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アイリス〜純粋
海へ向かった日の出来事を書いた章です。
まだ特別な関係ではない二人が、少しだけ距離を縮めるまでの時間になります。
堤防の上で、しばらく黙ったまま二人で海を眺めていた。
風が吹くたび、彼女の髪が揺れて、僕は言葉を探すのをやめた。
突然、彼女がはしゃいだ声を上げて歩き出す。
「早くこっちおいでよ」
振り返る笑顔に引かれて、僕も慌てて後を追った。
けれど堤防は思っていたより狭く、足場も少し滑りやすい。潮で濡れたコンクリートが、靴の裏にまとわりつく。
ふと、足がもつれてバランスを崩した。
「うわっ!」
伸ばした手は空を切り、視界が大きく傾く。
次の瞬間、冷たい海が全身を包み込んだ。
息が詰まり、水音だけが耳の奥で響いた。
この日のことは、後から思い返したときに意味を持ち始める出来事です。
ここから、二人の関係がゆっくりと変わっていきます。




