王子さま
「リネット、そろそろ会場に行こうか?わしがエスコートするぞ」
カーティス公爵が戻ってきてリネットに声をかけた。
「はい、カーティス様、お願いします。」
リネットはカーティス公爵にエスコートされた会場に戻った。
「リネット!!!」アレン、エルマ、ベティがリネットを見て走って来た。
カーティス公爵はリネットに行っておいでと囁いた。
「皆!!」
リネットも三人の所に走ってゆき昔のように三人に抱きついた。
「リネット!!!」「リネット心配したぞ」「ウワーンリネット!!頑張ったね」
三人は泣きながらリネットの頭をくしゃくしゃに撫でた。
「アレン、エルマ、ベティ!、会いたかった!!ありがとう!!」
リネットは泣きながら言った。エルマはリネットの涙をハンカチで拭きながら
「昔から心配してたけど、今回は心臓に悪かったわ!!」
「エルマなんか毎日教会で祈っていたからな、、まあ俺もだけど」
アレンが照れながら言った。
「ありがとう、、、」
「私もリネットの無事を祈って毎日野の花を部屋に飾って祈ったのよ」
ベティがリネットを抱きしめながら言った。
「、、ありがとう、、皆,,ありがとう」
「ほらほら、今日の主賓を泣かせたらダメよ。リネット笑って!」
エルマはリネットに言った。
「うん、エルマありがとう!」
リネットは三人に微笑んだ。
「ねえ、リネット、お兄様紹介して!」
ベティが言った。
「ええ、紹介するわ、」
そう言ってリネットはアンディを探した。しかしアンディは見当たらない。
「どこに行ったのかしら?」
リネットは中庭を見下ろせるテラスに出て下を見た。
アンディが数人の貴族の囲まれている。その場所はプールがありなんとなく気になってリネットは急いでアンディの所に行った。
アンディは泳げない。泳げないことがバレるとそれが命取りに直結する。
万が一落とされた時は一緒に落ちよう。そして笑い話に変えなければ帝国で問題を起こすわけにはいかない。。
リネットはすぐにアンディの所に行った。
案の定アンディに恨みがある貴族達だった。
「アンディ、よくもクラウディアに付き纏ったな!彼女は我々の女神だ!」カミル様だからこそ許していたのにお前が付き纏ったせいでクラウディア様は一ヶ月も恐怖で休まれたのだぞ!」
「あの時はどうかしていたんだ、本当に反省している。ここでいま問題を起こすわけにはいかないんだ。あらためて謝罪する」
アンディは必死になって貴族達をなだめていた。
「お兄様」
リネットが声をかけた瞬間貴族の一人がアンディをプールに落とした。すぐにリネットも一緒に落ちたように見せてアンディの耳元で囁いた。
「お兄様ここは浅い。脚がつきます。大丈夫笑ってね」
アンディは頷いた。
二人はプールに落ちて行った。そして二人はプールから顔を出してゲラゲラ笑い出した。
「お兄様、暑いからってプールに飛び込むとは!!」
「リネット、お前だって飛び込んだだろ!!」
二人は顔を見合わして笑った。
「アハハハ!!リネットせっかくの我が国のドレスがベタベタだぞ!」
「お兄様だって同じよ、でもやはり我が国のシルクは濡れても綺麗ね」
リネットの結ってあった髪はとれてしまい長い髪がリネットの身体を包んでいた。
美しい兄妹の姿は見るものを魅了した。
この騒ぎを聞きつけた貴族達はテラスからリネット達を見て騒いでいる。アレン達は急いで下に降りた。
カミルはテラスが騒がしいことに気がつきテラスに出ると水に濡れたリネットとアンディがアレン達に引っ張られプールサイドに腰をかけて笑い転げている様子が見えた。
カミルはすぶ濡のリネットの美しさに目を奪われていた。
濡れて輝く長い黒髪から水が滴り落ちる様子はまるで宝石が毛先からうまれているように見えた。
濡れて身体にピッタリとくっついたドレスがリネットの体の美しいラインを際立たせている。
水の妖精が人間界に現れたような美しさと、どこか妖艶な魅力がありカミルはこんなリネットを誰にも見せたくないと思った。
