14 緋色の少女・スカーレット
そろそろタイトル変えたい……
「あのぅ……」
「はい? 」
振り返ると、足元が震えた女の子がいた。そして俺を睨みつけ──
「が、ガーネットちゃんから離れて──ッ! 」
震えた、そして振り絞った女の子の叫びは校門全体に響き渡り、全ての視線が俺と女の子に向かれる。
「……はいっ? 」
俺とロエとガーネットは、突然の事で目が点になる。しかし状況は俺たちを無視してどんどん悪くなっていく。
「どうした! 何が起きたんだ? 」
「何だ? ガーネットがどうしたんだ⁉︎ 」
「不審者よ! 」
「ガーネットが襲われてるぞ! 」
「あの人たちやっぱり不審者だったのよ! 」
辺りはざわめきだす。というか『やっぱり不審者』って聞こえたんだけど。さっきまでのJC達の視線ってそうゆう事なの? 泣くぞ?
しかし今はそれより──
「ガーネットちゃんは私の友達なの! ふ、不審者は許さない──ッ‼︎ 」
怖がりながらも勇気を振り絞り女の子は叫ぶ。
……え?
「私が、──助ける! 」
そういって女の子は杖を振るい、
「《火炎よッ──! 」
「こいつッ! やべ──」
「キョータロー危ないッ! 」
「《地の精よ、その力を以て── 」
「──その熱纏いて焼き放て》──ッ! 」
一足先に女の子の魔法が完成する。杖から放たれる燃え盛るような火球は俺を目掛けて飛来する。
「ちッ──、また右腕がぁあああああ! 」
俺は玉砕覚悟で右腕を逆水平に振り、火球を弾く。
「──盾となれ》──ッ! 」
──寸前、
俺の目の前の地盤が盛り上がり土の壁が出現する。そして迫り来る火球は壁に着弾し、散り散りに霧散する。
「そんなっ⁉︎ 」
女の子が動揺した僅かな瞬間、俺は一気に距離を詰め──
「ちょっとおいたが過ぎるぜ、お嬢さんよ」
「か、《火炎── 」
再び詠唱する女の子の杖を奪い、クルッと回し、杖の先を少女の喉元に突き立てる。
「チェックメイトだ」
「あ……ああ」
女の子はへなへなと、その場に倒れこむ。
「フッ──」
……決まったぁアアアア! 今の俺、絶っっ対かっこいい! 一回言ってみたかったん痛ス!
一人で浸っていると、誰かに後ろから叩かれてしまった。
「もう! キョータロー! その子は私の友達なの! 」
その友達の女の子はうるうると、今にも泣きそうな顔をしている。……やべ、やりすぎたかも。
「す、すまん……」
俺は持っていた杖を丁寧に女の子の目の前に置き、自分の杖の柄を女の子に差し向ける。とりあえず敵意が無い事を証明しないと……
俺はどこかの大魔導士お墨付きの魔法使い間の動作を行う。なんたって大魔導士のお墨付きだ。この現状も打破できる筈だ。
それを見た女の子はグスッと目をこすり、杖を取り──
「《火炎よ、その熱纏いて焼き放て》ッ! 」
「うおッ! あぶねっ! 」
俺は放たれる火球を地面に転がりながら、紙一重で避ける。
ガーネットは今度は助けてくれなかった。ロエは『自業自得だバカ』みたいな目で見てくる。うう……パーティーメンバーが冷たい……。
まあ、確かに大人気ない所もあったけども、仕方ないじゃない? だって……男の子だもん!
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「先ほどはすみませんでした。ガーネットちゃんもごめんね……」
「おい、何で俺を見て言わないんだよ」
女の子はロエとガーネットだけに謝る。
「フンッ! 」
「こ、この女ァ……」
「キョータロー、落ち着いて」
「京太郎はいい歳して大人気ないのよ」
「ぐぅ……」
「フンッ、いい気味よ! 」
「スカーレットちゃんもだよ! 」
「うぅ……」
「ザマーミロ、この女! 」
「キョータロー! 」
「うぅ……」
俺と女の子は俯くしかない。ガーネットさん……強い!
