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1話:地獄の始まり

 何日経ったのだろうか。


 私はまだ生きているのだろうか。


 お腹が減った、もうこんなところに居たくはない。


「死んだか?」

「死んだだろ、さぁさっさと燃やしに行くぞ。」


 もしかして、私はこれから燃やされるのか?


「酒呑童子様も物好きだよなぁ、半人の奴隷を孕ませるなんて。

 おかげで俺たちは餓鬼の死体処理なんかしなきゃならなくなった。」

「お前、こんな場所でそんな事言うなよ。

 鬼王様に知れたら怖いぞ?」


 私は忌み子というらしい。


 ”呪われた子供だから、人知れず殺すべきだ。”と言われた。


 私は、なにか悪いことをしたのだろうか。


「せーの!」


 痛い……、地面には黒くて固くてゴツゴツとした何かが敷き詰められている。


「一人の餓鬼を燃やすだけなのに、なんでこんなに炭を使わねぇといけねぇんだか。」

「灰すら残しちゃいけないからだろ。早く点火しろよ。」

「え、俺がやるの?仕方ねぇなぁ。」


 熱い……ゆっくりと熱が広がってきた。


 痛い!痛い!痛い!痛い!


 息ができない……。


 なんで、なんで私がこんな目に遭わないといけないんだ。


 なんで!!


 〈貴様の心に燻る冷たい炎、我に預けぬか?〉


 ”ドォォォォン”


「痛てて、あの女本当に容赦がなかったなぁ。

 まぁ、仕留められたからいいんだけどね。」

「な、なんだ貴様は!?」

「なんで家畜が喋ってんの?」


 命王の癒し(めいおうのいやし)


「養分は摂れたし、傷も治った!

 あとこの火熱いなぁ、目障りだ。」


 水王の涙(すいおうのなみだ)


「……あれ、消えない。」


 〈貴様は何を望む?〉


 この炎を消して……。


 〈承知した。〉


 ”ジュゥゥゥゥ……”


「僕の魔法で消えた訳じゃなさそうだな。

 炎の中にいたのに死なない君は一体何者なわけ?」

「こひゅー……こひゅー……」


 苦しい……。


 この人は誰だ……。


「純粋な鬼じゃなさそうだね。

 なるほどなぁ、そんなことも起こるんだ。」


 何を言ってるのだ……?


 命王の癒し(めいおうのいやし)


「もう苦しくないだろ?」


 本当だ、痛くない。


 この人は一体何をしたいのだ?


「さて、話を聞かせてもらおうか?」

「ひっ……。」


 怖い。


 ”ぐぅぅぅぅ……”


「お腹減ってるの?

 あ、そうだ!鬼の子ならこれ食べられるかな?」


 なにか、食べさせてくれるの?


「はい!人の死骸だよ!」

「ひっ……。」


 なにこれ……。


 何をしたらこんなに無惨な姿になるんだ……。


「さすがにこの家畜どもはあげられないし、このくらいしか食べるものないんだぁ。」


 この黒いの、さっき私を運んでいた人だ……。


 この人……怖い。


「これから君は僕の配下にしてあげるよ。

 さぁ、食べて。友好の証だと思ってね?」


 ダメだ。この人には逆らってはいけない。


 理屈ではなく、本能で理解した。


 ”ブチブチ……”


 硬くて美味しくない。


「おぇ……!」

「あぁ、何吐いてるの。

 食べなきゃダメでしょ?」


 怖い……。


 食べなきゃ殺される。


「はいよく出来ました!美味しかったかな?」


 食べてしまった……。


「うっ……」


 ダメ。吐いてはいけない。


「とりあえずお腹は膨れたよね?

 それで、君の名前はなんて言うの?」

「はぁ……、はぁ……、分からない……です。」

「そっか!まぁ魔人ならよくあることだよね!」


「あの……、私はこれからどうなるの……ですか?」

「え?さっき言ったでしょ?

 君はこれから僕の配下になるんだよ。」

「はいか?になったら殺さないですか……。」

「もちろん!君が変なことしなければ殺さないよ!」


 この人に着いて行ったら酷い目に遭う。


 だけど、殺さないと言うのは本当だと思う。


 戻ったら殺される。


 それなら……殺されるくらいなら、この人に着いて行った方がいい。


「よろしく……お願いします。」

「君、物分かりがいいね。いい子だよ。」


 頭に手を置かれるのは怖い……。


 この人もあの人たちみたいに頭を掴んで持ち上げたり、殴ったり、蹴ったりしてくるのだろうか。


「殺したと思えば、炎の勇者を手に入れられるなんてラッキーだなぁ。

 混血っていうのが気になるけど、鬼の血なら人と相性いいし、まぁいっか。」


 ゆうしゃとはなんだろうか。


 私を指す言葉として使っているが、これが私の名前なのだろうか。


「まぁいいや!それじゃあ行こうか、僕のお城へ!」

「……はい。」


「帰ったよー!」


 一瞬で周りの風景が変わった。


 一体何が起こったのだ?


「ホムラ!」

「お帰りなさいませ(ブラン)様。

 如何なされましたか?」


 大きな男の人……怖い。


「色々この子の面倒見てやって?

 あと、丁重にね?」

「御意に。(ブラン)様。」


「ぶらん……様?」

「お主、己が君主の名も知らぬと言うのか?」

「ひっ……。」


 目が怖い……。


 この目はあの人たちよりも本気で私を殺そうとしている目だ。


「仕方ないさ、鬼の血がちょっとしか入ってなくてやせ細った子供なんて訳ありでしかないでしょ?」

「恐れながら、なぜそのような娘を?」

「その子が勇者だからさ!」

「なんと!なるほど、納得いたしました。

 我が浅はかな疑問に答えていただき感謝いたします。」


 またゆうしゃと言った。


 私は一体なんだと思われているのだろうか。


「今日の食事はやった。臭いから綺麗にして、あと力の使い方を教えてあげて?

 服を着させてやらないと風邪をひかせてしまうから、ちゃんと服を着させてね。」

「御意に。それでは行くぞ小娘。」


 私はこれから一体どうなるのか。


 いや、なんだっていい。


 生きてさえいればなんだっていいのだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


物騒な雰囲気で始まりましたね。

こちらの作品はスピンオフのつもりで書いています。


本編は 転生したら魔王が勇者になりました。 です。

https://ncode.syosetu.com/n8823kt/


良ければそっちも読んでやってください。


あと、励みになりますのでブックマークと評価と感想をよろしくお願いします。

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