スイートピー〜門出
この話は、特別な出来事の物語というより、
一度すれ違って、それでも続いていった二人の「夏」の話でした。
今回で本編は最終回になります。
最後は少しだけ時間が進んだ、二人のその後の物語です。
「待って…ここ”浴衣で来てね”って書いてあるよ?」
「手紙?なんか古くない?」
居間の奥、小さな押し入れを開けたまま、子供たちは夢中になっていた。 埃っぽい箱の中には丁寧に綴られたノートが何冊も入っていて、その一番上にあった封筒を上の子が開いたのだ。
日記には、手紙のこと、夏祭りのこと、それよりもっと前の堤防での出来事、そして旅館での夜。
「ねぇ…これって、お父さんとお母さんの昔の話?」「…多分ね。すっごい、ドラマみたい」
静かにページを閉じたその時、
「ちょっと、あなたたち!それ、どこで見つけてきたの?」
美波が廊下から慌てて顔を出した。
「パパー!これみて良いやつ!?なんかすっごい甘酸っぱいやつだけど!」 そう言い、子供たちはまたノートを開こうとした。
「だめ。今度は家族全員で読もうね」
美波がふわりと笑った。 その顔は、あの日の花火の中で見せた、少し涙ぐんだ表情にどこか似ていた。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
出会いも再会も、大きな奇跡ではないけれど、
同じ季節を何度も一緒に迎えていくことが
この物語の“門出”だったのだと思います。
もし来年の夏、花火を見たときに
少しだけこの二人を思い出してもらえたら嬉しいです。
番外編は後日になりますのでそちらもお楽しみください。




