拉致
「ハッ」
リネットは意識を取り戻した。目を開けると馬車の荷台の上だった。
体を起こし周りを見ると大人の女性や小さな子供がが泣きながら肩を寄せ合っていた。
「ここは?」
リネットは目の前にいる女性に聞いた。
「奴隷市場に行く馬車」
女は低い声でいった。
「奴隷市場?」
リネットは一体自分がなぜこんな所にいるのかわからなかった。
「ああ、起きたか」
仲買人のような男がリネットに声をかけた。
「一体ここは、私はどうしてここにいるのですか?!」
リネットは泣きそうになりながら聞いた。
「運が悪かったな、、お前は間違えてここに連れてこられたんだ。今更返すこともできないからな、悪く思うな」
男はヘラヘラと笑いながら言った。
「間違えた?!どう言うことですか?!」
「あんたの乗った船の特別室、二つあってあんたじゃない方を連れてくる所間違えられたわけさ。」
「間違えたなら帰らせて下さい」
「それはできない。あんた見たところどこかの令嬢だろ?あんたを返したら仕返しされるからな、殺されないだけマシだぜ」
「だからって売る訳ですか?」
「悪いな、諦めてくれ」
リネットはどうしていいのかわからない。だけど心のどこかでこれでいいのかもしれない,,。そう思う気持ちもあった。
このままルークラフト公爵家で匿ってもらい続けるわけにはいかないと思っていた。
カミルと付き合っているクラウディアはどこかの国のお姫様だ。リネットがいたらこれこそ厄介な問題になる。
これでいい。リネットは覚悟をきめた。
またあの頃に戻るだけ。カーティス公爵とカミルの事を考えと辛かった。
だけどこれ以上二人に迷惑をかけたくない。その気持ちが強かった。
「リネットが居なくなった?!」
カーティス公爵はリネットに遅れて二日後にルークラフトの船で帝都に帰国した。
その為リネットがいなくなって四日後にその一報を聞いた。
「一体どう言うことだ!!!」
カーティス公爵は騎士達から話を聞いた。
騎士達が一旦自分達の部屋に戻り再びリネットの部屋にいった時、鍵は閉まっていた。
声をかけたが返事がなかったので休んでいると判断して数時間後、食事を運んできた使用人が困っていたので騎士はリネットに声をかけたが一向に返事がなく異変に気がついた時にはリネットの姿はなく、船も出港してしまっていた。
すぐさま船内を隈なく探したが見つからず、船から降ろされた可能性があったが既に船は帝国に向け出航しており何もできなかった。
船が帝国に到着する時にはルークラフト公爵家の船も出航しており手も足も出ない状態だった。
カーティス公爵は手を尽くしたがリネットは見つからなかった。
カミルにはリネットがいなくなったことは伝えないでいた。