8/11
ムスカリ〜夢にかける思い
日常に戻ったあとの話です。
少しだけ時間が進みます。
翌日、補習の教室はやけに静かだった。
黒板の文字を写しているだけなのに、指先だけが現実に残されているみたいだった。窓の外を電車が通るたび、昨日の帰り道を思い出してしまう。
放課後、家に戻ると母に呼ばれた。
「ポスト、見てきて」
外に出ると、夏の空気が少し重かった。
何気なく取り出した一通の封筒を見て、心臓が跳ねた。見慣れた文字だった。
しばらく開けられなかった。
引っ越したはずなのに、どうしてここに届くんだろう。
震える指で封を切る。
中に入っていたのは、夏祭りのチラシと小さな紙。
――浴衣で来てね
理由も、差出人も、もうどうでもよかった。
僕は部屋に戻り、しまってあった浴衣を引っぱり出した。
もう一度、会えるなら。
ここから物語は次の場面に進みます