「もう……! 」
ガーネットは、やれやれと言わんばかりに俺たちを見る。
「キョータロー、ロエさん、紹介するね。この子は私の友達のスカーレットちゃん! 」
「私はスカーレットと申します。よろしくお願いします! 」
そういってスカーレットはロエだけに頭を下げる。
「おい……」
「フンッ! 」
「……スカーレットちゃん! 」
「うぅ……」
「また怒られてやんの! バーカバーカ! 」
「キョータロー! 」
「うぅ……」
「京太郎ってバカなの? 」
……こんなアホっ子に言われてしまった。くっ殺!
「私はローリー=エリントンよ、よろしくねスカーレットちゃん! 気軽にロエって呼んでいいわ」
……あれ? ロエのやつ初対面の相手なのに『このハゲッ! 』って言わないんだな。
ロエの顔を見ると、今にも泣きそうで、何かに感動している様だ。なるほどな、スカーレットがガーネットの友達だから、挨拶する前から友達だと思ってたのか。
……しかしなロエ! 友達の友達はあくまで友達の友達であって友達では無いのだ! つまり友達では無いのだ!
何ならお互い余所余所しいから他人よりタチが悪い。先達の俺が言っているから間違いない。ただ女の子は秒で友達になっちゃうからなぁ……
そして崩壊するのもあっという間だよね。同性間の陰口が多すぎて若干引いてしまったこともある。まあ、一部だけかも知れないが……
「はい。よろしくお願いしますロエさん! 」
スカーレットはにっこり笑いながらロエの手を握る。すると案の定ロエさんが泣きます。
「よろじぐね……スガーレッドぢゃん」
「え! え? ロエさんどうしたんですか? 」
突然の事でタジタジになるスカーレット。
「あっはは……」
それを見て苦笑いするガーネット。
「あー! スカーレットがロエを泣かした! 」
そして大人気ない俺。言ってて自分でも分かるくらい大人気ない。しかし止めてやらないぜ!
「そ、そんな……ロエさんごめんなさい」
そんな俺のつまらない冗談も気付かないほど焦るスカーレット。
「ぢがうよ、スガーレッドちゃんは悪ぐないの……」
女の友達が増えた事により号泣するロエ。
うん……悪くない……こんな光景も悪くないけど、みんなもう魔力測定器の事忘れてない? ここに来た目的忘れてないですか? 大丈夫ですか?
俺はため息をつきつつスカーレットをチラリと見る。
スカーレット──緋色のさらりとしたポニーテールが特徴的で元気溢れる女の子だ。いきなり魔法をぶっ放す危ない面もあるが、ガーネットを助けようとした正義感のある面も見受けられる。
そして俺は何故か嫌われてるっぽい……
「おい、そろそろ保健室に行こうぜ」
「「あっ! 忘れてた」」
「お前ら……」
ロエは相変わらずアホっ子だからあれだが
、ガーネットも意外な所でうっかりしている。
俺は時計を確認する。8時40分過ぎか……
「というか── 」
スカーレットは制服を着ている。そう、制服を着ているのだ。
「おいスカーレット、お前今日授業あるんじゃないのか? もう8時半過ぎてんぞ」
「──あっ! 」
スカーレットは絶句する。
「あ……あ、あ、皆勤賞が……」
時計を見て時間を確認した辺りでプルプルと震え出した。
「乙! 」
なんか皆勤賞逃したっぽいので煽っておくことにした。
「あああ……」
スカーレットは油の挿してない年季の入ったロボットみたいに、ぎこちない動きでこちらを見てくる。
「ドンマソまれいたそ! 」
なのでもう一度煽っておくことにした。
「ふ、ふふふ…… 」
スカーレットは突然笑い出し──
「《業炎よ…… 」
ま、まさかこいつ……
スカーレットの杖は既に俺に狙いを定めている。
「《灼熱の業炎よ…… 」
「おいおいおい、スカーレットさん……? 」
「《劫火給いて焼き── 」
「ちょ、おま──何ナチュラルにさっきより1、2段階上級の魔法ぶっ放そうとしてんだよ! 」
俺は急いでスカーレットの杖を取り上げる。
「か、返して! 」
「返してやるから、さっさと授業に行け! 」
俺は杖を差し出すと、スカーレットは荒々しく取り、荷物纏めて校舎へ走っていった。
「何だあの灼熱娘は……」
「キョータロー、スカーレットちゃんと凄く仲良いね」
「どこがだよ ……」
「フフッ」
そういってガーネットは楽しそうに笑っていた。
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