2024/01/03 急
ゴーレム同士がぶつかり合う戦闘音は、村の奥まで響いてきた。
「だ、大丈夫かしら……」
不安そうなアシュリーを、ジャンは慰める。
「大丈夫。こっちにはコイルがいるから」
「ジャンさん……」
空は黄昏れ、月が昇ってきた。
まさに『黄昏の月』である。
(今のところ、村の周囲に配備した『物理障壁発生装置』は正常に動いているな)
ジャンはそう分析した。
そして村長宅の正面に立つコイルを見つめる。
コイルが何も反応していないということは、危険はないということだ。
とはいえ油断はできないと考えたジャンは、何やら腕輪を操作していたのである。
* * *
「ううむ、ほぼ互角か……」
『世界警備隊ラシール大陸支部第1部隊長』のバーナード・ダーマスは戦局をそう評価した。
とはいえ、それはゴーレム同士の戦闘で、人間については『世界警備隊』が圧倒している。
戦闘用のサポート鎧のおかげだ。
これはパワーアシストスーツの一種で、装着者の身体を完全に覆う形式である。
使われている素材は主に64軽銀。
いくら軽銀が軽いとはいえ総重量は40キロほどになるので、そのままでは動作が鈍ってしまうが、パワーアシストを追加することで生身よりも軽快な動作が可能になっている。
ゆえに白兵戦では『世界警備隊』の圧勝なのだ。
そして。
人間同士では『世界警備隊』が圧勝しているが、ゴーレム同士の戦いでは『黄昏の月』側が押していた。
「……まずは賊共を捕らえてしまおう」
というのがバーナード・ダーマスの考えで、それは間もなく達成できる。
30人からいた賊は、残るところあと2人。
そして、今また1人が捕縛された。
「投降しろ、カイ・イーストベルク。もう残っているのは貴様だけだ」
バーナード・ダーマスがそう呼びかけるが、カイ・イーストベルクは鼻で笑った。
「ふん、手下共などいくらでも代わりがきく。それよりそちらこそいいのか? 戦闘用ゴーレムがまた1体壊れたぞ?」
「ぬ……」
カイ・イーストベルクの指摘どおり、人間はほぼ全員捕縛したが、ゴーレムはそうはいかない。
戦闘用ゴーレムと汎用ゴーレム、いずれも敵味方ともに5体ずつ、計20体の戦闘は『黄昏の月』が優勢だった。
5対5だった戦闘用ゴーレムは今や4対2。
汎用ゴーレムは5対3と、『世界警備隊』側が劣勢になっている。
戦力差が崩れてもなんとか持ちこたえているのは、サポート鎧を着た兵士たちの援護射撃があるからだ。
射撃といっても実体弾ではなく、火属性魔法と土属性魔法系の魔法弾である。
「なかなかしぶといではないか」
にやにやと笑いを浮かべながらカイ・イーストベルクが言った。
「ほざくな! 手下はすべて捕らえた。観念しろ」
バーナード・ダーマスの言葉にも、カイ・イーストベルクは無反応。
「では、そろそろお遊びは終わりだ」
「何!?」
「……我々が、いや私がなぜ堂々と正面から村へやって来たと思う?」
「何だと?」
「……わからんか。まあその程度だろうな。教えてやろう」
頼んでもいないのに、カイ・イーストベルクはペラペラと語り出した。
「私のゴーレムの性能テストだよ」
「テストだと?」
「そうだ。テスト相手として君たち『世界警備隊』を選んだのだ。光栄に思ってくれたまえ」
捕まった手下共は適当に集めた烏合の衆で、『世界警備隊』側に兵力を割かせるためのダミーだとカイ・イーストベルクは言った。
「こちらの思惑どおり、君たちはゴーレムと兵士を連れてきてくれたからな」
「なら、この村を襲う意図はなかったというのか?」
「そこはそれ、『行きがけの駄賃』というやつさ。ついでに軍資金を調達できれば言うことなし、だ」
「貴様……!」
「ではそろそろ、次の切り札を見せてあげよう」
そう言ってカイ・イーストベルクは携帯電話的な通信機を取り出し、何ごとか指示を出した。
「な、何!? ……戦車?」
