第10話:独占欲の檻と、甘すぎるご褒美
「……エルシア。よく頑張ったな。あんな不遜な男を前に、自分の言葉で言い返せるとは」
謁見の間から連れてこられたのは、カイルム様の私室だった。
扉が閉まった瞬間、彼は私を背後から包み込むように抱きしめ、首筋に深く顔を埋めた。
その肩が、微かに震えているのがわかる。
怒りか、それとも――。
「……怖かったか? 私が、君を手放すのではないかと」
「……いいえ、カイルム様。あなたの手が、私をずっと温めてくれていたから……。私、あんなにハッキリと自分の気持ちを言えたのは、生まれて初めてなんです」
私は、自分の胸に回された彼の大きな手に、そっと自分の手を重ねた。
王都にいた頃の私なら、きっと震えて、ただ俯いて、言われるがままに連れ戻されていた。
けれど、今の私には、守りたい場所がある。
この人の隣という、世界で唯一の居場所が。
「そうか。……だが、私は怖かった。あんなゴミのような男たちの言葉に、君の心が少しでも揺らぐのではないかと、気が狂いそうだった」
カイルム様は私をくるりと正面に向けさせ、逃げられないように両腕で閉じ込めた。
見上げる彼の瞳は、熱を孕んで潤んでいる。
「エルシア。君を頑張らせたご褒美を上げなくてはな。……いや、これは私の独占欲を満たすための、ただの我欲だが」
「……ご褒美、ですか?」
彼の手が、私の銀髪を愛おしげに梳き、そのまま頬を包み込んだ。
親指で、私の唇をなぞる。その熱い感触に、身体の芯が甘く痺れた。
「……今日は、もう誰にも君を見せない。この部屋で、私だけが君を慈しむ。……いいか?」
「……はい、カイルム様。私も……あなたと、ずっと一緒にいたいです」
私が頷いた瞬間、視界が反転した。
気がつけば、私はあのふかふかの大きなベッドの上に横たわっていた。
カイルム様がその上に覆い被さり、私の両手をベッドに縫い止める。
「……冷たい君の肌が、私の熱で少しずつ赤く染まっていく。その様が、たまらなく愛おしい」
彼はそう囁くと、私の鎖骨のあたりに、熱い口づけを落とした。
「ひゃ……っ、カイルム、様……」
「……もっと、声を聴かせてくれ。王都の奴らが一言も聞いたことのない、甘い声を。……君のすべては、私のものだ。指先一本、吐息の一つまで、誰にも渡しはしない」
それは、重すぎるほどの独占欲。
けれど、愛に飢え、冷たさに凍えていた私にとって、その重さは何よりも確かな「生」の実感だった。
「……私のすべては、あなたのものです。カイルム様……。私の氷を、もっと……もっと溶かしてください……」
私がそう告げると、カイルム様の瞳に溜まっていた情熱が溢れ出した。
何度も、何度も繰り返される口づけ。
額、瞼、頬、そして――。
深い闇に包まれた部屋の中で、二人の体温が混ざり合い、新しい「春」が生まれていく。
窓の外では、王都からの使者が去った後の静寂が広がっていたけれど。
この部屋の中だけは、どんな真夏の太陽よりも、眩しく、熱い愛に満たされていた。
捨てられたはずの「不浄の氷」は。
今、世界で一番幸せな「氷の花」として、彼の腕の中で完璧な美しさを咲かせていた。
「君のすべては、私のものだ」
カイルム閣下の、狂おしいほどの溺愛が爆発した第10話。
皆様、二人の甘すぎる「ご褒美」タイムに、
ご自身の心まで温まってしまいましたでしょうか。
勇気を出したヒロインに、最高の愛で応えるヒーロー。
これこそが「ハッピーエンド」へ続く、揺るぎない道のりですわね。
さて、二人が甘い時間を過ごす一方で、
追い返された使者が王都へ戻り、事態は最終局面へと動き出します。
「許してやる」と増長していた王太子の末路は……。
もし、カイルム閣下の重すぎる愛に「もっとやって!」と思ってくださったなら、
ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をお願いいたします。
皆様の応援が、二人の絆をさらに深く、
そして悪役たちへの「ざまぁ」をより苛烈なものに変えていくはずです。
次回、第11話「王都の炎上と、聖女の真実」でお会いしましょう。




