012 『クラス対抗魔法戦争・準備編②』
早めの投稿、文章短め。
集会が終わり、人の波に流されながら出口に向かう。
体育館の中はそれほど暗くもないが、外の明るさに少し目を細める。季節はまだ春なので、暖かな日差しが降り注ぐ。
「ね。いいでしょ、一緒にやろうよ!」
相変わらずに笑顔を崩さないメルに嘆息交じりに答える。
「メル。リーダーがどんだけ危ないのか、説明聞いてて分からなかったのか?」
「ううん。でも、危ないからこそ面白そうじゃん!」
……駄目だこの人。
「いいじゃんかよ。やってやれよ白夜」
カラカラと笑いながら、俺の肩に手を置く。
こいつ、他人事だと思って……。
「ほんとにお願いっ! 一緒にやってくれたらなんでもするから!」
なんでもしてくれる?
ニヤリと俺は笑みを浮かべる。自分では見えないが、今の俺はさぞ汚い笑みを浮かべているだろう。
「じゃあ、メル。俺がリーダーになったら、クラス対抗魔法戦争が終わった後に添い寝してくれよ」
浮かべていた笑みをさらに大きくする。
大和が「流石白夜! 外道だぜ」とか言ってたがそれは無視する。
俺の作戦はこうだ。
メルが絶対にできないようなことを願いに出して、諦めさせる。
基本的に純情だから、こういうのは絶対無理なはずだ。
俺が内心で歓喜していると、メルは一瞬だけ恥ずかしそうに顔を俯けてから、かなり小さな声で呟いた。
「いいよ。分かった。その代り、絶対に一緒にリーダーになってよね」
今にも爆発しそうなほどに顔を赤らめながら、声を荒げる。
一人優越感に浸っていた俺は一気に現実に引き戻され、硬直する。
……今、なんて言った。
いいよって言ったか。
やばいどうしよう! リーダーやる気も無いし、しかも変な約束までしちゃったし!
「っておい! ちょっと待て! まだ良いとは言ってないぞ! メル、帰ってこい!」
ビュンッと風が流れる音が聞こえたかと思うと、そこにメルは居なかった。
未だに笑っている大和をどう殴ってやろうかと考えながら、重い足を引きずり教室に向かった。