ただ一人だけに
リネットはテラスを出て城の屋上近くにある街が見渡せる場所にいった。
手すりも柵もない場所で下に落ちたら命はない。リネットは昔からこの場所にいた。
この場所にいなくても常にこんな場所にいた。
「もう疲れちゃった。」リネットは呟いた。
「ここはリネットのお気に入りの場所?」振り向くとカミルがいた。
「カミル、、何故ここに?」「秘密だ」「なにそれ!!カミルって時々不思議」
リネットはカミルが好きで好きでいる事はやめない。
たとえもう二度と会えなくてもずっとカミルを好きでいさせてね。そう思いながらカミルを見つめた。
カミルは少し髪が伸びている。カミルの横顔は完璧で長いまつ毛がどこか寂しそうな印象がある。
「リネットお前はここで育ったんだな」
「……ええ、時々部屋を抜け出してここから空や町や、、死を見つめてた。」
「死を、、」カミルは呟いた。
「そう死。いつも私の隣は死があった。右手に剣、左手に死。そんな生活送っていた。右手の剣はね、誰かに襲われそうになったらそれで殺せ、殺せないなら自害しろってそう言われて育ったのよ。」
「だから初めてあった時ナイフを手放さなかったんだな」カミルが言った。
「カミル、そんな事を覚えているの。。」
「ああ、この子どんな経験してたんだと思った」
「怖がらせちゃったね。。」
「いいや、どうやって笑わせようかと思ったな」カミルはそう言ってリネットに微笑んだ。
「カミルって本当に王子様見たいね。見惚れちゃう!!女の私でも嫉妬するほどの美貌ね!」
リネットはクスクス笑いながら言った。
「リネットはそんな風に俺のこと見てくれてるの?」
「えーーーー!!私だけじゃないよ、世の中の女性全てカミルの事そう思っているよ!気がつかなかった?カミルって可笑しいね」
「俺は百人にそう思われるより、ただ一人にそう思われたい。」
カミル、クラウディアはそう思っているよ、、、。
私もただ一人にそう思われたい。。
「カミル、それはわかる。数じゃないよね。欲しいものはそうそうないから。。」
「ああ、そうだな」
二人はそう言って眼下に広がる街を見ていた。