音楽のないダンス
「リネット、今日はとんでもない日になってしまったな」
カーティス公爵が言った。
「いえ、カーティス公爵様にご迷惑をお掛けしたのでは、、と思うと、、」
「何を言う、ワシはこんな美しい孫娘を自慢できたのだ。しかも皇帝相手でも堂々として、ダンスも素晴らしかった」
「カーティス様、幼い頃習ったままですので拙いダンスでお恥ずかしいかぎりです。」
「いや、リネット、徹底的に教育されたのだろう、完璧なダンスだったぞ、ワシは皇帝が羨ましかった、ハハハ」
カーティス公爵はそう言って豪快に笑った。
「ところでカミルの事だが、どう話そうかの、、、」
「カーティス様、カミルはどう思ったのでしょうか、、、。」
「ハハハ、ワシの孫だからリネットに釘付けだったな。これで目が覚めるといいがな」
「え?どういう意味ですか?」リネットは聞いた。
「まあ、まずは家に帰ろう」そう言って二人は邸宅に帰った。
正面ホールに入った時、なぜかカミルが立っていた。
「カミル早かったの!」
カーティス公爵は笑っていた。
「お祖父様、そんなことより説明して下さい」
「カミル、リネットをエスコートしなさい、こんな美しいレディを一人で部屋に向かわせるつもりか?」
「カーティス様、大丈夫です、私は一人で歩けますから」リネットは焦った。
「リネット、こちらへ」
カミルはリネットの手を優しく取りリネットの手にキスをした。
「美しい姫様、カミルがご案内申し上げます」
そう言ってリネットを見上げた。リネットは耳まで赤くなって
「カミルったら冗談が過ぎるわ!」と言って笑った。
「冗談?あの皇帝でさえリネットにそうしたんだ、俺が同じことをすると冗談になるのか?ひどいなリネットは!」
そう言って笑った。
「カミル、心配してくれてありがとう」
リネットは言った。
「本当、どうなるかと思った。リネットは社交界苦手だから、、でも、、」
カミルはリネットを見つめて言った。
「リネット、違う人に見えた」
「……カミル、正直言って怖かったけど、カミルが居て、カーティス様がいて本当に良かった。もう金輪際行かないわ」
リネットは言った。
「リネット、こんなに綺麗なのに、。もったいない、ドレス似合っている。」
「あ、カミル、こんな素敵なプレゼントを本当にありがとう、本当に、、」
リネットは言った。
「リネット、一曲お相手いただけませんか?」
カミルが言った。
「ウフフ、はい、喜んで」
二人は階段のエントラスで突然踊り始めた。
音楽も無かったがお互いを見つめ合い本当に夢のような楽しいダンスを踊った。
「リネットって、何者?」
ダンスが終わり向き合った時にカミルが言った。
「私は、このルークラフト家のメイドです。それではダメ?」
リネットが言った。カミルはリネットを見つめ
「そうだな、リネットは我が家紋のメイドのリネットで大切な家族だ」
そう言ってカミルは微笑んだ。
「ありがとう」リネットはカミルに言った。
「カミル!!」
突然ベティが現れた。
「ベティ?どうしたんだ?」
カミルが驚いてベティに聞いた。
「だって、カミル急に帰っちゃったじゃない、私,私、、」
ベティが泣き始めた。
「ベティ、ごめんなさい、私がカミルを驚かしてしまって、それで、、」リネットが言った。
「カミル、私、私、、」
ベティがカミルの所に泣きながら行きカミルに抱きついた。
「ベティ、ごめん、」
カミルはベティを受け止めてながら謝っていた。
リネットはそんな二人を見て、
「カミル、ベティ、ごめんなさい、、私行くね」
そう言ってその場から立ち去った。
部屋に帰ったリネットはそのままソファーに倒れ込んだ。
カミルと踊った事、本当に嬉しかった。一生の思い出になりそう。
もう二度とないし、、ベティ、、。怒らせちゃったかな。。なんだか、嫌われているような気がする。。
このまま二人が結婚してもお仕えしようと思ったけど、、
難しいかもしれない。。
でも何処へ行けばいいのだろう。。。リネットは悲しくなった。
一生懸命やってもどうしようもない事はある。
本当にカミルもベティも大切な人だから、心からお仕えしようと思ってもそれは結局自分の都合なのかもしれない。。
リネットは不安になった。
また一人になってしまうかもしれない。。
「疲れた、、」
リネットは髪を解きそのままソファーで眠った。




