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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
16/89

14 緋色の少女・スカーレット

そろそろタイトル変えたい……


「あのぅ……」


「はい? 」


 振り返ると、足元が震えた女の子がいた。そして俺を睨みつけ──



「が、ガーネットちゃんから離れて──ッ! 」



 震えた、そして振り絞った女の子の叫びは校門全体に響き渡り、全ての視線が俺と女の子に向かれる。



「……はいっ? 」



 俺とロエとガーネットは、突然の事で目が点になる。しかし状況は俺たちを無視してどんどん悪くなっていく。


「どうした! 何が起きたんだ? 」

「何だ? ガーネットがどうしたんだ⁉︎ 」

「不審者よ! 」

「ガーネットが襲われてるぞ! 」

「あの人たちやっぱり(、、、、)不審者だったのよ! 」


 辺りはざわめきだす。というか『やっぱり不審者』って聞こえたんだけど。さっきまでのJC達の視線ってそうゆう事なの? 泣くぞ?


 しかし今はそれより──



「ガーネットちゃんは私の友達なの! ふ、不審者は許さない──ッ‼︎ 」



 怖がりながらも勇気を振り絞り女の子は叫ぶ。


 ……え?


「私が、──助ける! 」


 そういって女の子は杖を振るい、



「《火炎(かえん)よッ──! 」



「こいつッ! やべ──」

「キョータロー危ないッ! 」



「《()せいよ、そのちからもつて── 」

「──そのねつ(まとい)いてはなて》──ッ! 」



 一足先に女の子の魔法が完成する。杖から放たれる燃え盛るような火球は俺を目掛けて飛来する。


「ちッ──、また右腕がぁあああああ! 」


 俺は玉砕覚悟で右腕を逆水平に振り、火球を弾く。



「──たてとなれ》──ッ! 」



 ──寸前、


 俺の目の前の地盤が盛り上がり土の壁が出現する。そして迫り来る火球は壁に着弾し、散り散りに霧散する。


「そんなっ⁉︎ 」


 女の子が動揺した僅かな瞬間、俺は一気に距離を詰め──


「ちょっとおいたが過ぎるぜ、お嬢さんよ」


「か、《火炎── 」


 再び詠唱する女の子の杖を奪い、クルッと回し、杖の先を少女の喉元に突き立てる。


「チェックメイトだ」


「あ……ああ」


 女の子はへなへなと、その場に倒れこむ。


「フッ──」


 ……決まったぁアアアア! 今の俺、絶っっ対かっこいい! 一回言ってみたかったん痛ス!


 一人で浸っていると、誰かに後ろから叩かれてしまった。


「もう! キョータロー! その子は私の友達なの! 」


 その友達の女の子はうるうると、今にも泣きそうな顔をしている。……やべ、やりすぎたかも。


「す、すまん……」


 俺は持っていた杖を丁寧に女の子の目の前に置き、自分の杖の柄を女の子に差し向ける。とりあえず敵意が無い事を証明しないと……


 俺はどこかの大魔導士お墨付きの魔法使い間の動作を行う。なんたって大魔導士のお墨付きだ。この現状も打破できる筈だ。


 それを見た女の子はグスッと目をこすり、杖を取り──



「《火炎かえんよ、そのねつ(まとい)いてはなて》ッ! 」



「うおッ! あぶねっ! 」


 俺は放たれる火球を地面に転がりながら、紙一重で避ける。


 ガーネットは今度は助けてくれなかった。ロエは『自業自得だバカ』みたいな目で見てくる。うう……パーティーメンバーが冷たい……。


 まあ、確かに大人気おとなげない所もあったけども、仕方ないじゃない? だって……男の子だもん!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「先ほどはすみませんでした。ガーネットちゃんもごめんね……」


「おい、何で俺を見て言わないんだよ」


 女の子はロエとガーネットだけに謝る。


「フンッ! 」


「こ、この女ァ……」


「キョータロー、落ち着いて」


「京太郎はいい歳して大人気おとなげないのよ」


「ぐぅ……」


「フンッ、いい気味よ! 」


「スカーレットちゃんもだよ! 」


「うぅ……」


「ザマーミロ、この女! 」


「キョータロー! 」


「うぅ……」


 俺と女の子はうつむくしかない。ガーネットさん……強い!


