序章 第1話 護衛任務①
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
今回は挫折しないようにします。
色々あるので、投稿頻度は多分遅いです。
「死ね!クソガキ!」
また殴られた。
怒号とともに祖父に海の頬が殴られる。
世の中は理不尽な事でいっぱいと
聞くがいっぱいどころでは無いように感じる。
何もしていないのに殴られる。
理不尽どころでは無い。一方的な暴力だ。
痛い。苦しい。辛い。悲しい。誰か助けてくれ。
いつになったらこの地獄から開放されるのだろうか。
解放されないかもしれない。
なら自殺するか?いや。
そんなことを祖父が許すはずがない。
死なせてもくれない。どうしたら良いのだろう。
段々と意識が遠のいて行く。今度こそ死ねるのか?
いや違う。単に眠いだけだ。まずい。寝てしまう。
だが眠気に対抗する元気もない。
もうどうでも良い。流れに身を任せよう。
どうせ明日も地獄が待っているのだから。
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「…起きろ!起きろ!時間だぞ?」
誰かが呼んでいる。名前は聞き取れない。
「起きろ!起きろって!」
祖父の怒号に似た大きな声に海は覚醒する。
「…」
「起きたか。おはよう。よく寝れたか?」
この人物は海の小隊の小隊長。元陸上自衛官だ。
名前は近藤悠斗。コードネーム『 朝焼け』である。
「…また同じ夢を見てた。殴られる夢。」
「またあの時の夢か?」
「うん。戦場は余裕なのに。」
「まぁ、気にすんな。今は仕方ない。時間が解決してくれるさ。焦らずゆっくり行こうぜ?」
「…うん。朝の用意してくる。」
「分かった!行ってこい!朝飯食いながらブリーフィングするぞ。」
「了解。」
そう言い海は洗顔をしに向かう。
顔を洗うと眠気が一気に吹っ飛ぶ気がする。
朝、冷水で顔を思いっきり洗い目を覚まさせる。
これが海の朝のルーティンだ。
海は小隊に配属されるまでヘアセットをしていたが
小隊に配属されてからはヘアセットをしていない。
というよりする余裕が無いのだ。
海の所属する第3小隊は、
中東のとある国に派遣されている。
アラゴスタという国だ。
ここには国際テロ組織『ユーリカイ』の
一派が潜伏しているらしい。
海たちはその掃討のために派遣されたのだろう。
事前情報では、他にいくつかの国がまとまって
軍事行動をする国連の多国籍軍が駐留していると
聞いた。PKOの1種だろうと海は考える。
『傭兵小隊』は管轄も運用方法も
何もかもが自衛隊とは異なる。
その為国連からは傭兵とは名ばかりであり、
正規兵として扱うようにとの事だ。
詰まるところこの『傭兵小隊』は、
自衛隊とは別の部隊であり、
自衛隊法が適用されない、
国際法上は正規兵として扱われる部隊となる。
また政府は創立に当たり野党の反対を
押し切ったらしいが海は詳しくは知らない。
もし本当に反対を押し切ったのなら
当然野党からボロが出るはずだ。
批判的な記事を書くマスコミも出てくるだろう。
だが何も起きていない。
国民は何も知らない。報道も起きていない。
日本がこんなに情報統制が出来るとも思わない。
かと言って反対派を暗殺するなど日本が出来るはずがない。となると真実は謎のままである。
恐らく陸自の特殊作戦群や
海自の特別警備隊と同じ様な位置付けなのだろう。
2つの特殊部隊よりも情報が開示されていない。
そう考えるのが妥当だ。
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海は砂漠迷彩の服に着替え、タクティカルブーツを
履くといつも朝食を取っている場所に向かう。
海はレッグホルスターに
刺さっているSIGP320のセーフティを確認する。
トリガーを引き動かない事を
確認した後再びセーフティを確認した。
どうやら問題なさそうだ。
一連の動作を終えた海はP320をホルスターに戻した。
食事会場には海の小隊と米軍の小隊が居る。
2つの団体は談笑しながら食事を進めていた。
「海か!?海だよな!久しぶりだな!覚えてるか?」
1人の少尉が海に話しかける。
その途端全員が海の方を向いた。海はその者を見る。
「ギール少尉?生きてたんだ。久しぶりだね。」
「相変わらず冷たいな。だがそれがお前だよ。ちっとも変わってねぇ。しかしデカくなったな!見違えたぜ。」
「数年経ってるし。当たり前。」
そう告げると海は朝食を注ぎに向かう。
ギール・ユラーレン少尉。
米軍の小隊のメンバーの1人である。
彼を見たのは数年ぶりだ。
彼が居るということは恐らく…
「彼らが居るって事は米軍との共同作戦なの?」
海は朝食を注ぎながら小隊長の悠斗に聞く。
「そうだ。今回の作戦は米軍との共同作戦になる。」
「作戦内容は?」
海は自分の席に着きながら聞く。
「護衛任務だ。米軍とな。」
「護衛任務なのに米軍との共同作戦なんだ。」
海は疑問をそのままぶつける。
その時、1人の米軍将校が立ち上がった。
肌色は白。その屈強な体格は熊を連想させる。
階級は大佐だろうか。
海は階級にはあまり詳しくないが
あの階級章は見たことがある気がする。
しかし何故大佐クラスがこんな所に…?
