表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄の心がわり  作者: 酔夫人(旧:綴)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/23

山吹色の児戯(1)

妄想がすすまず、更新が遅くなりました。


頑張って再開します。

本年もよろしくお願いします。


(みんなに好かれるというのが無理な話だとは分かっていたけど、なかなかパンチのある嫌がらせだわ。この貴族とその派閥とのお付き合いは今後は控えることにしましょう)


リリアンナは主催者のニアマン子爵夫人と、彼女が「特別なお客様」と紹介した女性をじっと見ながらそんなことを考えていた。


「彼女とは行きつけのサロンで知り合いまして、王都にご友人がいらっしゃらないと仰ったので今日の夜会に招待いたしましたの」

「ハフニア・マイセンと申します」


(ハフニア・マイセン……『ドゥヴァリス公爵夫人』が来ると分かっていて、よく呼んだなと思うし、よく来たなとも思うわ)


リリアンナは、ハフニアを見るのは初めてだった。彼女のことは声しか知らなかった。


(顔を見たら少しは動揺するかなとおもったけれど……)


勝ち誇ったような顔をするハフニアから、リリアンナは隣に視線だけを向けた。イグナシオがハフニアを見る目はとても冷たい。


(表向きは“最愛の妻”である私の前だから、あえて素っ気ない態度をとっているとも考えられるけれど)


リリアンナはイグナシオと長い付き合い。この冷たさが演技ではなく、本物に思えた。


(もしかして、元恋人なのかしら。それなら、そんな女性を招いた子爵夫人や、こんな場にきたハフニアさんにも苛立つわよね)


リリアンナはいま気づいた。


リリアンナはハフニアをあのときの『彼女』だと思い込んでいた。なぜなら、自分を捨てた理由となった『彼女』をイグナシオが本気で愛しているなら、仕方がないと自分を慰めることができたから。


(よく考えたら、閣下なのだから選び放題よね)


あのときの『彼女』は、その後たくさんいる元恋人たちの一人でしかなかったのかもしれない、とリリアンナは冷めた気持ちで思った。


(そう考えると、このハフニアさんも気の毒よね。私が気にしてあげる義理は一切ないけれど)


ハフニアがイグナシオの現恋人にせよ、元恋人にせよ、リリアンナが”見せる”反応は決まっていた。リリアンナには、見世物になって笑われる趣味はなかった。


イグナシオに誘われて、リリアンナ自身もニアマン子爵の事業に興味があったから一緒に来ただけのこと。家格を見ても相手の顔を立てる必要はないし、逆にリリアンナとしては侯爵夫人を道化にしようとするその度胸に感心してしまった。


(帰ろうっと)

「気分が優れないのでお暇しますね」


ウェルカムドリンクを手に持つことすらせず、リリアンナがお(いとま)を口にしたことに会場が騒めいた。しかし、リリアンナの知ったことではない。


(閣下は……まあ、実はハフニアさんとここで待ち合わせをしていたって可能性もありますからね)


「それでは」

「……ああ」


イグナシオを放って先に帰ることにも躊躇せず、あっさりと帰ろうとしたリリアンナをニアマン夫人の隣で青い顔をしていたニアマン子爵が慌てて止める。


「こ、公爵夫人。大変申しわけありません。妻のせいで気分を害しましたなら……」

「子爵は、気分を害さないとでも思ったのかしら?」


リリアンナが首を傾げてみせると、ニアマン子爵は青くした顔を助力を求めるようにイグナシオに向けた。イグナシオの冷たい顔にニアマン子爵の顔は白く変わる。


「いえ、あの、その、妻は市井の暮らしが長かったため……」

「市井の暮らし……」


市井の暮らしが長かったから。これは、貴族の庶子や平民夫人の教育不足を言い訳するときの定型文となっている。


リリアンナは楽しそうに笑い声をあげた。


「ニアマン子爵、私も少しですが市井を知っておりますのよ。ご存知ありませんでした?」


あの事故のあとシフォンで平民として暮らしていたという報道をリリアンナがニアマン子爵に思い出させれば、子爵はぐうっと喉を絞められたような音をたてた。


「こんな悪趣味な遊びが市井ではやっていたとは知りませんでしたわ」

「いや……それは……」


リリアンナは深く溜め息を吐いてみせる。


「子爵夫人の経験を生かしてニアマン子爵が開発しようとなさっている魔導具の事業に興味がありましたが、残念ですわ」


「あ……」

「失礼いたします」


ここで帰ることは更に話題を提供することになるが、今さらだと思いながらリリアンナは会場に背を向けた。後ろから「私の所為でごめんなさい」と、やけに大きく謝りながら泣く声がした。


(泣けば許してもらえるのは子どもまで……いえ、エアやハルシオン殿下に失礼ね)


子どもでもしないような愚行をする大人のことまでリリアンナは面倒をみる気はなかった。


 ◇


子爵邸の正面玄関に立ったが、誰もいなかった。まだ誰も帰る時間ではないから、子爵家の使用人は別の仕事に行ったのかと思ってリリアンナは暫く待つことにした。


ベンチでもないかと庭を見回したとき、リリアンナはその腕を突然引かれた。


「……っ!」


先ほどまで、児戯のようであったとはいえ悪意に晒されていたリリアンナ。警戒心は最大になっており、リリアンナは反射的に風魔法を発動した。


先手必勝。

間違っていたら、あとで謝ればいい。


それがリリアンナの父・リアンから教えられた護身術だった。


「待った!」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ブクマや下の☆を押しての評価をいただけると嬉しいです。


次回は1月26日(月)20時に更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
気長に待ってますよぉ! 面白いので!凄く待ってます! そして、気になるー次の話は早いといいなぁ✨
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