015 『クラス対抗魔法戦争・準備編⑤』
すいません、遅くなりました。
今回はあまり見直せてないので、ミスがあればご指摘お願いします。
SHRが終わり、俺たち『リーダー』以外のすべての生徒が教室を出て行ってしまい、急に静かになった教室。外の生徒の声だけが教室内に響き渡る。
俺もこの中で雑談をしようという気にもならず、ただただ居心地の悪い空間が続いていく。教室内で唯一メルだけが、心地よさそうな寝息を立てて眠っている。いっそ俺も寝てやろうか、と思えるほどに今はメルが羨ましい。この空気、俺は駄目だ。
まあ、気分が沈むのも仕方無いと思うが。特にくじ引きなんていう、運が全ての物で当てられたんじゃ、何に怒りをぶつけることも出来ない。
運悪くあてられてしまった2人は、男と女一人ずつ。メル以外は自己紹介はもう簡単に済ませてある。どちらも言葉からは覇気が感じられなかった。
その2人は、いまだにネガティブオーラを噴出し続けている。
目尻に涙を貯めて、しょぼーんと肩を落としている少女――ラルグ=コレット。なぜか片目を眼帯で隠しており顔全体を見ることは出来ないが、結構可愛い方だと思う。教室で見た記憶はないが、まあ物静かそうな子なので気付かなかっただけだろう。涙を拭うたびに揺れる短めのツインテールが、銀色の光を映し出す。ただでさえ小さな体を、三角座りになって更に縮めこませ、リーダーというプレッシャーにか、はたまた恐怖かに何度も震えていた。
正直、見ていてかなり痛々しい雰囲気がある。
スッと目を逸らしてから、代わりに教室の壁に背中ごともたれかかっている長身の男――メスト=ミラガンの方を振り向いた。俺が目を向けた瞬間にメストは伏せていた顔を上げ、ぎこちなく微笑んだ。表情からは明らかな疲れがあり、こちらも見ていられない。しかし、ラルグと違いまだ笑顔を返す余裕はあるみたいだ。
黒に近い藍色の髪をしており、男にしては少し長め。瞳は細く、オオカミの様な鋭い印象を与えるが物腰や声は穏やかなので、一変して大人しくも思える。
「ふぁ……ん」
隣の席から、ずいぶんと聞きなれた欠伸の声が耳に入り込む。反射的に振り向いて、大きな瞳を指でごしごしと擦っているメルが視界に映る。うつ伏せになって寝ていた時に跡が付いたのか、額が微かに赤い。気透き通る様な水色の髪は微妙にはねていて、今起きました感がひしひしと伝わってくる。
本当は第一声に「やっと起きたか」とでも言ってやりたいが、このなんの悪気も無い顔を見ていると、嫌みを言う気も失せてくる。
完全に覚醒(起きるまで)しばしの間放置していると、徐々に普段の顔つきに戻っていき、ちょうど5分後ほどで通常の顔つきに戻っていた。起動完了、と言ったところだろうか。
最期にもう一度大きなあくびをしてから、ラルグとメストを指さした。
「……誰?」
「誰は無いだろ、誰は」
いきなりの言動に軽くツッコミを入れながらも、とりあえず自己紹介させようと会話を続ける。
「へ……ぁ、あ。ごめんなさい! えと、わた……あたし、メル=ジェミニっていいます! よろしく」
さっきまではまだ寝ぼけていたのだろうか、少しテンパりながらも自己紹介を済ませたメルは、ふぅと軽く息を吐く。2人も軽く自己紹介を始める。
「私、ラルグ=コレット、です。あの……よろしく、お願いします」
ぺこり、と小さく頭を下げる。それに応じてメルもつられてお辞儀を返す。メルでも十分小さいのに、ラルグの身体はメルより更に一回り小さい。内気な性格なのか、頬を薄紅に染めている。
「僕はメスト=ミラガン。一応このクラスの学級長やってるんだけど、知ってるかな?」
「いや、メルは基本的に魔法模擬試合とかの魔法の授業以外は寝てるか、自作の小説書いてるかだから、たぶん知らないと思うぞ」
メストの言葉を、俺が返す。そう、メストはこのクラスの学級長、いわばリーダーなのだ。この学校の学級長や生徒会のメンバーを決めるシステムは特別で、魔法の成績が優秀な者が選ばれることになっている。生徒会は学年関係無く、実力があるものだけが集められるので、常に生徒の上に立つことが出来る。
それの縮小版が、学級長というわけだ。つまりは、このメストはかなりの実力者。どれくらいの実力かは分からないが、ある程度の実力は持っているのだろう。
会話の途中でメルが、「なんで知ってるの!?」とか言ってたけど気にしない。
「んじゃまぁ」
メストが何か覚悟を決めたように自分の膝を叩くと、言った。
「やるからには、勝とうか!」
先程までの暗さは完全に抜け切り、瞳に炎を灯したかの様にギラギラと不気味に光る瞳を不思議に思いながら、「あぁ」と軽く返事を返した。