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そうです、ただの魔法使いです  作者: 玄上ひとえ
第1章 魔法使いと入れ替わりました
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8 煽り耐性○⁉︎

 アホガール見てたら更新遅れた……


 ガーネット曰く、魔法使いは魔法をひどく神聖視しているらしく壊した杖の本数が一種のステータスらしい。

 そして俺が今持っている杖が魔法使いの最初の一本目の杖の事……



 ──つまり舐められているのだ



「クヒヒヒヒ、言葉も出ないか? 魔法使いが魔法も使えないなんてなぁ、とんだ恥晒しだぜ! 」


「ちょっとあなた、いい加減に── 」


 俺は顔に怒りの色がともるロエの言葉を右手で遮る。


「……京太郎? 」


「いいんだよ、ロエが怒ることは無い。恥ずべき事かは知らんが俺は別に怒ってない」


 ……と、このように煽り耐性には定評がある社会人8年目だった朝山京太郎なのである。

 クソゴミ上司とは違い、この男の言っている事は間違いでは無いのだ。


「おいお前、ずいぶんと魔法を神聖視してるじゃないか」


「はぁ? 何言ってんだ、当然だろ! クヒヒっ、まあ魔法が使えない野郎には分からんと思うがな」


 小太りの男は俺の見てニヤニヤする。


「なるほど、だがなぁ、いくら魔法が高貴なモノでも、それを使う奴がそんなんじゃあなぁ」


「なんだと‼︎ 」


「だって考えてみろよ、高貴な魔法は使えるが下品な男と、魔法は使えないが気品溢れる超絶優雅な男。どちらが良いかなんて火を見るよりも明らかだろ」


「ふ、ふざけんなッ‼︎ 誰が下品な男だ! 」


「お前だよお前。叫ぶ時に唾を散らす、管理を怠ってブクブクと太ったそのお腹、そして汚い笑い方……下品と言わずに何という」


「な、なんだとぉ……‼︎ 」


「そんなんだからいつまで経っても結婚出来ないグハァッ! 」


 俺が投げたブーメランは小太りの男を貫き、そして俺に突き刺さってしまった。がっくりと地面に伏してしまう。いかん……大ダメージだ。


「だ、黙れ落ちこぼれ! クヒヒヒヒ、魔法が使えないお前なんかの居場所は無いんだよ‼︎ 」


 小太りの男の罵声により、酒場の空気は悪くなる。


「またピクルスよ、感じ悪ぅ……」

「ユスタの金魚のフンがまた何か言ってる」

「大魔導士のユスタの隣にいるからって、すぐ調子に乗るんだから……」


「おい! 聞こえてるんだよ女ども‼︎ 」


 小太りの男はプルプルと震えながら叫び散らす。


「ユスタは関係ねぇ! 俺だって立派な魔術師なんだよ── 」

「分かる、分かるぞ! ピルクル乳酸菌! 」


「誰がピルクルだ‼︎ 俺はピクルスだ! 」


「ああ、すまないピルクゥル! 」


 俺はピルクォウの叫びをちゃんと聞いた上で、立ち上がり肩を叩く。


「うんうん、あるよなー。天才の近くだと自分の才能に気付いてもらえない事への苛立ちとかよ〜く分かるよ。現に俺もそういった奴をたくさん見てきた(、、、、)


「あ……ああ? 」


 男は俺の突然の手の平返しに面食らっている。分かるよ、何せ俺も30歳だ。色んな人間を社会で見てきた。


「分かるよ、そういった奴は大抵自分より下の者に八つ当たりするんだよ……俺のクソゴミ上司みたいになぁ」


 何故か今無性に腹が立っている。ゴミカスを思い出したからか? それとも見ず知らずの、器の持ち主を馬鹿にされてる様に聞こえたから?


「他人の評価を下げる事で自分の位置を上げようとする──お前はそんな奴だよ」


「な、何が言いたいッ? 」


「俺はそんな奴に沢山ちょっかいかけられたよ……」


 フツフツと、


「そしてその度にねじ伏せてきた── 」


 フツフツと、


「言っただろう、俺は基本ハイスペックなんだって」


 フツフツと、胸の内に滲み出る感情が俺を支配する。


「そしてそれは異世界でも同様だって言ってんだよ」


「い、一体何の話をしてんだよ! 」


「分かんねーの? ここまで言ってまだ分からない? 」


 はぁ……と、息を吐き──


「テメェをねじ伏せてやるって言ってんだよこの野郎ォ! 」


 俺は素早く右足を踏み出し一瞬で男の懐に入り込む。



「地獄で果てなッ!」



 体を捻り、振りかぶった左拳が男の顔面に減り込む。



 ────寸前



『何の騒ぎだッ⁉︎ 』



 突如2階から声が上がる。


 声を上げたのは見たことのない、全く正体の分からない男だ。一つだけ分かるのはイケメンだという事。


 イケメンって罪だよね、思わずぶっ飛ばしたくなる……とか思ったりしない! 今の俺はイケメン(断定)程では無いが、中々いい顔をしているのだ。


 といっても、元々の俺の顔だって悪くは無かった筈だ。ただ彼女が居なかっただけだ!