そんな疑問を振り切る勢いで、
その熊のような男は口を開いた。
「その点に付いては私から説明する。」
「あなたは?」
「私はギール少尉の上官のタール・ギュリター大佐だ。私は基本的に本部に居るのだが、今回は視察という名目でこの基地に来た。」
「なるほどねー。それにしても大佐殿、身体ゴツいね。まるで熊みたい。」
「良く言われるさ。さて、本題だ。残念ながら護衛対象の容姿は言えない。だが、我々正規軍が護衛しなければならない程の地位にあるとは言っておこう。」
「ってことは政治家かな?しかもかなり上の。総理までは行かないだろうけど、それに近いクラス。官房長官とか、そこら辺な気がする。」
「私からは何も言えんが、予想通りとだけ言っておこう。」
「何それ笑言ってんじゃん笑」
「で?どこの国の人?」
「隣国、ユーゴスタだ。」
ユーゴスタ、アラゴスタの隣国。
小国で紛争に巻き込まれながらも、経済発展を遂げている国。経済力はあるが日本以上の平和主義のために、軍事力が乏しい。その為各国に狙いをつけられている国だ。
「あー理由分かったかも。」
「ほう?言ってみろ。」
「考えたらわかるよ。軍事力が乏しいんでしょ?てことは警備に回す人員が居ない。よって俺らに依頼した。違うかな?」
「正解だ。ユーゴスタの民は軍事の事を何も知らない。国自体が、軍事に興味が無いからな。警察力で警備をしようとしたのだろうが警察もまともな装備がない。だから我々に依頼したというわけだ。」
「でもなんでユーゴスタの政治のトップがこんな国へ?視察か何か?それともなんかある?」
「さぁな。私には分からん。政治にあまり興味がないのでな。」
「大佐はもう少し政治に興味を持って下さい…自分達が危うくなるかも知れないんですよ?高校生じゃないんだから…」
1人の米軍中佐がタールに告げた。
恐らくこの者は副官だろうと海は考える。
「そうか?そうなのか?」
「大佐、これ言うの何回目ですか…」
「覚えてないな。」
「大佐、歳なんじゃ…」
「私はまだ、46だぞ?」
「そういう事じゃなくて…」
そんなやり取りを横目に海は朝食を掻き込む。
「ご馳走様でした。」
海は朝食を終え食器等を返却口に置く。
そして悠斗に耳打ちをした。
「先戻ってる。何か言うべき事があったら連絡して。」
「分かった。いつも通りな。」
そう悠斗が海に返事をすると、海は頷き歩き出す。
「……」
因みに大佐と中佐は
まだ先程のやり取りを続けていた。
「いい歳したおっさん2人が何してんだか…」
海は小声で上官(海には上官だろうと関係ない)
を少しだけ罵ると、呆れ顔でその場を立ち去った。
次回は、ドンパチする1歩手前まで書くつもりです。
次回をお楽しみに!