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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第19話:『認めませんわ!』からの……「エルシア様ファンクラブ」結成!?

「……嘘ですわ。こんなこと、あり得ませんわ!」


 氷の温室に足を踏み入れた瞬間、ロザリア様の絶叫が、透明な壁に反響した。

 

 彼女の目の前に広がっているのは、白銀の世界に突如現れた「常春の楽園」。

 私の魔力で作られた氷のアーチには、王都ではすでに絶滅したと言われる『真紅の冬薔薇』が、露を湛えて艶やかに咲き誇っている。カイルム様の熱と私の氷が織りなす「調和」の空間は、外の猛吹雪を忘れさせるほどに温かく、甘い花の香りに満ちていた。


「信じられませんわ……。氷の魔力といえば、すべてを凍てつかせ、命を奪う非情な力のはず。なのに、なぜこの薔薇たちは、あんなに幸せそうに笑っていますの!?」


 ロザリア様は、震える指先で薔薇の花弁に触れようとして、慌てて手を引っ込めた。まるで、自分の不躾な指がこの奇跡を壊してしまうのを恐れているかのように。


「……それは、エルシアの心が温かいからだ。彼女の氷は、拒絶ではなく『守護』のためにある」


 背後から、カイルム様が私の腰に腕を回し、これ見よがしに引き寄せた。

 彼の胸板の熱さが背中に伝わり、私は少し恥ずかしくなって俯く。けれど、カイルム様はロザリア様を冷徹に射抜き、追い打ちをかけるように続けた。


「ロザリア。君が認めるかどうかなど、どうでもいい。……ただ、これを見てもなお、彼女を『ゴミ』と呼ぶのであれば、今すぐ我が領地から出て行け。二度と、その不潔な声をエルシアに聞かせるな」


「……っ。カイルム様、そこまでおっしゃらなくても……」


 私はカイルム様の手をそっと握り、彼のトゲトゲとした魔力を宥めた。

 そして、呆然と立ち尽くすロザリア様の方へと歩み寄る。


「……ロザリア様。私は、この力が怖かったんです。王都では、誰もが私の氷を『不浄』だと言いましたから。……でも、この場所でカイルム様に愛され、領民の皆さんに必要とされて、ようやく気づきました。……氷は、誰かの心を温めるための器にもなれるのだと」


 私は、ロザリア様の手を優しく取った。

 私の指先から、ほんのりと輝く氷の魔力が彼女の手へと伝わる。


「……あ」


 ロザリア様の顔から、険しさが消えた。

 代わりに、彼女のルビー色の瞳が、キラキラと輝き始める。


「……何ですの、この感覚……。冷たいのに、ちっとも寒くありませんわ。むしろ、わたくしの昂ぶった心が、すうっと穏やかになって……。それに、エルシア様。近くで見ると、あなた、なんてお綺麗な肌をしていらっしゃいますの!」


「……え?」


 急な態度の変化に、私が面食らっていると。

 ロザリア様は、突如として私の両手を力いっぱい握りしめた。


「認めますわ! 認めますとも! エルシア様、あなたはゴミどころか、わたくしがこれまで見てきたどんな宝石よりも尊い、真の『氷の女神』ですわ! ああ、なんてこと! わたくし、あんな不遜な態度を取ってしまいましたわ……万死に値しますわ、オーーッホッホッ……いえ、お許しくださいまし!」


「……ええっ!? ロザリア様、顔が近いですわ!」


「決まりましたわ! わたくし、今日から『エルシア様・絶対守護騎士団』の団長になりますわ! カイルム様、あなたのような無愛想な方に、この可憐なエルシア様を独占させておくなんて、世界の損失ですわよ!」


「……死にたいのか、貴様」


 カイルム様の周囲に、バリバリと黒い稲妻が走り、温室の温度が一気に零下へと叩き落とされる。

 けれど、今のロザリア様は、そんな閣下の威圧感など全く目に入っていないようだった。


「エルシア様! 王都の連中なんて、放っておけばよろしいのですわ! あんな、見る目のない、野蛮で暑苦しいだけの男たち! リュシアン殿下? フン、今やあの方は、自らの熱でハゲ上が……いえ、見るに堪えないお姿になっておりますわよ!」


「……ハゲ、ですか?」


 衝撃的な情報に、私が目を丸くしていると。

 ロザリア様は、不意に真剣な、少しだけ悲痛な表情で私を見つめた。


「……笑い事ではありませんの、エルシア様。……王都は今、本当に終わりかけています。リュシアン殿下とフレイム公爵、そして……あなたの妹、ベアトリス。彼らは、もう正気ではありませんわ」


 ロザリア様の手が、わずかに震える。


「……彼らは、あなたを連れ戻すために『聖域守護の盟約』を盾に、国王陛下を動かしましたの。……近いうちに、正式な『聖王令』がこの北領に届きますわ。……エルシア様を、国家反逆罪の嫌疑で捕らえ、王都へ移送せよ、という……最悪の命令が」


 温室の空気が、凍りついた。

 カイルム様の腕が、折れそうなほど強く、私を抱き寄せた。


「……聖王令だと? あの老いぼれ共、ついに本性を現したか。……エルシア、安心しろ。たとえ神が君を呼んだとしても、私は天を斬ってでも君を守る」


 カイルム様の低く、激しい宣戦布告が、美しい氷の温室に響き渡る。

 ロザリア様のチョロい友情。

 そして、王都からの最後にして最大の「嫌がらせ」。

 

 私たちの本当の戦いは、ここから始まろうとしていた。

「わたくし、今日から『絶対守護騎士団』の団長になりますわ!」

まさかのロザリア様の秒速陥落。

エルシア様の美しさと「氷の癒やし」を前にしては、

どんな高飛車なプライドも、春の雪のように溶けてしまうのですわね。


けれど、彼女がもたらした情報は、笑い飛ばせるものではありませんでした。

王都の傲慢な者たちが放つ、最後の一手「聖王令」。

愛する人を「犯罪者」として連れ去ろうとする卑劣な罠に、

カイルム閣下の独占欲と怒りが、ついに臨界点を突破しますわよ。


さて、迫りくる王都の軍勢(?)と、ブチ切れた閣下の反撃。

そして、新キャラ・ロザリア様の「推し活」の行方は……?


もし、ロザリア様の激しい心変わりに「面白すぎる!」と思ってくださったなら、

ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、

彼女のファンクラブ活動を支援してあげてくださいな。


皆様の評価が、エルシア様を守るための「最強の氷壁」になります。

次回、第20話「氷の刺繍と、魔法のレース。夫人としての初仕事」でお会いしましょう。

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