「もう……! 」


 ガーネットは、やれやれと言わんばかりに俺たちを見る。


「キョータロー、ロエさん、紹介するね。この子は私の友達のスカーレットちゃん! 」


「私はスカーレットと申します。よろしくお願いします! 」


 そういってスカーレットはロエだけに頭を下げる。


「おい……」


「フンッ! 」


「……スカーレットちゃん! 」


「うぅ……」


「また怒られてやんの! バーカバーカ! 」


「キョータロー! 」


「うぅ……」


「京太郎ってバカなの? 」


 ……こんなアホっ子に言われてしまった。くっ殺!


「私はローリー=エリントンよ、よろしくねスカーレットちゃん! 気軽にロエって呼んでいいわ」


 ……あれ? ロエのやつ初対面の相手なのに『このハゲッ! 』って言わないんだな。


 ロエの顔を見ると、今にも泣きそうで、何かに感動している様だ。なるほどな、スカーレットがガーネットの友達だから、挨拶する前から友達だと思ってたのか。



 ……しかしなロエ! 友達の友達はあくまで友達の友達であって友達では無いのだ! つまり友達では無いのだ!



 何ならお互い余所余所よそよそしいから他人よりタチが悪い。先達の俺が言っているから間違いない。ただ女の子は秒で友達になっちゃうからなぁ……


 そして崩壊するのもあっという間だよね。同性間の陰口が多すぎて若干引いてしまったこともある。まあ、一部だけかも知れないが……


「はい。よろしくお願いしますロエさん! 」


 スカーレットはにっこり笑いながらロエの手を握る。すると案の定ロエさんが泣きます。


「よろじぐね……スガーレッドぢゃん」


「え! え? ロエさんどうしたんですか? 」


 突然の事でタジタジになるスカーレット。


「あっはは……」


 それを見て苦笑いするガーネット。


「あー! スカーレットがロエを泣かした! 」


 そして大人気おとなげない俺。言ってて自分でも分かるくらい大人気ない。しかし止めてやらないぜ!


「そ、そんな……ロエさんごめんなさい」


 そんな俺のつまらない冗談も気付かないほど焦るスカーレット。


「ぢがうよ、スガーレッドちゃんは悪ぐないの……」


 女の友達が増えた事により号泣するロエ。


 うん……悪くない……こんな光景も悪くないけど、みんなもう魔力測定器の事忘れてない? ここに来た目的忘れてないですか? 大丈夫ですか?


  俺はため息をつきつつスカーレットをチラリと見る。



 スカーレット──緋色のさらりとしたポニーテールが特徴的で元気溢れる女の子だ。いきなり魔法をぶっ放す危ない面もあるが、ガーネットを助けようとした正義感のある面も見受けられる。



 そして俺は何故か(、、、)嫌われてるっぽい……


「おい、そろそろ保健室に行こうぜ」


「「あっ! 忘れてた」」


「お前ら……」


 ロエは相変わらずアホっ子だからあれだが

、ガーネットも意外な所でうっかりしている。


 俺は時計を確認する。8時40分過ぎか……


「というか── 」


 スカーレットは制服を着ている。そう、制服を着ているのだ。


「おいスカーレット、お前今日授業あるんじゃないのか? もう8時半過ぎてんぞ」



「──あっ! 」



 スカーレットは絶句する。


「あ……あ、あ、皆勤賞かいきんしょうが……」


 時計を見て時間を確認した辺りでプルプルと震え出した。


「乙! 」


 なんか皆勤賞逃したっぽいので煽っておくことにした。


「あああ……」


 スカーレットは油の挿してない年季の入ったロボットみたいに、ぎこちない動きでこちらを見てくる。


「ドンマソまれいたそ! 」


 なのでもう一度煽っておくことにした。


「ふ、ふふふ…… 」


 スカーレットは突然笑い出し──



「《業炎ごうえんよ…… 」



 ま、まさかこいつ……


 スカーレットの杖は既に俺に狙いを定めている。



「《灼熱しゃくねつ業炎ごうえんよ…… 」



「おいおいおい、スカーレットさん……? 」



「《劫火ごうかたまいてき── 」

「ちょ、おま──何ナチュラルにさっきより1、2段階上級の魔法ぶっ放そうとしてんだよ! 」


 俺は急いでスカーレットの杖を取り上げる。


「か、返して! 」


「返してやるから、さっさと授業に行け! 」


 俺は杖を差し出すと、スカーレットは荒々しく取り、荷物纏めて校舎へ走っていった。


「何だあの灼熱娘は……」


「キョータロー、スカーレットちゃんと凄く仲良いね」


「どこがだよ ……」


「フフッ」


 そういってガーネットは楽しそうに笑っていた。




最後まで読んで頂きありがとうございます!

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