悪魔の子
ある日の事、リネットは倉庫の中に沢山の絨毯があったのを思い出し、カーティス公爵の部屋の絨毯を替えようと思い倉庫に向かった。
倉庫の近くには大きな銀杏の木があり、その下にはベンチが備え付けられておりそこにカミルとシルビアが座って話をしている姿をみた。邪魔しないように静かに倉庫に入り絨毯を選んでいた時カミルの
「リネットが」
という声が聞こえ、自分のことが話題にあがっていることに不安を感じた。なぜならカミルの声は少し怒っているようだった。悪いと思いながらリネットは、耳を澄まし会話を聞いた。
「嫌いじゃないけれど、どうしても、、」
シンディの声が聞こえた。
「リネットと俺は同じ孤児院で育った」
「ええ、分かっています、でも、あなたは生まれが違います、生まれながらに貴族なんです、でもリネットは違います、私にもリネットが良い子だってわかります。嫌いじゃありません、だけど、どうしても貴族としてどうしても受け入れられないのです。。。」
「リネットが貴族だったら良いというのか?」
「それもあります。でもそれだけじゃない、リネットは黒髪に黒い瞳、、幼い頃からそれは悪魔の子だと教えられた私は、
どうしても,どうしても受け入れられないのです。。」
「なんて事を言うんだ!俺はそういう考えが嫌いだと知っているじゃないか!」
リネットは自分の存在が原因で二人が争わなくても良いことを争っていることに心から申し訳なく思った。
せっかくあんなに幸せそうだった二人がこんなことで別れてしまったらリネットはカミルに会わす顔がないと思った。
もう、ここにいてはいけない。。リネットは出てゆくことにした。そっと静かに倉庫から出て部屋に戻った。なるべく早く出ていかないと二人が別れてしまう。リネットは荷づくりをしようと思ったが、もっていくものは何も無かった。
けれどせめて髪だけは隠していかないとすぐに王国の人間に見つかってしまうと思い、スカーフで隠そうとしたが長さがあって隠れない。
まとめたがリネットのしなやかな髪はきちんと結わないと落ちて来てしまう。これは切るしか無い。リネットはハサミを取り出し髪を切ろうとした時、カーティス公爵が部屋に入ってきた。
「あ、」
リネットは慌ててハサミを隠したが遅かった。
「リネット!」
カーティス公爵は悲しみを浮かべた顔でリネットを見つめた。
「カーティス様、、」
リネットはどう説明したら良いのか分からなくなってしまった。
「カーティス様、、、私がここにいることでカミルに迷惑をかけています。。もしカミルがシンディ様と別れてしまったら、、、私は自分を許せそうにありません。。」
リネットはカーティス公爵の顔が見れなかった。
「だから、ここから出て行きます。。」リネットは涙を落とした。
「カミル、リネットはそう言っているが、お前はどう思う?」
カーティス公爵が言った。
「え?」
リネットは驚いてドアの方を見るとカーティス公爵の後ろにはカミルが立っていた。
「カミル!ごめんなさい,。本当に。ごめんなさい」
リネットは謝った。カミルは何も言わない。
「カミル、ワシはカミルがリネットに出ていって欲しいと言うならそれはそれで受け入れる。だけどな,もう一生リネットには会えないぞ、。これは脅しなんかじゃない、本当に一生会えないだろう、どちらにしてもワシはカミルの決定をのむ。」
カーティス公爵はカミルを見た。
カミルはリネットの前に来て言った。
「リネット、お前俺のことわかっているはずなのになんで謝る?俺は怒っているんだ。お前に」
カミルは言った。リネットはもう謝るしかない
「カミル、折角良くしてもらったのに、本当私って何も返せてなくて、甘えすぎてた。もっと自分のこと見なきゃ行けなかったのに、、ごめんなさい。。それしか言えない。。」
「リネット!止めろ!俺はリネットにそんな風に思って欲しくない、リネットは大切な家族なんだ、それを理解しない人間とは感覚が違うだけなんだ、そんな人間のためにリネットを出ていかせる訳がないじゃないか!!お前俺をどんな人間とおもっているんだ!!心外だ!」
カミルは怒ってリネットに言った。
「カミル、ごめん、どっちにしてもごめんなさい。」リネットは涙が止まらなくなった。
「カミル、可愛いリネットを泣かせるな!」
カーティス公爵が言った。
「わかってる!リネット泣くな!」お前が泣くとみんな悲しいんだ!
「カミル、ごめんね、ありがとう」リネットはエプロンを目に当てて泣いた。
「大切なリネットを出てゆかせる訳がないだろ?お前は俺の家族なんだ」
そう言ってリネットを抱きしめた。
リネットはこの暖かい二人の為ならなんでもしようと思った。こんな私を受け入れてくれてありがとう、、
カーティス公爵はそんな二人を見て嬉しそうに部屋を出ていった。
そして貴賓室にいるシンディに言った。
「シンディ嬢、先ほどカミルがあなたに別れを告げたと言いました」
「カーティス公爵様、私は受け入れられません。。」シンディは言った。
「だけどな、カミルはリネットを大切に思っているんだ、それは理解できるだろ?」
「ええ、理解しています、ただ」
「ただ?」
「生まれが貴族じゃないリネットを、悪魔の子と言われるあの髪と瞳をどうしても受け入れられないのです。」
「……シンディ嬢、世界は広い、その言葉を後悔する日が来るぞ」
「おっしゃっている意味がわかりませんが、私は自分の感覚を捨てられません。カミルも諦められません」
「そうか、シンディ、其方の器ではカミルは無理じゃ。諦めなさい」
カーティス公爵は言った。
「嫌です、諦められません。」
「カミルはもうあなたをもう見ていないぞ。では失礼」カーティス公爵はそう言って部屋を出ていった。
その後アーサーがシンディを馬車まで送りそれ以降カミルは二度とシンディに会わなかった。