すぐにテラスから下のプールサイドに飛び降りリネットの所に行った。
リネットは「キャー」という声が突然聞こえそちらを向くとカミルがテラスから飛び降りリネットの目の前に現れた。
リネットは驚いてカミルを見るとカミルは微笑みながら自分のマントをリネットにかぶせて
「リネット風邪引くぞ」
と言ってリネットを立たせた。
「あ、ハイヒールがプールの中に、、」リネットが言った。
「おい、そこの汗かいてる三人、暑そうだな、悪いがリネットのヒールをプールの底から拾ってくれないか?」
カミルはアンディを突き落とした貴族達に言った。
「は、はいカミル様、、今日は暑いですね。ちょうどプールに入りたいと思っていたのです。」
三人は震えながらプールの飛び込んだ。そして底に沈んでいたリネットのハイヒールを拾い上げリネットの前に持ってきた。
「すまないな、リネットは俺の家族だ。リネットの兄のアンディは友人だ。アンディに何かあるとリネットが泣くからな、俺はリネットが泣くのを見たくないんだ。泣かせたやつを今まで全員ぶっ殺したからな」
カミルは笑いながら言った。
「カミル懐かしいな」アレンが言った。
「懐かしい!!」ベティも言った。
「カミルはいつもそう言ってたよね」エルマも言った。
「カミル、、ありがとう」
リネットはカミルが全てを察してくれたのだとわかった。本当にカミルはすごい人。
「リネット、風邪引くぞ、着替えよう」
カミルはずぶ濡れのリネットを抱きかかえアンディ、アレン,エルマ,ベティと一緒に移動を始めた。
「カミル、、濡れちゃうよ、、、。」
「アハハハ、リネット、。すでに濡れてる。。」
カミルは笑いながら言った。
「カミルごめんね、、」リネットは申し訳なく思って言った。
「リネット、気にするな。いつものことだ」
「いつものこと?!カミル!」リネットは怒ってカミルを見た。
カミルは笑いながらリネットを見た。カミルが優しくリネットに微笑んだ。
リネットもカミルに微笑んだ。気持ちが繋がった様な気がした。
カミルはリネットを城の貴賓室に連れてゆき、カミルも着替える為に城にあるルークラフトの部屋に戻って行った。
リネットは予備のドレスに着替えた。黒のシルクドレス。リネットは髪を下ろして片方を耳にかけて部屋から出た。
まさかプールに落とされるとは、、リネットは少し可笑しくなってクスクスと一人で笑っていた。
「リネット?何が面白いの?」ベティとエルマが言った。
「だってまさか兄妹揃ってプールに落ちるとは、、」リネットは笑いながら言った。
「でも、カミルってなんか王子様みたいに現れて、、なんか、、本当カッコいいね」エルマが言った。
「珍しいエルマがカミル褒めるなんて」リネットは驚いた。
「でもでも、確かにカミルって本当にかっこいいよ。。」
「……そうだね、、。」リネットも言った。
「なーんで!!クラウディアと婚約しちゃったのかな。。もっと一人を楽しめば良いのに。。」
ベティは不服そうに言った。
「クラウディア様は本当に素敵な方だから、カミルが好きになるのわかるわ。アンディもクラウディア様が好きすぎておかしくなっちゃったし、、それほどの方だから、、」
敵わない。。リネットは心のなかで言った。
「でもリネットはカミルに特別に大切にしてもらっているし、そういう意味ではクラウディア様はリネットが気になるんじゃないの?」
ベティは言った。
「確かに、、否定できないわね。あの時も上にクラウディア様居たよね。。じっと見ていたよね。。」
「大丈夫、私はクラウディア様と比べ物にならないほどダメダメだからカミルも心配してくれてて、、そんな感じだからクラウディア様は気にもされていないよ。」
リネットは言った。
「そうかなぁ?」ベティはそう言いながら「リネット、負けんな!」と言って頭を撫でた。
「リネット、自分らしく、、ね」エルマも言った。
リネットは何て答えて良いのか分からなかった。ただ
「ありがとう,二人とも。。大好き」そう言って二人に抱きついた。