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長い髪

作者: れなた

大学の課題で書いたブツです。

女装男子は大好物だけど男の娘はなんか違う気がする

 クリスはひどく女々しくて臆病な男だ。男の癖に髪を腰あたりまで伸ばしていて、しかも町のマドンナのカレンに気に入られている。だからか僕以外の同年代の男によくいじめられている。荷物を持たされたり、ズボンを脱がされたりと、幼稚で頭の悪いいじめを受けているから、あいつはいつもウジウジしている。

 そんなクリスに、僕は悪ガキ達に持たされた重い荷物の一部を持ってやるなどさりげなく優しくしているつもりだ。しかし一向にいじめが終わらないので、僕は彼にアドバイスをする事にした。

「たまには逃げる事も大事だよ。逃げてしまえばいじめられないさ」

「でも……」

「でもじゃない。もし大きな斧を持った殺人鬼がクリスを殺して肉にしようとしているって時はどうする? 僕だったら逃げるよ。君は殺人鬼から逃げないで、そのまんま肉になりたいのか」

 クリスは髪をいじりつつ、僕を見つめる。確かに皆が言う通り、女の子のようだ。まばたきをして、彼は答える。

「そうだねジョニー、僕は肉になりたくないよ。でも彼らが僕をいじめるのは、理由があるからだ。僕の髪が長いせいだよ。けれど、カレンが『クリスの髪って素敵』って褒めてくれるんだ。あの子は僕の髪が好きだし、僕はあの子が好きだ。あの子と話すきっかけを作りたいから僕はいじめから逃げないし、この髪を切らない」

 僕は返答に困った。弱い彼がここまで考えていたとは思わなかった。慌てて話題を変える事しかできず、その後はただ雑談を続けていた。

 ある日、クリスが風邪で学校を休んだ。先生から配られたプリントを彼の家に届けようとしていると、カレンに会った。彼女もクリスを心配しているらしく、僕について行きたいそうだ。

 帰り道で話をしていると、話題がクリスの髪の話になった。どうして彼はあんなに長い髪なのか、どうして髪を伸ばそうと思ったのか、そのような話だ。……そう言えば彼女は、何とも興味深くて羨ましい話をしていた。

「私ね、クリスの髪をいじるのが好きなの。でもね、それ以上にクリスが大好き……この気持ちはまだジョニーにしか言っていないわ。恥ずかしいからいつも彼の髪をいじって、女の子みたいにして、この気持ちを無理やり誤魔化してるの。どうやったらこれを本人に言えるかな……?」

 その後、クリスにプリントを渡して、風邪が伝染らない程度に三人で遊んだ。カレンはクリスの長髪を三つ編みにして編みこんでいた。クリスははにかみ、少しだけ笑った。その様子はまるで女の子。これは周りがいじめたくなる訳だ。

 それから何ヶ月かして、事件が起こった。カレンが誘拐されたのだ。クリスはそのショックで、しばらく寝込んでしまった。その間に他の女の子も攫われ、教室には空席だらけになっていた。先生が「誘拐に気をつけましょう」と遅すぎる注意をした。その日の帰りにクリスは何かを決意して、警察署に行った。そこでクリスは警察官に耳打ちした。

「誘拐犯を捕まえるのに、僕も協力したいんです。まず……」

 警察官は「はあ」と気のない返事をした。しかしその後、頷いてクリスの頭を撫でた。僕は帰ろうとしたが、クリスは僕の手を離さない。どうやら僕も彼の手伝いをしなければならないらしい。

 翌日からクリスは、女の子の服を着て登校してきた。周りはいつも以上に彼をいじめている。しかも彼も女の子がするみたいに、メソメソ泣いている。これも計画のうちだ。帰り道では今までのように一緒に歩きながら話しているが、口調は女の子のそれだ。

 しばらく歩いていると、知らない太ったおじさんがクリスに話しかけてきた。

「ねえお嬢ちゃん、おじさんと買い物しないかい? ほ~ら、飴もあるよ~」

 ……こいつだ。クリスはおじさんに気づかれない程度にニヤリと笑い、おじさんを無視して歩く。ついてくるおじさん。無視する。ついてくる。無視。追う。やがておじさんが追いかけてくると、クリスは全速力で走って逃げた。彼はこんなに足が速かったのか。ついて行けずにおじさんはへばった。しばらくすると、警察官を連れてクリスが戻ってきた。

「この人です! この人がカレンや他の女の子を攫ったんです!」

 おじさんはその場で逮捕され、少ししてカレン達も助けだされた。カレンはクリスを見ると、彼の頬にそっとキスをして告白した。

「怖かったの。助けてくれてありがとう。クリス、大好き」

 頬を林檎のような色にして、クリスは恥ずかしげに言った。

「そんな、ジョニーのアドバイスのおかげだよ……。カレンが無事で良かった」

 次の日からクリスは髪を短く切り、いじめられる事もなくなった。カレンと仲良くしていて、本当に羨ましい限りだ。

ある程度ガッシリとした男の女装が好きなんだ!!!

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