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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第18話:嵐を呼ぶ高飛車令嬢、ロザリア。北領に乗り込む!

カイルム様の孤独な過去に触れ、私たちが本当の意味で「一つの魂」になった翌朝。

 城の空気は、これまでになく澄み渡っていた。


「……エルシア。あまり無理はするな。昨夜は、私の魔力を鎮めるために君の精神を削らせてしまったからな」


 朝食の席で、カイルム様は私の指先を一本一本、慈しむように検分していた。その眼差しがあまりに熱く、射抜くような色を湛えているので、私はフォークを持つ手さえ震えてしまう。


「大丈夫です、カイルム様。むしろ、あんなに深くあなたの心に触れられたことが、私には何よりの活力なんです。……見てください、お肌の調子も、王都にいた頃よりずっと良い気がしますわ」


 私が少しおどけて頬に手を当てると、カイルム様は不意に視線を険しくした。


「……ああ。美しくなりすぎだ。やはり、君をこの部屋に閉じ込めておくべきだったか。……今、不穏な影がこちらに向かっているからな」


「不穏な影、ですか……?」


 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、一階のホールから、雷鳴のような鋭い高笑いと、衛兵たちの困惑した声が響き渡った。


「オーーッホッホッホ! 北の死神閣下、ご機嫌よう! わたくしを誰だと思ってお留めになるの? 隣領の侯爵家が嫡子、ロザリア・フォン・グランベルをお通しなさいませ!」


 私は、思わず口に運びかけた紅茶を止めた。

 ロザリア様。……噂に聞いたことがある。王都の社交界でも「高貴なる火炎瓶」と称されるほど、情熱的で、賑やかで、そして何より我が儘放題だと言われている令嬢。


 カイルム様が、深く、深く溜息をついた。


「……あの女、ノースウォールの吹雪を突破してまで来おったか。……エルシア、会わなくていい。私がすぐさま凍らせて追い返してくる」


「いいえ、カイルム様。お隣の領主様のご令嬢を追い返しては、角が立ちますわ。……それに、私を『閣下の妻』として認めないと言っている声が、ここまで聞こえてきますもの。……ちゃんと、ご挨拶させていただきます」


 私は立ち上がり、セフィに合図を送った。昨夜、カイルム様の孤独を救った私には、もう以前のような卑屈な心は微塵もなかった。


 応接間に向かうと、そこには。

 見事な金髪の縦ロールを揺らし、派手な真紅のドレスを纏った令嬢が、扇子をバサバサと仰ぎながら、不遜な態度でソファに踏ん反り返っていた。


「あら。あなたが噂の『氷精嬢』……でしたっけ? 王都でゴミのように捨てられた哀れな女が、カイルム様の隣を盗んだと聞いて、居ても立っても居られずお見舞いに来ましたわ!」


 ロザリア様は、私を見るなり勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

 ……けれど、彼女が私の顔を真正面から捉えた瞬間。


「…………え?」


 その扇子の動きが、ピタリと止まった。

 ロザリア様の、燃えるようなルビー色の瞳が、大きく見開かれる。


 今日の私は、カイルム様が選んでくださった、淡い青のシルクドレスに、私の魔力が宿った「氷のレース」をあしらっている。聖女として覚醒し、愛されることで内側から発光するような輝きを帯びた今の私は、ロザリア様の想像していた「幸の薄い追放令嬢」とは、あまりにかけ離れていたのだろう。


「……初めまして、ロザリア様。ノースウォールへようこそ。……私はエルシア・ド・ノースウォール。カイルムの妻です」


 私が静かに微笑むと、部屋の温度がスッと、けれど心地よく下がった。

 私の指先から溢れた「白氷」の魔力が、空気中の水分を結晶化させ、彼女の周りをキラキラとした光の粒が舞い踊る。


「な、な……っ。何ですの、この神々しさは!? それに、この肌! 王都で流行しているどんな化粧水を使っても、ここまでの透明感は出せませんわ! というか、このレース……これ、本物の氷!? 溶け、溶けていませんわ!?」


 ロザリア様は、椅子から転げ落ちんばかりの勢いで私に詰め寄ってきた。

 威圧しようとしたはずの彼女の顔は、今や純粋な「驚愕」と「困惑」、そして隠しきれない「羨望」で染まっている。


「……ロザリア。私の妻に、あまり無礼な顔を近づけるな」


 背後から、凍てつくようなカイルム様の声がした。

 彼は私の腰を引き寄せ、守るようにロザリア様を睨みつける。その威圧感は、並の人間なら失神するほどだ。


「ヒッ……!? カ、カイルム様、相変わらず怖ろしいですわね! でも、わたくしは納得いたしませんわよ! こんな細っこい、今にも折れそうな小枝のような女が、北の過酷な環境で閣下を支えられるはずがありませんもの!」


「折れませんわ。……この領地には、私を温めてくださるカイルム様と、私を待ってくださる領民の方がいますから」


 私はカイルム様の手に自分の手を重ね、ロザリア様を真っ直ぐに見つめた。


「ロザリア様。もしよろしければ、私が育てた『氷の温室』をご案内しましょうか? そこには、王都では枯れてしまったはずの薔薇が、今も美しく咲いていますの。……あなたのような情熱的な方に、ぜひ見ていただきたいわ」


「……はぁ!? 氷の中に薔薇!? そんな嘘、わたくしが暴いて差し上げますわよ! ……行きましょう、案内なさいませ!」


 ツンと鼻を鳴らしながらも、ロザリア様の足取りはどこか軽やかだった。

 私は、彼女の背中を見つめながら、少しだけ楽しくなった。

 この方は、きっと悪い人ではない。……ただ、誰よりも「美しいもの」と「強いもの」に憧れているだけなのだ。


 けれど、この時の私はまだ知らなかった。

 この「高飛車な嵐」が、実は王都の凄惨な現状を知らせる、最後の使者であったということを。

「何ですの、この神々しさは!?」

高飛車なライバル(?)として登場したロザリア様。

けれど、エルシア様の聖女パワーを前に、

早くもそのプライドが「メキメキ」と音を立てて崩れ始めていますわね。


かつては「ゴミ」と呼ばれたエルシア様が、

今や他国の令嬢を美しさで圧倒する……。

この成長ぶり、私、書きながら感無量になってしまいましたわ。

そして、相変わらずの「秒で凍らせる」スタンスのカイルム閣下。

彼の独占欲は、今日も絶好調ですわね。


さて、氷の温室を目にしたロザリア様は、一体どんな反応を示すのか。

そして彼女が持ってきた「王都の火急の知らせ」とは……?


もし、ロザリア様のチョロそうな気配に「いいぞ、もっとやれ!」と思ってくださったなら、

ぜひ【ブックマーク】と、下の【☆☆☆☆☆】をポチッと押して、

彼女を「エルシア様ファンクラブ」へ入会させてあげてくださいな。


皆様の応援が、物語をより華やかに、より賑やかに彩ります。

次回、第19話「認めませんわ!」からの……「エルシア様ファンクラブ」結成!?でお会いしましょう。

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