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白の魔法使い  作者:
第2章 1学期
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024 『クラス対抗魔法戦争・寮の夜編③』

 抱き着かれてから数分、抜け出すことが出来ないままそれだけの時間が過ぎ去っていた。そろそろ恥ずかしい、という感情が薄れ始め、段々暑苦しくなってきた。

 いつものメルならここで疲れて寝てしまうんだが、今はまだ酔っているらしく楽しそうに笑ったまま俺から離れようとしない。


「……これ夕食の時もこのまんまだったらやばいよな」

 真っ赤に染まり、完全に理性を失っている様な虚ろな瞳で空を見つめているメルを一瞥し、深く嘆息する。


「この酔いって、車の酔い止めで効くっけか?」

 無駄だと理解していても、とりあえず打開策を考える。


 ここで一番有効なのは、保健室に行くことだ。だが、今メルはこんな状態。行くまでにどんな『困難』が待ち受けるかわからない。……主に俺が。と、ふいに机に置きっぱなしの携帯が目に入る。

 高校に入ってからやっと買ってもらった最新機種の物で、まだ2、3回くらいしか使っていない新品だ。液晶はタッチパネル式で、いくつかのアプリが入っている。

 手を伸ばして、ギリギリ届くくらいの位置にあったので、急いで手に取る。


 そして、いくつかのリストの中から大和、を選び通話を掛ける。

 数秒のコール音を聞いてから、大和の声が電話越しに響く。


『もしもーし、白夜、どうかしたか?』


「あー……すまん。事情は後で説明するから、とりあえず俺の部屋に来てくれないか?」


『……? ま、いいか。わかった、すぐ行くよ』

 通話を切り、すぐさまこの状況のいいわけを考える。いや、別に悪いことをしてるわけじゃないからいいわけでもないのか……。って、今それはどうでもいい。ともかくこうなるまでの経路を――。


 コンコン。

 乾いた木の音が室内に響き渡る。


 早いなおい!

 やばい、まだなんも考えれてない。

 ……そうだ!


 あえて、堂々としておけばいいんだ。堂々と、ここまでの経路を語れば、何も不審がられることはない!


「鍵は開いてるし、入ってきていいぞ」


「ん、おじゃましま――」


 いつか見たような調子で、固まる大和。

 あれ? これやばくね?


「した!」


 バッタァァン!

 もの凄い勢いで扉が閉められ、外に飛び出す大和。


「大和ぉぉぉぉぉぉ! 待って、待ってくれ!」






 ◇ ◇


「おーけー。大体理解した。そりゃ、お前も災難だったな」

 俺の真正面に腰を降ろしている大和が、憐れむように俺を見下ろす。

 その視線を払いのけ、俺は話を続ける。


「でな、こいつをどうしたらいいと思う?」

『こいつ』の背中を軽く小突く。


「ふみゅぅ……」

 たかがアイスに入っていた酒くらいで、いつまで酔ってるんだろうか。俺もそのアイスは食べたが、さっきのレシートを見なければわからない程微量にしかアルコールは入っていなかったのだ。なのに、すでにメルが酔いはじめて1時間くらい経過している。

 酒に弱いにしても、限度があるだろう。


「保健室連れてけよ。それが一番手っ取り早いだろ」

 そんなこともわからないのか? みたいな顔で嘲笑される。

 うわ、こいつ腹立つ。


「出来たら苦労してない」

 思わず深い溜息が漏れる。

 今日だけで何回溜息をしてるだろうか。など、意味のない思想が沸いてきたのでそれを取り払う。


「……じゃ、もう医務室行くしかないんじゃね?」

 ごくり。

 俺と大和は両方共、唾を呑み込む。


 この寮。正確には『王都寮』というが、ここの医務室はいろんな意味で有名だ。いくら噂などに疎い俺でも知ってるくらいに。

 王都魔法学園の七不思議の一つ。


『人間解剖』


 俺は初めてこの話をクラスの仲間に聞いた時は、震えが止まらなかった。

 話の内容は、端的にまとめるとこうだ。


 ◇ ◇


 ある生徒が、夜に急に気分が悪くなり寮内の医務室に向かった。


 医務室は、寮生たちが住んでいる連とは別の所に配置されていて、微妙に距離があった。


 生徒は、かなり参っていて早く治療してもらおうと必死だった。


 必ず2回ノックをしてから、入ること。夜だったから、その貼り紙を読むことが出来ずに、そのまま部屋に入ってしまった。


 そして、生徒は目撃してしまったのだ。


 血に染まった死体を、笑いながらメスの様なもので引き裂いている、人の姿を。


 ◇ ◇





……行くしか、無いのか。

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