身分差別
一時間ほどしてリネットは喉が渇きお水を取りに行く事にした。廊下を歩き階段を降りる途中カミルの両親の小さな肖像画が置いてある。普段はその前にお花が生けてあるが、今日はパーティーの準備に忙しくお花がなかった。
リネットはこんな日にお花がないなんて。。と思い、庭園に取りに行く事にした。なるべく人に会わないように裏口から出て庭園に入った。庭園には涼みにきた貴族達や、恋人同士の貴族達がいた。リネットは邪魔にならないように移動して美しく咲いている花を切っていた。「リネット?」突然声をかけられて振り向くとエルマとアランがいた。
「あ、」リネットは姿勢を正し挨拶をした。「エルマ様にアラン様、ご機嫌麗しく」「リネット!、そんな挨拶はいいわ!誕生日おめでとう!!」そう言ってエルマはリネットに抱きついた。「エルマ、おめでとう、アラン、おめでとう」リネットも言った。「リネット何をしているの?」アランは聞いた。リネットはカミルの両親の肖像画に飾る花を取りにきたと説明した。
「二人はデート?」
リネットは聞いた。
「ああ、そんな所」
アランは言った。
「違うのよ、アランってめちゃくちゃモテるの、もう後から後から令嬢達が集まって腹が立つからアランを引っ張って出てきたのよ」
エルマが言った。
「エルマだって令息達に声をかけられてたじゃないか!」
アランはエルマを睨みながら言った。
「まあまあ、、二人とも仲良くてよかった!安心したわ!」
リネットは言った。
「ねえ、リネット、ベティの事なんだけど、、」
エルマが言った。
「エルマ、リネットには関係ないから言わないほうがいい」
アランが言った。
「ええ、でも一言だけ、リネット、ベティは変わったわ。」
エルマはそう言って悲しそうに微笑んだ。リネットは察した。
「わかったわ。ありがとう。もう戻らないと、、パーティー楽しんで!」
そう言ってリネットは二人の手を振り歩きだした。
突然小道から令嬢が現れ、リネットはぶつかってしまった。
「申し訳ございません」
リネットが慌てて謝罪するとその令嬢はリネットを見て顔を歪めながら言った。
「メイドのくせにちゃんと前向いて歩きなさいよ、ドレスに花ビラがついたじゃない!!」
そう言ってリネットを突き飛ばした。リネットは花を抱えたまま転んでしまった。
「申し訳ありません」
リネットは再びその令嬢に謝った。
「ケアリー令嬢、それくらいで宜しくない?」
リネットは聞き覚えのあるその声を聞いて顔を上げた。ベティだ。リネットは一瞬目を見開いたが、そんなリネットを見たベティは眉間に皺を寄せる。
知り合いと思われたくない。そんな顔をしていた。ベティの変わりようはエルマの言葉通りだった。
「さ、行きましょう」
ベティはリネットを一瞥し、ケアリー令嬢と一緒に去って行った。
リネットは去ってゆくベティを悲しげな表情を浮かべ見つめていたが、小さくため息を吐き、洋服の土埃を払った。だが、転んで汚れた服よりも手に持っていた花が折れダメになってしまったことが悲しかった。
だが、絶角だからと、もう一度取りに行こうと立ち上がった。
「痛!」
ズキンと手が痛む。転んだ時にハサミで手を切ってしまったのだ。ポタポタと落ちてゆく血を止めるために怪我をした場所にエプロンを巻きつけ、再び花を取りに行った。