17.悪役令嬢は気づく
「とうちゃーく」
可愛いい。
私の部屋の前に着き、レオンは可愛さ全開で言う。そして、ギルに扉を開けてもらい部屋の中に入り、ソファーにちょこんと座る。私はそれを微笑ましく見ていながら、隣に座る。
「レオン」
「どうしたの?お姉様?」
レオンは首をコテンと傾げる。
……何故、こんなに可愛いのかしら。私と身長ほとんど変わらない筈なのに。
「知っていると思うけど、私はソフィア・サブジーナス。貴方の義姉になるわ。これからよろしくお願いね」
「はい!元ブラン侯爵家三男、現レオン・サブジーナスです。本日を持って義弟とならせて頂きます。よろしくお願いします」
そう、可愛さと爽やかさが混ざった笑みを浮かべながらレオンは言う。それにより、可愛いだけではないのだと気づく。
可愛いだけじゃないなんて!最高!!
レオン・サブジーナス。ああ、最高の響き。元々弟が欲しかったから義弟が出来ただけでも幸せなのに、こんな可愛いけどそれだけじゃない子が来るなんて。
ああ、最高…………え?
私は固まる。
「れ、レオン」
「なーに?」
「レオンって、七歳?」
「うん」
私の血の気がうっすら引く。
「ブラン侯爵家の三男だったのよね?」
「うん。それがどうしたの?」
レオンは、容赦なく私の退路を無自覚で閉ざす。
ああ、やっぱりそうなのだわ。
私は気づく。
「お姉様?」
「ソフィア様?」
レオンが「アマリリス王国の聖女」の攻略対象だということを!
◇ ◇ ◇
私がハマった、大人気乙女ゲーム「アマリリスの聖女」。シリーズ第二作品目で、既に漫画・アニメ化している。
この作品の注目ポイントはスチルが沢山あるということと、イラストが神作家さんが描いたもので、モブすらも美形な事だ。
そして、キラキラの王太子や、力を使いこなせていない膨大な魔力を持つ子息、人との付き合いが不得意な面白いことが好きな時期宰相といった、数々の個性豊かなイケメン攻略対象。
レオン・サブジーナス。
彼もその中の一人だ。
レオンは、主人公の同級生で悪役令嬢ソフィア・サブジーナスの義弟。義姉の冷徹な腹心であり、自らの才能を使い義姉の横暴の膨張をしている。時には暗殺者まがいのことをするというように、どんな非道な行いでも躊躇なく実行する。ソフィアに歪んだ独占欲や異常なほどの承認欲求を向けており、ソフィアが居る時だけ笑顔を見せる。
レオンは、ソフィアによって心を歪まされた。
『お姉様……? なにか、ご不満でいらっしゃいますか……?』
『はい、お姉様! レオン、すぐに行って参ります!』
『何?邪魔しないでくれる?お前らみたいな奴に構ってる暇があるなら、お姉様の近くに行きたいんだけど』
ソフィアへの、従順な態度。他の者への、冷淡で関わろうとしない態度。
レオンの家族への「大好き」という感情が、ソフィアへの恐怖と依存によって歪められ、本質的な優しさまでもが失われてしまった。
可愛いレオンが、冷徹になってしまうなんて考えられないわ。でも、しょうがないわよね。七歳なんてまだ幼いもの。誰かからの愛情を欲するわ。
そのせいで、冷徹になってしまうのだけれど。
攻略対象の中で悲劇的な道を進んでいた人は、覚えている限りレオン含めて二人だった。主人公が聖女だからしょうがないかもしれないが、当人達にとっては、自分の人生を悪い方向へ変えられたのだから乙女ゲーム制作スタッフに文句の一つや二つ言いたいだろう。
というのは置いといて、ソフィアはレオンのルートでも断罪される。ゲーム開始時とは別人の様子で。
しかし、レオンがああなったのはソフィアの性格のせいなので、私はこのままレオンを可愛がって、使用人の皆をいびらなければ良いのだ。
面倒なことをする必要は無い。
そういや私、逆ハーレムを目指してたけど何も努力してないのよね。何かしているといえば、毎日筋トレをして、勉学や魔法を頑張って、何があっても人をいじめるようなことはしないということだけれど。
……これ、本当にモテるのかしら?
疑問が私の頭をよぎる。
だが、自分がモテているかなど相手が告白でもしてくれない限り分からないので、モテていると思うことにする。自己評価は高すぎてもだめだが、低すぎても危ないからこれくらいが丁度良い。
身近な所にいるレオンは、恋の相手というよりかは私の癒やしなので義弟として可愛がることにする。癒やしが義弟というのは最高だ。