 浮ついた話がなさ過ぎて《お前・地に足つけ過ぎ・ゴキブリかよ! 》と、ご丁寧な三節詠唱で言われたくらいだ……グスッ


 俺はピルクルの顔面の目の前で止めた拳を開き、杖を取り返す。


「──ちッ、ユスタか……」


 ピルクル乳酸菌は小さい声で舌打ちをした。


「ピクルス、これはどうゆう状況だ? 」


「い、いやぁ、何でもねーよ。ちょっとお話をしてただけだよ」


 乳酸菌は焦りながら説明する。


「きゃーー、ユスタよ! 」

「ユスタ様! 」

「ユスタ様が何故ここに? 」


 一斉に女の黄色い声が飛ぶ。


 前言撤回、やっぱぶっ飛ばしていいかな?


「話って誰と── 」


 ユスタという男は、俺の顔を見るなり口を開け言葉を失う。


「なるほど……」


 カツカツとゆっくりと一階に降りてきて、俺の前まで近づく。高貴溢れるその振る舞いに俺を含め、酒場の全員が静かになる。


「ピクルスを殴ろうとした様に見えたのだが、説明してくれるか? 」


「あー、それはだな……」


「その男が京太郎に悪口を言ったのよ! 」


「──京太郎だって(、、、、、、)? 」


 その男は何故か名前に反応した。


「そうだよ、そのピクルスさんがキョータローに喧嘩を売ったんだよ」


 ロエとガーネットがユスタという男に話す。ユスタという男はピルクルの方をチラリと向きながら──


「それは本当か、……ピクルスッ 」


「「「「「──ッ⁉︎ 」」」」」



 ──殺気のような



 鋭く凍てついた眼光がピルクルを捉える。俺やロエ、ガーネット、酒場の全員が凍りつく。


「い、いや違うぜ……あいつらが嘘をついてんだ! 」


「「「はあ? 」」」


 俺たちは乳酸菌の訳の分からない発言に変な声を出してしまった。


「ちょっと、何言ってるの! あなたが京太郎に喧嘩をふっかけたんでしょ! 」


「それは……ひどいよ」


 ロエとガーネットは堪らず反論する。


「だ、黙れ! お前たちみたいな奴を誰が信じるか! なあユスタ!」


「…………」


「お前、いっつもギルドの周辺をうろついてた吸血鬼だろ! 友の一人も居ないような奴の言葉なんか信じるかよ! 」


「──なっ⁉︎ 」


「それにもう一人はまだちっせぇガキじゃねぇか! 」


「…………」


「そんな奴らなんか──」

「撤回しろ」


 俺はピルクルの言葉をぶった切った。


「もう一度言う、──撤回しろ」


 今、自分がどんな顔をしてるか分からない。殺意を込めた眼光はただひたすらにピルクルに向かっている。


「な、何を── 」


 一歩。


「……なんていうか」


 また一歩。


「お前みたいなのを見てると……」


 ゆっくりと歩み、


「殺したくなる── 」


 ブルルッ! と、ピルクルとユスタが激しく身震いをする。それ程にとんでもない顔をしているのだろう。それでも構わずピルクルに向かって歩く──俺をユスタが制止する。


「……何のつもりだ?」



「すまなかった」



 なんとユスタが頭を下げたのだ。


「ユスタ様が頭を……」


「大魔導士様が頭を……」


 酒場が困惑に包まれる。ユスタという男は街に知れ渡るほど有名人で、地位の高い魔法使いなのだろう。そのユスタが頭を下げるという事はよっぽどのことらしい。


「ユスタといったな、頭を上げてくれないか?」


「君が許してくれるまで頭を上げない」



「はぁ……ならピルクルが撤回するまでずっと頭を下げてろ」



「「「「────なっ⁉︎ 」」」」



「ふ、ふざけんな! あのユスタが頭を下げてるんだぞ! 」


 堪らずピルクルが攻めに入る。


「俺が! 誰に対して怒ってるのかまだ分かってないのか? 」


 明確に殺意まで向けた。しかしこの乳酸菌はまだこんなチャランポランな事を言ってのけるのだ。


「お前が! さっきの言葉を撤回したらこの男は頭を上げられるんだよ。あんまり恥をかかせてやるなよ」


「ぐっ……」


 ピルクルは歯ぎしりをし、葛藤する。


「わ、悪かったよ。魔法が使えないとか言って──」


「……お前、ずいぶんなエンターテイナーじゃないか。そんなに死にたいなら今ここで公開処刑をしてやろうか? 」


「ヒィィッ」


「はぁ……もう一度チャンスをやる」


 俺は震えるピルクルを見据え、





「──撤回しろ」


 




 



最後まで読んで頂きありがとうございました!

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