不穏
現在、毎日投稿企画を実施中です。
本作品は午後6時ごろを目安に毎日更新されます。
遅れることもありますが、原則翌日の午前6時までには更新されておりますので、見捨てずに見守っていただけると嬉しいです!
よろしければ、明日以降も読みに来てください!
自然と早歩きになったせいでいつもよりもほんの少し早い時間に家に到着する。
酷く緊張して少し荒れた呼吸を整え、玄関のカギを解錠する。
だが、不意にセレーネの外出を可視化しようとしてドアの開閉部分に貼っていた紙が剥がれ落ちているのを確認して、ドギッと心臓が鳴った。
『セレーネさんが約束を破った?』
考えるよりも先に動く視線が、室内の明かりを外へお裾分けする窓を捉える。
家に帰ってくるまでに沈めておいたはずの早とちりぎみな疑心暗鬼が再び目を覚まして、ゾワゾワと体の内側を這いまわった。
今すぐ乱暴にドアを開け、
「どうして勝手に外出したの?」
と、問い詰めたくなる。
だが、ケイは胸に手を当ててカイから貰った言葉や勇気が心臓に引っ付いているのを確認すると、落ち着くために深呼吸をした。
『バカなことを考えちゃ駄目だ。何かやむを得ない事情があったのかもしれないし、話を聞くまでは分からない。まずは、セレーネさんの様子を確認するのが先だ』
手のひらにびっちりと汗をかきながらドアノブを回し、中に入る。
『変に静かだな。セレーネさん、いるんだよな?』
やけに薄暗い家の中を訝しがりながら廊下やリビングを進み台所に入る。
そして、ようやくセレーネの姿を見つけるとケイは、
「セレーネさん!」
と、悲鳴に近い叫び声をあげた。
セレーネは台所の床の上でうつぶせになって倒れていた。
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