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遅れることもありますが、原則翌日の午前6時までには更新されておりますので、見捨てずに見守っていただけると嬉しいです!
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スイが席に着くと緩んでいた雰囲気も締まり、全員がやんわりと押し黙る。
既にスイ以外は全員、顔見知り程度になっていたがスイだけはアメリアやセレーネと初対面である。
スイが、
「カイとケイの兄です。よろしく」
と頭を下げたのを発端に、他の全員も改めて簡単に自己紹介を始めた。
カイは普段通りのフランクな態度であり、ケイも少しモジモジとした雰囲気は見せているが、いつもに比べれば落ち着いた態度だ。
実はひっそり緊張しているアメリアは動揺する心を体の内側に押し込めてクールにソツなく自己紹介をこなし、反対にセレーネはかなり緊張しきった様子で声を上ずらせ、少々オーバーに頭を下げるなど初々しい自己紹介を行った。
自己紹介が一巡すると、再び場が静かになる。
誰か、最初に言葉を発するものがいるとすれば、それは長男であり全体から挨拶を受ける立場のスイになるだろう。
特に示し合わせたわけではないが、スイ以外の全員が何となく彼を見た。
しかし、合計四つの視線を一身に受けるケイは一言も発さずに、キュッと口を横に結んで押し黙っている。
こういう場が硬直して行き詰ってしまった時、素早く動き出すのは気遣いができて積極性も高いカイだ。
特に動く気配の見られないスイにカイが苦笑いを浮かべた。
「兄貴、こういう場に慣れねーのは分かるけどさ、なんか、もう少しないの? 結婚おめでとうとか、そういうの。ちなみに俺はさ、アメリアさんのこと好きで、素敵な人だと思ってる。正式にお付き合いをしたのは最近だけれど、長く一緒に働いていたし一年くらい前から親しくさせてもらってたから人柄は知っているつもりだ。それで、気が早いって言われるかもしれないけど、俺は彼女との将来も考えてる。だから、今日は無理を言ってきてもらったわけだし。それと、兄からケイ夫婦に送る言葉があれば、素直におめでとうってくらいかな。今日、少し話しただけだからセレーネちゃんの詳しい人柄は分からないけれど、明るくていい子だと思った。何より、セレーネちゃんと話すケイが凄く嬉しそうだったからさ、きっといい関係なんだろうなって。俺はさ、二人を見て、きっと二人は幸せな夫婦になる、というか、なってるんだろうなって思ったよ」
柔らかい口調で語られるカイの言葉に、アメリアがニコリと微笑んで、セレーネとケイがお揃いの照れ笑いを浮かべる。
それからカイは、マイペースで行動の読めないスイではなくケイに目配せして、彼にも言葉を促した。
視線を受け取ったケイが目を丸くしてから、カイにならって彼に祝福の言葉を述べたり、セレーネとの日々に対する意気込みを語ったりする。
その後、バトンを受け取ったアメリアとセレーネも似たようなものだ。
アメリアは相変わらず冷静な態度で言葉を出し、シレッと、
「カイさんのこと、幸せにしたいと考えています」
と述べ、カイを照れさせているし、セレーネも、
「不束者ですがケイさんと幸せな日々を送れるよう、頑張っていきたいです!」
と、一生懸命に抱負を述べている。
アメリアやセレーネが話をしている間、スイは静かに二人の瞳を見つめていた。
『アメリアさんは梟のように聡明な瞳を、セレーネさんは仔馬のような純朴な瞳をしている』
一見するとふざけたスイの感想だが、彼は本気だ。
これまでの境遇が故か、スイは人間が嫌いで女性不審であり、代わりに動物が好きだ。
そんな彼は時折、気に入った人間を身近な動物に例える癖があった。
例えばカイは中型犬であり、ケイはハリネズミである。
醜いはずの人間に思わず美しい動物を重ねてしまうほど、相手の人間が綺麗だと思った時、スイは改めて相手の瞳を見て、それから最終的な動物を割り出していた。
動物に例えたくなるような人間が弟たちの相手で、スイは心からホッとしていた。
そのため、再び自分に挨拶の順番が回ってきたスイは穏やかに、
「セレーネさんはケイを、アメリアさんはカイを、どうか、よろしく頼む」
とだけ述べて、丁寧に頭を下げた。
カイなんかは、
「やっぱりそれだけなのかよ、口下手もここまでくるとどうしようもねーぞ」
と苦笑いを浮かべており、ケイも呆れた様子でスイを眺めていたが、アメリアやセレーネは「こちらこそ」と頭を下げ返していた。
「これ以上、堅苦しくしててもしょうがないし、挨拶も済んだんだから後は冷めないうちに食事にするか。兄貴が持って来てくれたワインもあるし、料理を作ってくれたセレーネさんやアメリアさん、ケイに感謝しつつ、楽しく飲み食いでもしよう」
カイの言葉を契機に、各々料理をとり始め、食事を開始する。
最初はぎこちなかったが、食事を進め、酒も入って舌の動きも緩やかになってくると初めの頃のような打ち解けた雰囲気が帰ってきた。
料理に対する感想や近況の話、それぞれの子供時代の話など、取り留めのない話題が飛び交う。
無口なスイはあまり自分から言葉を発さなかったが、代わりに、たまに振られる言葉に返事をして相槌を打ったりしながら静かに話を聞いていた。
騒々しくも明るく楽しいリビングで、スイは何故か、悲惨だった過去を思い出していた。
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