暗闇の中から現れたのは全長7メートルほどの全金属製の車両だった。
カイ・イーストベルクが呼び寄せたのは『戦車』と呼ばれる『魔導機』である。
* * *
『戦車』は頑丈そうな平べったく丸い装甲に、短い砲塔が1本付いていた。
それが2台。
「まずはこいつの性能テストに付き合ってもらおう」
「またしてもテストか!」
「そうだ。性能が証明されたなら、他の野盗連中に売り捌くのだよ」
「それが貴様の目的か!」
「そのとおりだ。私は配下を率いて盗賊行為を働くには向いていないのでね。……おしゃべりは終わりだ」
戦車から火属性魔法『炎の槍』が放たれた。
それは村の正面を守る『物理障壁』に阻まれる。
炎は物理現象なので防ぐことができるのだ。
「ほう、あれを防ぐか」
「貴様! 村を狙ったな!?」
「当然だろう。動く的は狙いづらいからな。この戦車の用途は都市の城壁破壊だ」
再び火属性魔法『炎の槍』が放たれる。
村を守る『物理障壁』が少し揺らいだ。
「ふむ、あと2発も喰らわせれば過負荷で結界の発生装置を壊せそうだな」
3発目の『炎の槍』が放たれ、『物理障壁』がそれを防ぐ。
が、結界は目に見えて不安定になり、揺らいでいる。
そもそも目に見えるようになったということ自体、不安定になった証拠なのだ。
「あと1発」
「よせ!」
バーナード・ダーマスはカイ・イーストベルクを止めようとしたが、ゴーレムに阻まれ近付けない。
そして4発目の『炎の槍』が発射され、それをかろうじて受け止めた『物理障壁』は揺らぎ、消えた。
過負荷により『魔導機』が停止したのだ。
「これで村は攻撃し放題だ」
「やめろ!」
バーナード・ダーマスは叫ぶが、どうにもできない。
いつの間にか『世界警備隊』側のゴーレムは全て動作を停止していた。
対して『黄昏の月』側は、戦闘用ゴーレム3体、汎用ゴーレム2体が残っている。
その5体のゴーレムがカイ・イーストベルクを守っていた。
サポート鎧を着た兵士ではどうしようもない。
「私を甘く見たな、『世界警備隊』。さて、蹂躙の時間だ……何!?」
戦車が放った5発目の『炎の槍』が『障壁』に防がれたのである。
「村は襲わせないぞ」
「何だね、君は?」
「ジャンさん! 危険です!」
ゴーレムのコイルを連れたジャンが止めるロレンスを振り切り、村の入口までやって来て、戦車の火属性魔法『炎の槍』を防いだのであった。
「その旧式ゴーレムが私の戦車の砲撃を防いだだと?」
「今だ!」
サポート鎧を着た兵士たちが一斉に戦車めがけ、魔法を放った。……が、全て装甲に弾かれてしまう。
それを見たジャンが呟いた。
「なかなか丈夫な装甲だな。……アダマンタイトコーティングをした上、『魔法障壁』系の結界も纏っているな?」
「なっ……なぜそれがわかる!?」
「いや、今のを見ていればわかるだろう」
「お前は……何者だ?」
「ただの旅人だよ」
「馬鹿を言え。……『懐古党』あたりの回し者か?」
「いや、無関係だ」
「信用できるか!」
「別に、賊に信用されても困るけどな。……コイル、まずは戦車を無力化だ」
「ハイ、マスター」
コイルは両手の先から『光束』を発射。
レーザー光は戦車の『魔法障壁』を安々と突破し、アダマンタイトコーティングも貫いた。
そして戦車は内部の重要機器を破壊され、停止したのである。
「なっ! ……貴様、只者ではないな!?」
「さてね」
コイルはカイ・イーストベルクを捕らえようと迫る……が、戦闘用ゴーレムに阻まれた。
「そう簡単に私を捕らえられると思わないことだ」
戦闘用ゴーレム2体、汎用ゴーレム2体がコイルに取り付いた。
そして『光束』を発射できる両手をねじり上げてしまう。
「これなら『光束』を発射することはできまい」
戦闘用ゴーレムがジャンたちめがけ、突進してきた。
「貴様をまずは片付けてやる……何だと!?」
