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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
11/89

9 大魔導士・ユスタリエ=アンノリー

ピクルス=ピルクル=乳酸菌=L.カゼイ シロタ株


「──撤回しろ」


「わ、悪かったよ……」


 ピルクルは手を差し出し、俺を宥めながら謝る。


「何が、悪かったのか言ってみろ」


「ヒィィッ」


「この男は、何にも悪くないのにお前の為に頭を下げてくれているんだ。それを裏切ってやるなよ? 」


 ピルクルはユスタの方をチラリと見る。


「ぐうぅぅ……。ユスタ! こんな奴に頭を下げる必要は無い! だから── 」


「ダメだ、僕は『許してくれるまで頭を上げない』と言った。だから君が撤回するまで頭を上げない」


「その通りだ、こんな地位の高い男がこんなに体張ってんだ。お前も何とかしてみせろよ。と言っても俺は難しい事なんか一つも言ってないんだがな」


 この男は本気で分かってないのか。そうだとしたら本当に救いようが無い。ユスタという男は頭を下げ損だな。


「──ちっ、ユスタが下手(したて)に出たからって調子に乗りやがって……」


「次── 」


 俺の耳は、ピルクルが小声で発した愚痴を拾ってしまった。


「次そんな舐めた事を言ったら、この男にマジカル殺法をお見舞いするぞ」


「ふ、ふざけんなよッ! 」


「だったら速く撤回しろ。難しい事は言ってないだろ」


 俺の熱がどんどん上がっていく。


「キョータロー、もういいよ……」

「そうよ、京太郎何か怖いわ……」


 そんな上がった熱を冷ます様に、二人が震えながら縋り付いてくる。俺はそこまで怖かったのか……ちょいと反省。


 俺は体の力を抜き、天を見上げ、ゆっくりと呼吸する。


「ガーネット、ロエ、悪かったな。もう大丈夫だから」


「「うん」」


 どうやらいつもの顔に戻ったらしい。あまり向いてない事はするもんじゃ無いな。


 そしてそんなやり取りを見ていたピルクルは何かに気づき、ニヤニヤと笑い俺に近づく。


「さっきは悪かったよ、クヒヒッ、その二人のことを悪く言って」


 この男……全く反省してねぇ。ローリングソバットでも喰らわしてやりたいが、これ以上キレると二人を心配させてしまう。そして何より……


 俺はユスタという男に近づいていき、


「顔を上げてくれ、もう許したから」


「すまない……」


 顔を上げる前にもう一度謝罪をしたのだ。この男、凄くできた魔法使いだ。正直一人でキレてた自分が恥ずかしいくらいだ。

 ユスタという男は顔を上げて一つ咳払いをする。


「先ほどは彼がすまなかった」



 そう言ってユスタという男は腰に挿していた杖を出し、の部分を俺に向ける。



 何だ? くれるのか?


「ああ、ありがとう」


 俺は礼を言いながら杖を取る。


「「「「「────なっ! 」」」」」


 すると、ロエを除く酒場の全員が絶句する。


「あ、アンちゃん何やってんだい! 」


「は? 」


「あなたとんでもないわね! 」


「いや、だから何が? 」


「キサマ! ユスタがせっかく使わない杖(、、、、、)をわざわざ出したというのに! 」


 乳酸菌も激しく責め立てる。ロエと俺のみがポカンとしている。


 すると、足をチョンチョンと叩かれる。ガーネットが何か言いたげにこちらを見ていた。


「あのね、さっきの動作は魔法使い間で行われる友好関係を築く作法なの。お互い安全な柄の部分で触れ合う事で成立するの……」


「…………なる、ほど……なぁ」


 俺は急いでユスタに杖を返却し、自分の杖の柄を向ける。


「すまない、こういった知識に疎いんだ。」


 ユスタという男は苦笑いし、何かを悟ったように少し悲しい顔になる。



「噂通り本当に入れ替わったんだな……ライシエル(、、、、、)ユーマ(、、、)


「え? 」


「いや、何でもないよ」


 そういってユスタは柄を合わせる。さっきは何を言ってるか聞こえなかったが、今はもう明るい表情に戻っている。


「僕の名前はユスタ。ユスタリエ=アンノリーだ」


「俺は京太郎。朝山京太郎だ。よろしく」


 俺はユスタに手を差し出す。ユスタは少し黄昏れた表情を浮かべ──


「朝山、京太郎──か……」


「ユスタ? 」


「いや、何でもないよ。よろしく京太郎! 」


「ああ」


 ユスタは俺の手を握る。


 やはり、友好関係の証ならこちらの方がしっくりくる──


「それじゃあ僕たちは行くよ。何故か(、、、)血まみれで、怒り狂ったミノタウルスが暴れてるって聞きつけたからね。京太郎たちも気を付けてくれ」


「「ぎくっ! 」」


 俺とロエがブルりと震える。またこの話題か。くそう、罪から逃げ惑う犯罪者の気分だ……

 とりあえず誤魔化すしかない!


「あー、ユスタ。そのミノタウルスなんだが……」


「そのミノタウルスならそこのアンちゃんが倒しちまったぜ! 」


「──なっ! 」


 誤魔化そうとした手前、酒場の方から声が上がる。


「そうだぜ! そこのパーティーが何故か(、、、)血まみれだったミノタウルスを倒したんだぜ! 」

「血まみれのまま放置した不逞な輩の代わりに倒しちまったぜ! 」


 酒場の荒くれ者たちが、自分の事のようにユスタに話す。


「「「なっ! アンちゃん! 」」」


 ゴフッ……俺とロエは堪らず吐血した。くそ、あいつら勝手に不発弾を掘り起こして俺たちに投げてきやがった。


「と、当然だろ! 町の危機だったんだ……から、な! 」


「「「「「さすがだぜ‼︎ 」」」」」


「血まみれで放置したやつは見つけ次第締め上げないとなァ! 」

「そうだ! そんな輩は吊るし上げるぞ! 」

「そうだそうだ! 見つけたら土下座させてやる! 」



「「 ゴファッ……! 」」


 口から大量に血を吐き出してしまった。出血多量で死ぬ……

 ロエも同様地面に膝をつけプルプルと震えている。


「あっはは……どうしよう……」


 ガーネットは苦笑いをするしかなかった。


 その後『犯人探し……ヨクナイ』と、アナログの機械の様な口調で言いながら、何とか誤魔化した。


 23回目辺りから犯人を庇う聖人と勘違いされ、41回目辺りで犯人お前じゃね? と言われたが、58回目で最終的に聖人に落ち着いてしまった……





 最後まで読んで頂きありがとうございます!


 活動報告でもらいましたユスタリエ=アンノリー通称ユスタでした!


 キャラの名前はつきちゃった

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