022 『クラス対抗魔法戦争・寮の夜編①』
買い物がやっぱ長かったなぁ。
「まじでありがとな。無駄足にならなくて済んだし」
目の前に居る自分より頭二つ分低いラルグに頭を下げる。俺が急にお礼を言ったことに慌てたのか、微妙に動揺していたが「どういたしまして」と、柔らかに微笑んだ。
大和が忘れてたとばかりに続けて頭を下げ、それにつられてメルもお辞儀をする。
今更ながら一緒にすれば良かったと後悔したが、ラルグは一つ一つ本当に嬉しそうに対応していく。それは、この前見た物静かそうで、どこか寂しげな、そして《無理をしている》ような感じは一切なく。本当に自然に、あどけない笑顔を浮かべていた。
「さって、これで用は済んだし。帰るかな。もう歩きすぎて足がパンパンなんだって……」
「言われなくても、帰らなきゃまずい。ほら、外見てみろよ」
まだ店の中で話していたため、皆が一斉に出口の方向を振り向く。
茜色に染まるうろこ雲の淡い光が視界を覆う。さっきまで上っていた太陽はすっかり沈み、地平線によって半分ほど隠れている。
「うっそ、もうこんな時間!? さっきまでお昼だったのに!」
「どうするか考えてた時間が長かったからな。そろそろ寮が閉まる」
ここの寮の門限は、ほかの学校に比べて少しだけ厳しく6時となっている。今の時間は5時、朝こっちに来るのゆっくり歩いて1時間だったので、急いで歩けばギリギリ間に合うだろう。
しかし、悠長に会話できる余裕があるわけでもないので急いで店を出る。ラルグは「わ、私なんかが一緒にいたら迷惑なんじゃ……」と馬鹿な事を言っていたが、メルがラルグの手を軽く握って強制的に連行する。
夕方になり、客の数がかなり増えている。急いでいる側としては、やはり邪魔だ。街頭には光が灯り始め、本格的に日が暮れていく。
学園都市を抜けた時には既に5時50分。これはもう全力で走らないと間に合わないレベルだ。
焦りながら徐々にスピードを上げていこうとしたその時――。
「きゃっ!」
「わっ!」
背後で短い悲鳴が続けて2回聞こえ、すぐさま後ろを振り返る。どこかで足を引っかけたのか、メルがラルグの上に被さっている形で倒れていた。
自分がラルグの上に乗っていることに気付いたのか、メルはすぐさま立ち上がる。
「ごめん、ラルちゃん! 大丈夫?」
「こけちゃったのは私ですし、メルさんは悪くないですよ! 私こそすいませんでした!」
メルはラルグに手を差し伸べるがすぐに顔をしかめ、前かがみにうずくまってしまう。何があったのか、目を凝らしたが薄暗いこの時間帯では全然わからない。近づいてメルを覗き込む。
学校指定の革靴を脱ぎ、微妙に腫れている左足の付け根を抑えて苦悶の表情をみせている。
「っつ! おい、大丈夫か? 折ったりしてないだろうな」
本気で心配になり、声荒げながら言う。
「だい、大丈夫だよ。折れたりはしてない」
ぎこちなく笑い、元気なことを証明しようとその場で飛び跳ねる。が、着地と同時にまた痛みが襲ったらしく、また足を抑えながら悶絶する。
とりあえず元気そうだが、歩けそうじゃないな。……仕方ないか。
「メル。ほれ、のれよ」
ちょっと涙目になっていたメルに背中を向け、態勢を低くする。
「ほへ?」
これはメルの癖なのか、首を可愛らしく傾げる。
「歩けないんだろ? もう時間も無いし、早くのれって」
もう一度背中を突出す。
そこでようやく状況を理解したのか、メルは首が取れるんじゃないかと思うほどに首を左右に振る。
「大丈夫、ほんと大丈夫だから! おんぶなんてしなくても大丈夫だよ!」
恥ずかしいし、と後で小さく呟いたのが聞こえる。
「いいから。第一、その足で門限に間に合うと思うか? あと5分だぞ」
「う……うぅー」
申し訳なさそうにして、躊躇うように俺の背中に身体を預けてくる。女の子をおぶっていると思うと、少し気恥ずかしいものはあるが、今はそんなこと考えている余裕はない。
ラルグと大和には先に行ってもらっているので、間に合うと思うが俺たちはもう全力で走っても間に合わないだろう。
だったら、どうするか。
「しっかり捕まってろよ。落とされないようにな! ……飛行!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
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