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第68話 源昭

「ま、まずは奴を狙え!!」


「「「「「オォ―ッ!!」」」」」


 マシンガンなんて武器を知らない野木衆の者たちにとって、凛久は花紡衆以上の脅威でしかない。

 そのため、野木衆の隊長格の男は、花紡衆よりも先に凛久を殺すことを指示した。


「そうはさせるかよ!!」


「ガッ!?」


 四方から凛久に迫る野木衆たち。

 しかし、それを阻止するように、花紡衆の者たちが割って入る。

 まるで全員で守るようにして、凛久の周りに集まる。


「凛久殿に近付かせるな!!」


「オォーッ!!」


 花紡衆の1人である悠斗の言葉に、全員が返事をする。

 自分たち花紡衆が、再度増員した野木衆に勝利するためには、凛久の異世界武器に頼るしかない。

 それを発揮してもらうために、花紡衆の者たちは身を挺してでも凛久を守ることを決意した。


「くっ!! 花紡衆の奴らめ……」


 ここまでの戦いで、花紡衆の者たちにはかなりの仲間が殺られた。

 しかし、彼らの死は無駄ではない。

 何故なら、花紡衆の者たちの回復薬の使用頻度からいって、もう残り少ないことが見て取れるからだ。

 増員もした今なら、花紡衆の者たちを全滅させることも出来なくはない。

 そう思っていたというのに、おかしな武器を持った男の出現で全てが狂った。

 強力で連射型の未知の武器により、増員したばかりの仲間の少なくない人数が致命傷を負ってしまった。

 それによって、花紡衆たちの士気まで上がっている。

 死にぞこないにもかかわらず、やる気になっている花紡衆たちを見て、野木衆の隊長格の男は歯ぎしりをした。


「何とかして奴を仕留めろ!!」


「「「「「オォー!!」」」」」


 花紡衆の奴らだけなら、数で仕留めることは不可能ではない。

 それよりも、やはり凛久を仕留めることを優先するべきだ。

 そのため、隊長格の男は凛久を指差し、仕留めることを仲間に指示する。

 他の者たちからしても、凛久の危険性を感じ取っている。

 そのため、指示に従って動き出した。


「フンッ!!」


「ぐっ!」


 凛久を仕留めるには花紡衆が邪魔になる。

 しかし、先に花紡衆の者たちを仕留めようとすれば、凛久のマシンガンの餌食になる。

 それならばどうすれば良いか。

 両方を狙えばいい。

 数がいる自分たちなら、それも可能。

 そう考えたのか、野木衆の者たちは、凛久とその周囲にいる花紡衆たちを狙う者に分かれ、一斉に襲い掛かっていった。


「本当に多いな……」


 花紡衆たちがいてくれることで、自分に迫る野木衆の数は少ない。

 しかし、それでも隙をついて襲い掛かってくる者がいる。

 そんな敵に対し、凛久は銃とマシンガンを併用して仕留める。

 敵の数を減らせているとは思うのだが、なかなか終わりが見えてこない。

 そのことに、凛久は若干うんざりしてきた。


「くそっ!!」


 凛久と花紡衆たちによって、ドンドン仲間が負傷させられていく。

 あまりの減り方に、敗北するイメージまで頭に浮かんできた。

 さすがにそれはないだろうと思いつつも、一番の問題となる凛久に届かない。

 そのことから、隊長格の男は頭を悩ませた。


「フンッ!!」


「ガッ!!」「ウッ!!」「グッ!!」


 凛久は花紡衆たちに守られながら、マシンガンを撃ちまくり敵の数を減らしていく。

 

『弾が間に合うかな……』


 マシンガンを撃ちまくるのはいいが、凛久の中には不安な点があった。

 アカルジーラ迷宮の最下層で仕留めた蜂の針で作ったマシンガン用の弾が、いつまでもつか分からないということだ。

 今回の戦いのためにかなりの数を揃えていたのが、思っていた以上に野木衆の数が多い。

 このままでは、もしかしたら弾切れを起こしてしまうかもしれない。


「手こずっているな?」


「っっっ!?」


 何の気配も感じなかった。

 いきなり背後から話しかけられ、隊長格の男は目を見開く。

 そして、すぐさま背後へ向けて振り返った。


「源昭殿!?」


 声でなんとなく気付いていたが、ここに来るとは思っていなかった相手なだけに、隊長格の男は驚きが隠せない。

 現れたのは、道豪の片腕とも言われる源昭だったからだ。


「あいつだな……」


 源昭と呼ばれた男は、現状を見て何かを確信する。

 その視線の先には凛久がいた。


「俺があいつを花紡衆から離す。その隙に、お前たちは花紡衆を相手にしろ」


「か、畏まりました!」


 源昭は、凛久を指差して指示を出す。

 凛久がいなくなれば、花紡衆を倒すことは難しくない。

 そうしてくれるのはありがたいため、隊長格の男は源昭の指示に頷いた。


「源昭!?」


 源昭が現れたことに驚いたのは、何も野木衆の者たちだけではなく悠斗たち花紡衆の者たちもだった。

 房羅と共に道豪の片腕と呼ばれる存在。

 頼吉の護衛役という重要な役目を受けていたはずの彼が、どうしてこんな場所に来ているのか。


「……まさか!?」


 源昭の視線を見ると、確実に凛久に向いている。

 そのことから、悠斗は源昭が凛久を狙っていることに気が付いた。


「っっっ!?」


 悠斗が気付いた時には、源昭は動いていた。

 あっという間に距離を詰めた源昭は、凛久に向かって忍刀で突きを放つ。

 いきなりの攻撃に、凛久は驚きつつも反応し、何とかマシンガンで源昭の突きを受け止めることに成功する。

 しかし、その衝撃によって吹き飛ばされる。

 そのせいで、凛久は花紡衆の輪から離されてしまった。


「お、お前は……!」


 花紡衆たちから離され焦る凛久だが、野木衆で自分を追って来ているのは1人。

 大勢で攻め込まれるのではないのだと分かり少しは落ち着いたが、その1人が強いのは先程の動きだけで理解できる。

 警戒しつつその男の顔をよく見ると、凛久はあることに気が付いた。


「……気付いたか?」


「……いや、見たことあるけど誰だっけ?」


「……貴様!!」


 凛久が自分に気付いたと思い、源昭が問いかける。

 しかし、凛久から返ってきたのは、まるで自分に関心がないと言っているような発言だった。

 そのため、源昭は怒りで打ち震える。


「顔隠してんのが悪いんだよ!」


 他の野木衆同様、源昭は顔の下半分を布で隠している。

 目元だけで判別しろという方が無理なのだ。

 腹を立てる源昭を見て、凛久は反論した。


「貴様に撃たれた痛みを、数倍にして返してやる!!」


「……あぁ、あんた……」


 源昭の言う撃たれた痛み。

 その言葉を聞いて、凛久は源昭が何者なのかに気付いた。



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