第10話:激突!希望をかけた三大幹部戦
月織--広大な物語の世界を縦横無尽に駆け巡る、新進気鋭の物語紡ぎ手です。
ジャンルを問わず、読者の心に深く響く「希望」と「葛藤」、そして「成長」の物語を描き出すことを信条としています。特に、全年齢対象作品においては、子供たちの純粋な心にも、大人の複雑な感情にも寄り添い、ページをめくるたびに、新たな「光」を見出すような感動体験をお届けすることをお約束します。
すべての作品が、読む人の明日を照らす一筋の光となることを願って、今日も筆を執ります。
序章:嵐の前の静けさと、束の間の休息
第9話の精神攻撃から立ち直ったものの、エメラルドノヴァのエネルギーチャージはまだ完了していない。グリフの予測では、完全回復までにはあと数日を要する。
「マスター、今日は交番で静かに過ごすのが最善です。ゼロ・オラクルのシステムは、貴女の体力の消耗を待っている」
「分かってる、グリフ。でも、私もずっと隠れているわけにはいかない」
星は、刑事としての午後の報告書を書きながら、窓の外の空を眺めた。あのシャドウ・スピーカーの精神攻撃は、彼女の心の奥底に深い亀裂を残した。自分を信じきれないまま、戦うことの重圧がのしかかる。
「今日は、これで上がらせていただく。夜は、少しだけ体を動かして、エネルギーを整えるつもり」
「お、おう。無理すんなよ、緑川」黒岩が珍しく気遣いの言葉をかける。
星は、その言葉に微かに心を温めながら、黒いパーカーを羽織り、裏口から夜の街へと向かった。彼女は、誰もいない廃工場跡地を選んだ。ここで、変身のリハーサルと、体力回復のストレッチを試みるつもりだった。
第一幕:三方向からの同時襲撃
星が深呼吸をし、変身ユニットに触れようとした、その刹那。
ネオ・トウキョウの空気が一変した。
「マスター! 三方向から、強力なエネルギー反応を感知! 全て、幹部のレベルです!」グリフが叫ぶ。
星が顔を上げると、廃工場の周囲の闇の中から、三つのシルエットが浮かび上がった。彼らは連携を取るように、静かに、しかし確実に彼女を取り囲む。
左からは、岩のような巨体、グラウンド・ブレイカー。
右からは、黒い霧のような虚空、シャドウ・スピーカー。
そして、上空の廃ビルの屋上からは、通信ノイズを撒き散らすデータ・ゴーストのアバター。
「待っていたぞ、暁の光よ」ロード・カオスの声が、三人の口を通して響き渡る。「お前が力を回復する時間など、与えるわけにはいかぬ」
この三者同時攻撃は、彼らが星の状況を完全に把握している証拠だった。エクリプス・システムは、彼女の体力が万全でないことを、すでに嗅ぎつけていたのだ。
「グリフ、全エネルギーを防御に回して! 今は耐えるしかない!」
星は変身を試みるが、グリフの警告通り、エネルギー残量が低すぎて、変身のプロセスが途中で停止しかける。
「変身完了まで、最低でも10秒必要! その間、マスターを守り抜きます!」
グリフが、周囲に防御バリアを展開するが、この三体の連携攻撃を防ぎきるには、あまりにも心許ない。
第二幕:希望をかけた絶望のサンドバッグ
まず動いたのは、グラウンド・ブレイカーだった。彼は躊躇なく、大地を叩き割る一撃を放つ。
「力の無駄だ! 避けるな、耐えろ!」星は叫ぶ。
エメラルドノヴァへの変身が不完全なまま、星は光の槍で地面を突き、その反動を利用して、物理的な攻撃をかわす。しかし、彼の拳は破壊の波動を伴い、星が避けきれなかった一撃が、彼女の側腹を掠めた。
「ぐっ…!」星は吹き飛び、地面に叩きつけられる。
その瞬間、シャドウ・スピーカーが動いた。物理的な攻撃を避けた星の精神が、一瞬だけ隙を見せたのだ。