カイ・イーストベルクの戦闘用ゴーレムは目に見えない壁に阻まれた。
「『障壁』くらい、こっちにもあるぞ」
「く……なるほど、侮れないということか。だが、貴様のゴーレムも、あの凶悪な兵器は使えまい」
「コイルの武器はそれだけじゃないぞ」
「何だと!?」
その次の瞬間、コイルの腕が赤熱……いや、白熱し始めた。
コイルが、腕に内蔵された『電磁誘導放射器』を起動したのだ。
掴んだ腕を放そうとする4体のゴーレムだったが、成功したのは戦闘用ゴーレム1体のみ。
2体の汎用ゴーレムと1体の戦闘用ゴーレムは熱せられて関節部分が溶着し、動けなくなってしまう。
同時にコイルも、『光束』の発射口を損傷してしまった。
「やっぱり64軽銀じゃちょっと融点が低かったか……」
だが、残る敵ゴーレムは2体。
「接近戦は不利か。なら……!」
カイ・イーストベルクの戦闘用ゴーレムは、コイルと10メートルほどの距離を取る。
そして2体が縦列となってコイルに襲い掛かった。海戦でいう『単縦陣』に近い。
コイルと近接戦闘をするのは1体だけ。もう1体は隙を伺い、コイルに魔法攻撃をするつもりなのだ。
それを知ってか知らずか、コイルは近接戦闘を避けようと後退している。それも、直線的に後退するのではなく、円を描くように後退しているのだ。
そしてあるタイミングで、2列縦隊の後ろにいたゴーレムに接触。その腕を取り、振り回した。
予想していなかったタイミングでの攻撃に、反応が0コンマ数秒遅れ、体勢が崩れる。
よろけたゴーレムは、前にいたゴーレムにぶつかる。
僅かにバランスを崩す2体。
1秒にも満たない僅かな時間であったが、それで十分だった。
バランスを崩した2体に、コイルの前蹴りが炸裂したのだ。
短い脚ではあるが、その威力は強烈。
2体の戦闘用ゴーレムは5メートルほども吹き飛んだ。
そして蹴りを直接受けた1体は腰部が大きく凹み、動作不能となったのである。
「これで残るは1体だな」
ジャンが言うと、カイ・イーストベルクは不敵に笑った。
「誰が残りが1体だと言った?」
「何?」
カイ・イーストベルクは腕を振る……と、空から、さらに2体のゴーレムが現れたではないか。
「飛べるゴーレムだと……」
驚くバーナード・ダーマス。だがジャンは顔を顰めた。
「あんたはアホか?」
「何?」
「戦力の逐次投入なんていう愚策を実行しているからさ」
「愚策? これは実験だからな。……この2体は先程までのものより高性能だぞ」
「まあ、飛べる分高性能だわな」
ここでようやく、『世界警備隊ラシール大陸支部第1部隊長』のバーナード・ダーマスは冷静になった。
「……ジャン殿といったか、先程増援を呼んだから民間人が無理をするな」
「いえ、到着を待っていては奴が逃げてしまいますよ?」
「む……」
「それにまあ、技術をああしたことに使うことがちょっと気に入りませんし」
「……」
その会話を聞いたカイ・イーストベルクはせせら笑った。
「気に入らない、か。……なるほど、そっちの奴が高い技術を持っていることは認めよう。だが、使い方がなっていない」
「使い方だって?」
「そうだ。優れた技術を身に付けるためにどれだけ努力をしなければならないか。そんなことも知らず、勝手なことを言う輩には思い知らせてやらねばならん」
「……お前にも何か事情がありそうなのはわかった。だが、だからといって無辜の民を襲っていいという理由にはならない」
「ふん、愚民など私の礎になれることに感謝してほしいくらいだ」
「その言い草……ますます気に入らないな」
「ふん、何とでも言え。……もう遊ぶのには飽きた。この村を殲滅して帰ることにしよう」
「そんなことはさせないぞ」
バーナード・ダーマスが進み出た。
「貴様に何ができる。そちらの航空機など一撃で落とせるのだぞ」
「それでも、我々は『世界警備隊』だ。民間人に手出しはさせない!」
