婚約者がいる人
それから和やかな雰囲気に変わりパーティーが始まった。
リネットはカーティス公爵に連れられて別室に入った。
カーティス公爵は泣き続けるリネットを抱きしめていた。
「リネット、このハンカチの刺繍はお前がしたのか?」
「はい、、カーティス様を思ってひと針ひと針心を込めて刺繍いたしました。。」
「ありがとう。わしの宝物だよ」
カーティス公爵はリネットの頭にキスをした。
「お祖父様!入ってよろしいですか?」
カミルの声がした。
「ああ、カミルおいで」
カーティス公爵は言った。
リネットは顔を上げてドアの方を見た。
カミルはリネットを見て
「リネット!!」
と言い立ち尽くしていた。
カーティス公爵はそっとリネットから離れ部屋から出て行った。
「リネット、、リネット、、、、」
カミルは何度もリネットを呼んだ。
「カミル、、ごめんね、、」
リネットはカミルに謝った。
「リネット、、謝らなくていい、、俺は、ずっとずっとずっとリネットに会いたかった、、とにかくリネットに会いたかったんだ。。」
カミルはそう言ってリネットに近づいてリネットの頬に触れた。
「カミル、、もう謝ることしかできない。。今まで言えなくて、、ごめんなさい、、本当に、、」
「いい、いいんだ、リネットが生きていてくれただけで、またこうして会えて、、、」
カミルはリネットを強く抱きしめた。
「カミル!会いたかった。。カミルに会いたかった。。」
「リネット、俺も、、」
二人は何も言えなくなり抱き合った。
「カミル、、髪が伸びたね」
リネットはカミルの髪にそっと触れて言った。
「ああ、リネットに会えるまで切らないと願掛けていたから、、」
カミルは言った。
「カミル、、そんな事しててくれたの?」
リネットは驚いた。
「何度もリネットに会いに行こうと思って、でも俺はもう昔のように自分だけの判断で決められなくなって、、、唯一できる事がこんな事しかなかった。」
カミルはリネットを抱きしめたまま言った。
「カミル、、十分、、カミルがそんな事を思ってくれただけで十分、、ありがとう、、」
リネットはカミルを抱きしめた。
「コンコン」
ドアがノックされた。
「なんだ?」
カミルが言った。
「カミルさま、クラウディア様が探しておいでです」
カミルは黙っている。
リネットは思い出した。
カミルは婚約者がいる人だった。
「あ、、、ごめんなさい、、カミルはクラウディア様と婚約したんだよね、、こんな所でカミルを独り占めしてはいけなかった。。カミル、もう大丈夫」
「。。。リネット、、、、先に会場に戻ってお祖父様を呼んでくる、、、」
カミルは一瞬黙ってからリネットを残して部屋から出て行った。