保健室の先生は振り向く。


「あら、ガーネットさんじゃない。どうしたの? 」


 先生は思った以上に若く、左目には泣きぼくろ、ふわっとした艶のある長い髪を掻き分ける。

 最近ではあまり聞かないが、昔は白衣を着たセクシーなお姉さんが保健室の先生をしているというシチュエーションが流行っていた。


 別にそんな事を思ってしまったから先生から目を逸らした訳では無い。足を組み替える度に、そのキレイな太ももに目がいくのをバレないようにする為に目を逸らした訳でも無い。うん、無い……はず。


「あら、あなたたちは? 」


「あ、せんせー、この人たちは私のパーティーメンバーなの! 」


 先生はガーネットを見てくすりと微笑み、俺とロエを見る。


「ガーネットさんをよろしくね」


 ぐっ……押されるな俺。


 だが凄いな。この先生、多分俺より年下なのに俺より大人っぽい。


「はい、任せてください」


 俺も負けじと大人っぽい対応をしてみる。ロエもずっしりと構えて──


「当然よ! このハぐももっ…… 」


 俺は咄嗟にロエの口を塞ぐ。こいつ……本当に油断も隙もないな。

 先生の方もポカンとしている。


「すみませんね、この子は人付き合いに慣れてないものでして…… 」


「フフっ、大丈夫ですよ」


 ニッコリと、包み込まれるような優しい笑顔に、俺とロエの心の声がハモった。



 大人だ……



 そんな中、その先生を見慣れているガーネットは話を進める。


「先生、魔力測定器を使いたいんだけど」


「どうしたの? つい最近身体測定したばかりじゃない」


「今日は私じゃなくて二人の魔力が測りたいんだー! 」


「二人? 」


 先生はそういってこちらをみる。俺はつい頭を下げてしまった。それを見た先生はふふっと微笑む。


「いいわ、魔力測定器を使っても」


「本当⁉︎ 」


「ええ、それと── 」


 先生は棚の方から魔力測定器を取り出し、振り向きざまに俺を見て、


「私も測定値が気になるから見てもいいかしら? 」


「え? 別に構わないですが…… 」


 元々隠すつもりも無かったので、何となく許可してしまった。


「そう、ありがとね」


「はあ……? こちらこそありがとうございます」


 何故感謝されるのかよく分からないが、別に気分が悪い訳でも無いので深く考えるのは止めておこう。



 魔力測定器──見た目は握力を測る機器と差異はない。握るところがあり、その上に1の位と10の位、二桁までのデジタルのメモリがある。



「ハイハーイ! 私から測りたい! 」


 測定器を見るや、ロエが勢いよく手を挙げる。


「これってどうやって測るんだ? 」


「そうね、なら使い方から説明するわね。この器具を握ると、魔力に応じた数値が上のメモリに出てくるの」


「握るだけでいいんですか? 」


「そうね、イメージとしては己の魔術回路をこの器具に繋げる感じよ」


「魔術回路を繋げるイメージ……」


 またしてもイメージか。ユスタの時もだが魔法って意外と曖昧なんだな。


「自分の回路を器具に繋げて魔力を通す感じよ。そして魔力値は0〜10の11段階のランクに分けられ、ランク7以上だとかなりの魔力量よ。ランク9を超える人は大魔導士でもそこまで居ないわ」


「なるほどな……」


 つまりこの器具は魔力量そのものを測るものではなく、魔力量に応じたランクを付けてくれる器具という事か。


 そしてランクが7以上だと魔力量はかなり高い。



 9を超えるランクはほとんど居ない。



「ちなみにガーネットのランクはいくらなんだ? 」


「私はランク4だったよ」


「うーむ、ランク4は凄いのか? 」


「この歳でランク4はかなりの逸材よ」


 これにはガーネットではなく、先生が食いつく。


「成人した時にランクが5以上だと将来有望だと言われているわ。だからこの歳で既にランクが4のガーネットちゃんはかなりの魔力量よ」


「成人のランクが5でガーネットが4……」


 俺とロエは驚きながらガーネットをまじまじと見る。


「ちょ……そんなに見てこないでよ」


 ガーネットは見られるのが恥ずかしいのか、急にうつむいてしまった。

 ガーネットは優秀だ。やはり俺の目に狂いは無かったのだ。


「わ、私のことより、はいロエさん! 」


 ついに耐えられなくなったのか、ガーネットは話をそらす。


「そうね、それじゃあいくわ! 」


 そう言ってロエは魔力測定器を握る。



 『 0 』



「あれ、0だわ」


 ロエは首を傾げながら測定器のメモリを見る。


「ロエさんって吸血鬼なんだよね」


「あら、あなた吸血鬼だったの? 吸血鬼は魔力は通ってない筈よ」


「え、そうなんだ……」


 ロエは分かりやすくシュンとする。まあ分からんでもないがな、その気持ち。

 ランク0って表示されたらそうなるわな。


「次は俺か……」


 楽しみである反面緊張してくる。ロエみたいにランク0だと、俺の場合は本当に救いようが無いからな。


 つばを飲み込み、準備する。



 落ち着け俺……



 魔術回路を繋げるイメージだ。



 俺の体の回路を……



 この器具と──



「しゃぁああああああああ──ッ! 」


 繋ぐイメージを持ち、俺は全力で測定器を握る。もの凄い力を込めて握る。



 どうだ、どうなんだ!



 緊張のあまり自然に握る力が強くなる。




 せめて1以上……1以上、1以上──




「はぁああああああああ──ッ‼︎‼︎‼︎ 」






 ──バァアアアアッン‼︎‼︎‼︎‼︎






 突然、魔力測定器から破裂音が響き白い煙が上がる。


「「「「────なっ⁉︎ 」」」」


 俺を含め、保健室の全員が声を上げた。


「ちょ──ちょっと貸して! 」


 一足先に我に返った先生が俺から魔力測定器を取り上げ、メモリを確認する。



「え……うそッ」



 数値の値を確認した先生が唖然としだした。







最後まで読んで頂きありがとうございます!

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