「止められるものなら止めてみろ。まず手始めにその旧型ゴーレムを屠ってやろう」
新たに呼んだゴーレム2体が再び飛び上がり、コイルに向かって上空から魔法攻撃を加えた。
かわそうとするコイル、だが2体からの攻撃は熾烈を極めた。
「確かにそこそこ高性能だ……」
「ふはは旧型ゴーレムなど私の敵ではない!」
コイルの外装はところどころヒビが入り、右腕も損傷した。
両脚も炎属性魔法で撃ち抜かれ、ついに倒れてしまう。
「ああ、コイル……」
「実力差がわかったか。さあ、村を殲滅してやろう」
「させないよ」
「何?」
「せっかく作った外装を壊しやがって……俺はゆっくり旅をしたかったんだがなあ……」
「何を言っている?」
「コイル、外装パージ」
「リョウカイ」
コイルの外装が弾け飛んだ。
「な、何だ!?」
そこから現れたのは、身長130センチの少女。
黒を基調としたエプロンドレスを着ている。
「礼子、賊ゴーレムを無力化しろ」
「はい、お父さま」
少女が地を蹴った……とほぼ同時に、空を飛んでいたゴーレムの1体が吹き飛んだ。
吹き飛んだゴーレムはキリモミ状態で上空へ飛んでいき、やがて地上に落下、全く動かなくなった。
「なっ……! ジャンプして殴った!?」
「……レイコ? ……伝説の、最強無敵の自動人形と同じ名前!? するとお前はジン・ニドーなのか?」
カイ・イーストベルクとバーナード・ダーマスはそれぞれ別の驚き方をしている。
「……そうだよ。ああ、せっかく久しぶりにアルスに来たのに、お前のせいで台無しだ」
ジャン改め仁は、不機嫌そうに顔を顰めた。
一方、仲間が殴られて破壊されたのを察したもう1体の飛行ゴーレムはさらに高空に避難。
その高度、100メートル以上。
照明弾の光がかろうじて届く高度だ。
「無駄です」
礼子は再び地を蹴り、飛び上がる。
だが、いくらなんでも100メートルは無理……と思われたが、上昇速度は変わらず、ぐんぐんと上昇していくではないか。
「ま、まさか、飛べるのか!?」
「むしろ、どうして飛べないと思った?」
賊の飛行ゴーレムは飛んで逃げようとするが、礼子はそれを追いかけていった。
音速に近い速度まで加速するが、礼子はやすやすと追いついてしまう。
「私のゴーレムより速いだと!?」
あっという間に賊の飛行ゴーレムに追い付いた礼子は、少し上昇してから急降下。
背中にドロップキックを喰らわせたのである。
『く』の字に胴体を反らせ、地面に激突する飛行ゴーレム。
当然もう動かない。
「さあ、観念しろ。……こっちはせっかくのお忍び旅行を駄目にされたんだ、さっさと自首しろ」
「ふ……ふざけるなああああ!」
「いや、本気だが」
「何がレイコだ。……伝説の自動人形を模していい気になるなあ!」
「いや、模してないぞ」
「認めん……認めないぞ! レイコだというなら、最後のゴーレムを倒してみせろ!」
「いや、だから、逐次投入は悪手だって……」
「うるさい! ……来い、ジャイアントゴーレム!」
カイ・イーストベルクはポケットから昭和のトランシーバーのような通信機を出し、増援を呼ぶ。
……が。
「ぐわっ!」
「カイ・イーストベルク、逮捕する」
守っていた戦闘用ゴーレムも礼子があっという間に無力化したので、カイ・イーストベルクはあっさりと捕まえることができたのである。
その際に、トランシーバーのような通信機がカイ・イーストベルクの手から落下。
「あっ」
バーナード・ダーマスはそれを受け止めようとしたが間に合わず、通信機は地面に落ち……壊れた。
「ふはははは……! 馬鹿め!! 自ら災厄を招いたな!」
「何?」
「命令を出すための操縦機が壊れてしまった今、ジャイアントゴーレムは暴走する!」
「な、何だと!?」
「『光の玉』」
礼子が再度明かりを打ち上げたので、暗くなりかかっていた夜空が再び明るくなった。