「お前は、誰かを救うたびに、誰かの希望を奪ってきた罪人だ。その罪の重さを知るがいい!」
星の意識の中に、大量の「過去の失敗」と「裏切りの幻影」が流れ込む。第9話で打ち払ったはずのトラウマが、今度は増幅されて襲いかかってくる。
「やめ…て…!」星は、地面でうずくまりそうになる。
「お前の光は、偽善だ! 偽善者は、光を失うのだ!」
その混乱に乗じて、上空のデータ・ゴーストが仕掛けてきた。
「システム停止まで、あと数秒! 刑事に必要なのは、感情ではなく、完璧なデータ処理能力だ。お前の不安定な感情など、切り捨てるべきノイズだ!」
データ・ゴーストの強力な電子パルスが、変身ユニットを直接狙う。星のスーツの光が、激しく瞬き、変身が解除される寸前まで追い込まれる。
「やめて…私を、終わらせないで…!」
星は、両手でグリフのコアユニットを抱きしめた。グリフは必死に防御シールドを維持しているが、力の限界が近い。
第三幕:一秒の奇跡と、新たな決意
「マスター、もう限界です! ユニットが強制シャットダウンに移行します!」
このままでは、グリフが自己犠牲を選ばざるを得なくなる。星は、愛する相棒を失う恐怖に震えた。
「グリフ、ダメよ! 私を置いていかないで!」
星のこの「愛」という感情が、データ・ゴーストの予測を超えた。感情はノイズだと断じていた彼らの計算に、**「守るべき大切な存在への純粋な愛」**という、彼らが理解できない強烈なエネルギーが割り込んできたのだ。
「グリフ! 私を信じて! 私が、この光を、まだ諦めていない!」
星は、残された全ての意識を集中させ、変身ユニットへ強く念じた。それは、刑事としての強い意志と、アイドルとしてファンに届け続けた「魂の叫び」のエネルギーだった。
「まだよ! 終わらないわ!」
その強い意志の叫びが、グリフのシステムを強制的に再起動させた。
「ノヴァ、チャージ完了! 70%ながら、限界突破!」
「翠装!」
光が、星の体を包み込む。それは、前回の不安定な光ではない。失うかもしれないものへの恐怖が、彼女の意志を極限まで高め、不安定だったエネルギーを無理やり一つの一点へと収束させたのだ。
「エメラルドノヴァ!」
完全な姿を取り戻したエメラルドノヴァは、瞬時にグラウンド・ブレイカーの懐に飛び込んだ。
「まだ終わらんぞ!」ブレイカーが巨大な拳を振り下ろすが、ノヴァはそれを紙一重で躱し、光の槍をその胸部にめり込ませる。
「貴方たちの力は、ただの破壊! 私の光は、希望を繋ぐ力!」
槍の先端から、これまで見たこともない強烈なエメラルドの光が迸る。これは、彼女の絶望を乗り越えた「覚醒の光」だった。
光は、グラウンド・ブレイカーの装甲を内側から焼き尽くし、彼は悲鳴を上げて膝をついた。
「貴様…この光は何だ!?」
シャドウ・スピーカーとデータ・ゴーストも、ノヴァから放たれる未知のエネルギー波に一時的に弾き飛ばされる。
「これが、私が守るべき光よ!」
エメラルドノヴァは、グリフと共に、その隙に追撃を繰り出し、三幹部を一時的に撤退させることに成功した。
荒廃した現場に立ち尽くす彼女のスーツはボロボロだが、その瞳は強い光を宿している。
「三大幹部との初激突。勝てなかったけど、負けなかった…いや、一歩前進したわね」
グリフが安堵の振動を見せる。
「はい、マスター。貴女は、自らの恐怖を乗り越え、誰かに依存することなく、希望の力を引き出しました。これは、大きな一歩です」
星は、胸を張った。彼女は、まだ多くの試練を乗り越えなければならない。だが、この絶望的な戦いの中で、彼女の光は確実に、本物へと進化を遂げたのだ。
(第10話了)




