カミルの愛
「リネット姫が全てを捨てて消えた!」
そのニュースは瞬く間に世界中に広まった。
ノールズ王国の国民は動揺したがアンディがすぐ国民に「リネットは昔のように自分の時間を歩き始めただけだから心配はいらない、この国はリネットの家だ。いつか帰ってきた時には笑顔で迎えるのが我々の役目だ」
と説明し動揺を抑えた。
一方帝国では皇帝がカーティス公爵を呼び出し真相を聞いた。
「皇帝、リネットは望んでノールズ王国に帰った訳じゃないんだ。自分の使命を果たすために帰り、果たしたからまた出て行っただけじゃ。リネットは自分の人生を掴むために全てを捨てて一人で歩き始めた。見守るのがわしの仕事だ。」カーティス公爵は言った。
「お義兄様は知っていたのですね、、リネット姫がそうすると。。」
「ハハハ、わしはあの子を育てた。全部わかっておる。この先の展開も、、な」
カーティス公爵は言った。
「なにやら、、気になるが、見守ることにしよう」
「それが我々の役目だな」カーティス公爵はそう言って窓の外を見つめた。
カミル、リネットは歩き出したぞ。
「クラウディア様、リネット姫が全て捨てて旅に出たと。。」
クラウディアのメイドが報告した。
「リネットが?本当ですか?」クラウディアは驚いた。
まさかそんなことをするとは思っていなかった。ただ、もう会うことがない、カミルの前に現れることがないことに安心した。
「そうですか、、きっとカーティス様もカミルも寂しいでしょう、私がリネットの代わりに二人を支えますから、、」
クラウディアは嬉しそうに言った。
カミルはリネットが全てを捨てて出て行ったことを知った。
リネット、お前はそうすると俺にはわかっていた。
本当は全部わかっていた。
リネットの気持ちに答えたくても自分の本当の気持ちに気がつくことが遅すぎて、、
一番近くにいて自分の一部のように感じてて、お前が笑えば俺も笑えて。
お前が泣けばその涙を止めたいと思うこの気持ちが愛だったなんて気がつかなかった。
ずっとずっと前からリネットを愛していたのに、リネットだけを愛していたのに、、
何度も何度もそれは家族への愛だと言って、自分に言い続けて、
身動きが取れなくなるまで言い続けて、
でもあの日、リネットに再会してやっぱり愛だと、
この気持ちは愛だとはっきりわかった。
だけどクラウディアがいる俺はクラウディアを選ぶしか無くて、
俺がクラウディアを選ばなければクラウディアは二度と誰かと結婚できない。
自分の気持ちに蓋をしようとしたが、リネットに会うたびに、
会えなくても思い出すたびにリネットだけを求めてしまう。
もうリネット以外愛せないし、リネットを諦めたくない。
唯一の方法は二つ、
クラウディアに婚約破棄してもらうか、
俺がルークラフト公爵を捨てる。
クラウディアとは何度も話をしたが頑なに彼女は拒んだ。
だったら父と同じ道を進むだけだ。
愛を掴むために全てを捨てる。
お祖父様はいつもリネットの幸せを願っていた。
今ならお祖父様も理解するだろう。
形なんて愛に比べたらちっぽけな物だと。
俺は全てを捨ててリネットを掴む。
自分が本当に欲しいものは多くない。
その多くない中で一番欲しいものはそれ以外要らないという意味だ。
俺は自分が本当に欲しいものを必ず手に入れる。
リネット、それがお前だ。