その明かりの中に、身長10メートルの巨大なゴーレムがそそり立っていたのである。
「あれがジャイアントゴーレムか?」
「そうだ。操縦機が壊れた今、暴走する。手当たり次第に破壊しまくるはずだ。貴様らの責任だぞ。ふはははは!」
「いや、もう責任なんてどうでもいい。礼子、そいつも停止させろ」
「はい、お父さま」
地上に降り立った礼子は、ジャイアントゴーレムと対峙する。
身長130センチと10メートル、象と蟻……とは言わないが、かなりの体格差である。
暴走したジャイアントゴーレムが、礼子めがけ足を踏み降ろした。
「うわ!」
見ていたバーナード・ダーマスは思わず声を上げてしまったが、当の礼子は平然とそれを受け止めた。
「馬鹿な! なぜめり込まない?」
受け止めた礼子が地面にめり込まないのを見て、カイ・イーストベルクが疑問の声を上げた。
「そういう風にできているから、だよ」
仁はそう言い切った。
「馬鹿な……」
「凄い……」
彼らの目の前では、礼子がジャイアントゴーレムの踏みつけを受け止めた後、飛び上がって頭部に回し蹴りを加えたのを見た。
そしてその一撃で、ジャイアントゴーレムの頭部はひしゃげて吹き飛んだのである。
頭部がなくなったジャイアントゴーレムはゆっくりと倒れていった。
地響きを上げて倒れたジャイアントゴーレム。
もう2度と動き出すことはなかったのである。
「な、なあああああ…………」
顎が外れそうなほどに口を開け、呆れるカイ・イーストベルクは、ついに諦めたようだった。
* * *
「ジャン……いえ、ジン殿、ご協力感謝します」
バーナード・ダーマスは仁に敬礼をすると、カイ・イーストベルク以下『黄昏の月』を連行していったのである。
「あーあ、やっと終わったか。……コイルの外装が壊れてしまったな……ちょっと直せそうもないか」
「お父さま、申し訳ございません」
「いや、礼子のせいじゃないさ。……せっかく、のんびり桜を見に来たっていうのに、面倒な事件に巻き込まれたもんだよ」
小さく溜息を吐いた仁であった……。
* * *
恒星セランを巡る惑星、ヘール。
アルスと共に『第三惑星』である。
蓬莱島にある惑星間転移門によって、仁と礼子はヘールに戻った。
「ジン兄、おかえりなさい」
「ただいま、エルザ」
「久々のアルスはどうだった?」
「うん、いろいろと懐かしかったよ。もうちょいゆっくりしていたかったがな……」
「しょうがない。ジン兄は主人公体質だから、トラブルが向こうから、寄ってくる」
「有り難くないな……」
苦笑する仁。
惑星ヘールは今日も平和である。
* * *
その頃、カドノコ村。
「温泉か……これはいいものだ」
約束どおり、ジャン……仁は温泉を掘削してから村を去ったのであった。
「しかし、あの人が伝説の『魔法工学師』だったとはなあ」
「桜、楽しんでいってくれたかしら」
「それは大丈夫だろう」
「だといいんだけど」
村長とその娘アシュリーは、突然やってきて村を住みよくしてくれた旅人、ジャン・シドーいやジン・ニドーに感謝していた。
「またいつか、来てくれるといいわね」
「そうだなあ。……桜がお好きのようだから、もっと植樹しておくとするか」
「それ、いいかも」
再び仁が花見に訪れるかどうか……それは作者にもわからない。
完
お読みいただきありがとうございました。
本編の近未来の1つの形、というIFスペシャルでした。
大陸暦4000年前後のお話。
本編がこういう流れになるかどうかは……不明です。
本編の更新は1月5日12時からになります。
20240104 修正
(誤)黒を貴重としたエプロンドレスを着ている。
(正)黒を基調としたエプロンドレスを着ている。
(誤)「『光の玉』
(正)「『光の玉』」
(誤)「またいつか,来てくれるといいわね」
(正)「またいつか、来てくれるといいわね」




