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無欲な私の本気の恋  作者: ねここ
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強烈な嫉妬心

「リネット」


 着替え終わったアンディが来た。


 「お兄様いきましょうか?」リネットはアンディの方に歩いて行った。


「あ、あらためて、、お兄様、エルマとベティです。」リネットはアンディに二人を紹介した。


 

 「学園で会ったことがありますね、改めて宜しくお願いします」アンディは二人に挨拶をした。


「はい!!」ベティは前のめりになった。ベティはアンディに恋をした。。

 リネットはそんなベティを見てクスクス笑った。


 

 会場に戻るとダンスが始まっていた。



 注目を浴びているのはカミルとクラウディアのダンスだった。


 

 ここまで絵になる人間が存在するなんて不公平だと思えるほど二人は美しかった。

 誰もが二人を祝福し、憧れて、応援している。この愛が続くことをみんなが願いたくなるほど完璧で美しい二人。


 

 リネットも二人のダンスを見つめていた。心奪われるほど似合っている。

 夢が見られないほどこの現実は強烈だ。


 叶わない夢は見ない方が幸せなんだと思い知らされる。




 リネットはそれでもこの現実を受け止めて笑っていないといけない立場に立ってしまった。


 

 ダンスが終わり二人は見つめあっている。誰が見ても愛がある。


 応援しなきゃ、カミルの愛を応援するって幼い頃からずっと決めていたから。

 でもリネットが応援しなくても良いほど周りが応援している。




 見たくない。リネットは初めて強烈な嫉妬心を覚えた。

 

 

 私にこんな強い強烈な負の気持ちがあるなんて、、。




 リネットは視線を窓の外に、輝く月に移し静かに笑った。


 大人になればなるほどこんな嫌な感情だらけになってしまった。



 私も父や母となんら変わりない人間なんだ。


 あの殺伐とした空気が私の居場所だったのかもしれない。




 リネットはそっと会場から離れた。



 城の中央にあるエントランから繋がっている階段の上に立った。



 眼下に広がる街は光に溢れていた。



 馬車が到着する広場まで続く大きく長いこの階段はすこしカーブを描いており一番下は扇状になっている。


 白い大理石で作ってあり真っ赤な絨毯が敷いてあった。


 

 リネットは誰もいないその階段を一歩ずつ降り始めた。



 このまま下まで降りてしまえば自由になれるかもしれない。




 見たくない、感じたくない負の気持ちにならないのかもしれない。


 自分の生い立ちやここまでくる道のりは耐えられたのに、




 カミルとクラウディアの姿はもう耐えられそうにない。





「今は逃げてもいいよね」



 

 リネットはそのまま階段を降り始めた。


 長い階段の真ん中を少し通り過ぎた時「リネット!!」名前を呼ばれた。



 振り返るとカミルが上からリネットを呼んでいる。


 リネットは「今は会いたくないのに、、」と呟き、カミルに向かって笑顔で手を振りそのまま走って階段を降りて行った。



 ドレスがまとわりつくので少し持ち上げヒールは脱げたが構わず裸足で降りて行った。


 あともう少しで降りれる!


 そこでリネットはカミルに捕まった。




「リネット!!どこに行くつもりだった?!」


 

 カミルは怒ってリネットの手を自分の方に引っ張り後ろから抱きしめた。



「ハァハァ、」



 

 息が上がって返事ができない。だけどおかしくなって笑えてしまった。



「アハハハ、、捕まっちゃった」


 

 「リネット!」カミルは怒っている。


「カミル、怒らないで」リネットは言った。


 

 「リネット、怒るよ、、、」カミルは呆れた口調でいった。



「リネット、こんな格好でどこに行く気だった?危ないじゃないか!!」

 

 「どこに行くのかわかんないけど、ここじゃないどこかを見たかっただけ。」

 

 「街が見たいなら案内する、ここじゃない所に行きたいなら一緒に行く、だから一人でこんな事をするのはやめてくれ。心臓に悪い」



 カミルはそう言ってリネットを強く抱きしめた。


「カミル、ごめんね。。」リネットは謝った。


 

 カミルは純粋に心配をしてくれている。



 これは恋愛じゃなく家族の愛、、



 勘違いしたくなるほどカミルはリネットを強く抱きしめていた。




「カミル様!」


 

 遠くでカミルを呼ぶ声が聞こえた。



 クラウディアだ。



 リネットは慌ててカミルの腕を解き声の聞こえた方を見上げた。

 クラウディアとメイドが階段の一番上から二人を見ている。




 これを見たくなくて、逃げたのに、、。




 カミルはリネットの腕を掴んで自分の方に引き寄せクラウディアを見て言った。



「何かあったか?」

 

 リネットは妙な雰囲気の二人にのまれ顔が見れない。



 何かあったか?はない。


 自分だったらこの姿を見せつけられたら疑うし平常心保てなくなりそう。。

 家族だからクラウディアも許していると思う。。



 

「カミル様、ラストダンスです。そろそろお戻り下さいませ」



 クラウディアは柔らかい口調でカミルに言った。



「ああ、わかっている。今日はリネットが来たからリネットと踊るから先に入っていて」

 カミルは平然と恐ろしいことを言った。



「わかりましたわ」クラウディアは微笑みながら返事をし城に入って行った。

 


「カミル!!それはダメ!!クラウディア様と踊ってください。私はそんなラストダンスを踊る資格もないし、カミルは婚約者がいる身なのよ!!」



「で?」


 

 カミルは言った。




「で?ってどう言う意味?訳わからないわ!」


 

 「俺と踊らないって事?」



「カミル、俺と踊らないこと?って踊る訳ないでしょう??あなたはクラウディア様と踊るのよ、それをクラウディア様もみんなも望んでいる事なの!!」



 


「俺は望んでいない」





 カミルはリネットを見つめて言った。


 リネットは言葉が出なかった。

 


「カミル、階段を急に降りて、、ヒールも壊れてしまったし、ドレスも少し破れてしまったし、私は無理よ。だからカミルはクラウディア様の所にいって」



 リネットは下を向いてカミルにいった。



「リネット、ここで二人で踊ろう、あの時みたいに」

 

 カミルはそう言ってリネットの手を取った。あの時みたいに、、、



「カミル、懐かしいね、、」リネットも観念してカミルと向き合った。

 

 音楽も何もない階段の一番下で二人は笑いながらラストダンスを踊った。



 ダンスが終わりリネットはカミルに言った。



「カミル、私はこのままここから馬車に乗りノールズ王国の所有する邸宅に戻ります。クラウディア様によろしくお伝え下さい。おやすみ,カミル」


 

 リネットは壊れたヒールを手にカミルに言った。



「リネット、明日のお茶会くるよね?またその時に、、」

 

 「ええ、また明日、」


 カミルはリネットを馬車までエスコートし、城に戻って行った。

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