愛されるための積み重ね
ノールズ王国に戻ったリネットは国内外の流通をスムーズに行えるように各国と連携して一本の道を整備する提案をした。
はじめはここから攻められたらどうする等反対意見ばかりだったが、根気よくそのメリットと、防衛について説明し陸路で帝国まで行ける道を作る事になった。
これによりこの道を中心のそれぞれの国が栄え、人も物も流通して社会に大きな活力を与えることができる。
そうなると結果的に税収が増え、国が豊かになり国民も暮らしやすくなる。
その国しか知らなかった人たちが他の国の物を知り、経済面でも、教育面でも情報が入る様になり、競争力が生まれ人が物を選べる様になる。
さらに他国で学びたい人たちが学べる様になる。国も人も解放してあげることが成長への近道だと考えていた。
リネットは他の姫や令嬢と違い、政治のことを考え、協議し、行動に移す類い稀なる女王だと思われていた。
実際はそんな事はなく、社交界で女性が求められる役割が出来ないから出来ることをしているだけでそう言われる事を嬉しく思っていない。
リネットは静かに暮らしたいだけだった。
やるべき事をやり、静かに離れよう,そんなことばかり考えていた。
カミルはクラウディアのどんな所に惹かれたのだろう、、
リネットは馬鹿馬鹿しいと思いながらクラウディアと自分を比べてしまう。
同じ王国の姫という立場だが、メイシー国はノールズ王国より小さいが豊かで穏やかな国だ。
家族愛も強い国でクラウディアには兄と弟がいる。クラウディアは姫の中の姫と言われるほど優雅で美しく優しく、国民に尊敬される姫だ。
頭も良く人当たりも良く彼女を嫌いだという人間はいないと言われている。
日の打ちどころのない完璧な女性だ。
それに比べリネットは殺伐とした環境で育ち、まともな教育も受けず、人見知りもあり、どちらかというと内気で影のある人間だ。
その時点で勝敗があるのならば決まっている。
リネットには何一つ勝ち目がない。
勝ち目がないからこそ頑張らなきゃいけないのに何に頑張るのかもわからない。
見た目も,性格も全て全く比べものにならない。
十万人に一人くらいはリネットが良いと言ってくれる人がいるかもしれないが、その人がカミルだとは限らない。
私を好きでいて欲しい人は誰でも良いわけじゃないところが恋愛の難しさだ。
十万人の人が自分を好きでいてくれても、自分が愛する人一人の価値にはかなわない。
その一人が自分を愛してくれる事はないに等しい。
それが現実で、それが真実だ。
全てにおいて完璧なカミルが自分を選んでくれる確率はゼロだ。
選んでくれているならもうすでに隣にいて良いほど長い付き合いだからだ。
自分の隣には誰もいない。
それが現実。現実とは過去の積み重ね。
私はカミルに愛される積み重ねをしてこなかったのだと認めて受け止めるしかない。
幼い頃からカミルが大好きで、ずっと彼だけを見つめて、この先も彼だけを愛して報われる事ない愛を持ち続ける事が幸せなのかわからないけど、自分の好きを貫ける自分が好きだと思える。、、
カミルは結婚の準備で忙しいかな、、。
リネットはノールズ王国の城の上から夕日を眺めながらカミルを想っていた。