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ミント〜美徳
補習を抜け出した、ただそれだけのはずだった。けれど彼女の一言で、日常は簡単に形を変えてしまう。
ある日、補習をサボって電車に乗っていた僕は、隣に座った彼女に突然声をかけられた。
「こんなところでなにしてるの?」
「補習、サボったんだ、」
思ったより素直に口から出た。
「私も今日は休みだし」
彼女はそう言って、小さく笑った。
窓の外を流れる景色を眺めてから、こちらを見て言う。
「せっかくなら、海に行こ」
軽い提案だったはずなのに、その言葉だけが妙に残った。
断る理由はすぐに浮かばなかった。
電車は静かに揺れながら、見慣れた駅をいくつも通り過ぎていく。
僕はまだ、あの日が特別になるなんて思っていなかった。
小さな嘘も大きな決意もない。
ただ一歩、日常から外れただけで、景色は変わり始める。




