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第六話 神経

それは突然やってきた。



「ねぇ、何か変な感じしない?」


それは夕食を終えて、食後にダーツルームで和やかな時の事。

私の言葉が唐突すぎたのか、二人は顔を見合わせている。


 

「今ねん、ノブナガと相談していたのょん☆裏庭に入り込んで来ちゃったみたいなのん♪」


「何が!?もしかして、また黒くて怖いやつ?!」

「そのもしかしてですよ。それに力も前回と比べ物にならない……。」


「そんなっ!!」


由紀野は落胆した。また体内に入り込まれたらと考えると吐気がするのだ。


「裏庭ということは、もうすぐ来ちゃうって事よね??」


「いゃん♪さすがに室内では暴れ回れないわよん☆こっちから迎えに行かなくっちゃ☆」


前回より大きな相手だというのにナージャは嬉しそうだ。

これが女王の風格だろう。

由紀野は子どものナージャよりもオロオロとしている自分に恥ずかしくなりうつ向く。



いくら口では何億歳とか言ってるけど、実際見た目は子供なわけだし、私がしっかりしなくちゃ。





焦る私をよそにナージャとノブナガはゆっくりと廊下を歩いている。

二人とも余裕だ。

亀の甲より年の功なのだろうか、ナージャにいたっては鼻唄まで歌っている。


確かに二人とも強いのだ、ノブナガは爆破系の技だし、ナージャは爪を剣にして戦う。


ん?


「私って技無いよ?何で?」


急に立ち止まったため、後ろを歩いていたナージャがぶつかる。



「いてて☆どうしたのユキノ♪」



「私、ナージャやノブナガみたいに技無いんだけど……。」


「技……ですか?もう由紀野さんは修得してますよ。体内に霊を取り込んで、交信し、女神に献上する。私やナージャよりも平和的ですね。」


にこやかにノブナガは言うが、由紀野にとっては凄く不安な要素だ。


亡霊を取り込む時は乗り物酔いを百倍酷くした位気分が悪くなるし、最期の記憶を見るのだって死ぬ直前の記憶なのだから楽しい物なわけがない。



「ねぇ、本当に私が行かなきゃ駄目かなぁ?」


さっきまで、小さなナージャの分まで頑張らなくちゃと思っていたが、やっぱり怖いものは怖い。

すっかり怖じけずいてしまい、目眩がした。


「あら〜ん♪今回来なくても良いけど、次は一人でやって貰う事になるわょん☆」


「えっ??なんで??」


「私達の能力は攻撃系です。技を使えば使うほど、体に疲労が蓄積されます。この前の路地での戦いの後のナージャを見たでしょう?」


「でも、永遠の命って……。」


「永遠の命って言うのはぁ、自ら器を変えられるってだけょん☆だから、永遠の体力ではないのょん☆」



「肉体に入り込んでは、肉体が死ぬ前に若い肉体にまた入り込む……その繰り返しです。」


それでナージャはまだ子供なのかと心の中で手を打った。


「さぁ〜て☆バシバシ倒しちゃってとっとと寝ちゃいましょっか♪♪」


私達は再び歩みを進めた。













「なんじゃこりゃ……。」


敵を見たときの私はその言葉に尽きる。

目の前の霊はナージャと同じ位の歳の少女だったのだ。


「油断は禁物です。ただの少女に見えて相当強い……。」



はっきり言って鼻で笑ってしまう。

遠目で見ても可愛い女の子だ。

服装は時代を表すかのように薄い黄色の着物だが、オーラはその辺の子供と何ら変わらない。



「私が先に行くわねん☆ノブナガは援護をよろしく♪♪」



二人で行かなくてもナージャは強いのだから充分だと思った。相手は何せ子供だ。


しかし、ナージャが霊に切り込む瞬間にその思いは払拭される。



「消えた……?」


少女の霊はナージャの剣をかわしたと思ったら音を立てて消えたのだ。マジックのコインの瞬間移動のように。




《ふふふっお馬鹿さん達ね。》


鈴を転がすように可愛いらしい声だが、わずかに暗い含みがある。その、話し方にナージャと似たものが感じられて、心拍が上がる。この霊は一体何年生きたと言い出すのだろう。この霊はいくつ他の霊を巻き込んでいるというのだろうか?


「くそっ、めんどくさいっ!!」


ナージャは割りと明るいしゃべり方をするが、余裕が無いのだろうか汚い話し方になってた。



《そんなタイプの力では私を倒せないわ、そうね……。》



不意に背筋が寒くなる。

首筋に刃物を当てられているようで、物凄い力で腹を抱えられている。霊に触れられている所が氷の様に冷えていった。



《この子は怖いかも……。》



途端に魂が潰される様な衝撃が走る。



痛い!!!!

「キャアァア」


「ユキノ!!落ち着いて!!それはただの幻覚なの!!」



体の全てがキシキシと悲鳴を上げる、これが幻覚なわけがない。



嫌だ!!潰される!!!死んでしまう!!!



《楽になりなさいな。苦しいのは嫌でしょう?》

霊の声は今もなお穏やかだ。




「ふざけないで!ユキノから離れなさい!!」


ナージャが私と霊をひき剥がそうと、襲いかかるがまた音を立てて霊が消えてしまう。



《意識を手放せば楽よ。早く!!》


「由紀野さんダメです!魂が器から出てしまう!!」

ノブナガも声を荒げる。



《どうだって良いじゃない……苦しい事から逃げてしまえばとても楽よ。》



嫌だ!!

私は逃げたくない!!



《なぜ??逃げる事は悪い事じゃないわ。》



うるさい!!

私は悠也の分まで頑張るのよ!!



私は抱えている少女の体を掴んだ。


《なっ何をするっ!!》



うろたえる霊の外側からコアを取り出す。外側はまるでドライアイスを触るようで痛い位に冷たい。



「こうするんだよっ!!」


黒光りする魂を思いきり胸に押し当てた。


途端に辺りが紅く輝きだす。



「ユキノ!!」

「由紀野さん!!」




私の意識はここで途切れた…………。












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