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第37話 訓練開始

「なんでこんなことに……」


「クゥ~ン……」


 4畳半ほどの一室。

 その部屋でクウと共に座り込み、凛久は小さく呟いた。

 その呟きに対し、主人である凛久を心配するように、クウは鳴き声を上げた。






◆◆◆◆◆


「ハッ!!」


「ギャウ!!」


 タゴートの町に着いた翌日。

 凛久・クウ・蒼・風巻の4人はアカルジーラ迷宮へ挑んでいた。

 先を進む凛久たちの前に現れたゴブリンに対し、凛久は土魔法の石弾を放ってゴブリンを倒した。

 その後ろには蒼たち控えている。

 ここまで来る飛竜便の代金を稼いでいた時と同様に、誰も手を貸すつもりがない態度だ。


「魔法だけで倒すのって、結構きついんだな?」


「そうだろう。練習が必要だからな」


 手を貸さないのは、凛久の魔法の技術を上げるためだ。

 凛久の場合、武器による戦闘よりも魔法による戦闘の方が期待できる。

 そのため、蒼はこのアカルジーラ迷宮では魔法を主体とした戦闘をするように言ってきた。

 凛久が作ったこっちの世界仕様の銃は、魔力をコントロールすることで威力の向上が期待できる。

 蒼から受けた指示に納得し、凛久は魔法での戦闘をする事を了承した。

 銃という武器の性能に頼っている所が大きいせいか、凛久の魔法の腕はまだまだだ。

 そのため弱い魔物相手とはいえ、魔法だけの戦闘は結構しんどい。


「ところで、何で土魔法なんだ?」


 戦闘で魔法を使用する場合、敵の攻撃に警戒しながら使用する魔法のイメージをしっかりしないとならない。

 それが少しでも早く問題なくできるようになるためには、実践あるのみ。

 別に魔物が倒せればどんな魔法でもよかっただが、凛久は何故だか土魔法を頻繁に使用している。

 魔法の中でも火魔法が威力を出しやすいが、ダンジョン内での火魔法は煙などの問題があるため御法度。

 敵を倒すなら、水魔法や風魔法の水刃や風刃でも良いはずだ。

 それなのに、どうして土魔法を使用しているのかが、蒼には分からなかった。


「蒼のように、寝床が作れるようになりたいからだ。あれができると旅するのに楽だからな」


 町から町へ移動する時に、この世界では道がキレイに整備されていないうえに、自動車など存在していない。

 そのため、1日では着かず野営をする事が多々ある。

 その時、毎回毎回テントを張る必要がある。

 当然持ち運びするため、テントも荷物になる。

 蒼のように魔法で寝床を作れるようになれば、その分荷物を減らすことができる。


「言ってくれれば、私が凛久の分の作るぞ。それに、1人用の寝床程度ならもう作れるんじゃないか?」


「蒼のよりも快適な寝床をつくれるようになりたいからな」


 蒼からすると凛久の魔法の実力はまだまだだが、寝床を作る程度の魔法はもう使えるはずだ。

 そう思って問いかけた蒼に、凛久は自分の考えを返答する。

 凛久が作りたいのは、バンガローだ。

 コテージまで行くと、キャンプしている感が少ないため、程よい不便を味わうにはバンガローだと考えたためだ。

 ちなみに、バンガローとコテージの違いは、トイレやシャワーやキッチンなどの水回り設備がないのがバンガローで、それら御設備が付いているのがコテージだ。


「動機があれだが、魔法が上達するのなら構わないか……」


 安全にう移民ができれば十分の蒼からすると、そこまで寝床にこだわる必要があるのか疑問だ。

 理由はどうあれ、やる気になっているのなら構わないだろうと、蒼はそのまま凛久の好きなようにやらせることにした。


「今日はこの辺にしよう!」


「えっ? アカルジーラ迷宮では強い魔物を相手にするんじゃなかったのか?」


 何十層にもなっていると言われているアカルジーラ迷宮。

 もしかしたら、百層以上にまで成長している可能性もある。

 生物を殺すことで僅かにステータスが成長すると言われているこの世界では、強力な魔物を倒す方が顕著に結果に出る。

 アカルジーラ迷宮に来たのは、レベルアップをすらために下層に行って強い魔物を相手にするという話だったはず。

 それなのに、どうして10層程度の上層で引き返すのだろうか。

 蒼の意図が分からず、凛久は思わず問いかけた。


「一気に下層に向かう訳ないだろ。凛久自身で倒せるようになってもらわないといけないから、徐々に敵の強さを上げて行く予定だ」


「そうか……」


 生物を殺せばステータスが上昇するといっても、戦闘に参加していればいいという訳でもない。

 きちんと敵にダメージを与えられていないと、敵を殺せたところで全く成長しないという。

 では、どれだけ的にダメージを与えられればいいのかとか疑問に思うが、そこら辺は神のみぞ知ると言ったところらしい。

 結局、成長するためには、凛久個人が強い魔物を相手にしても倒せる実力になれば良いだけだ。

 そのために、上層から中層、そして最終的には下層へと、徐々に敵の強さを上げていく予定のようだ。

 よく考えたら、いきなり下層に行ったとしても、自分は蒼たちにとって完全に足手まといにしかならない。

 そのため、凛久は蒼の説明に納得した。 


「凛久の訓練と共に、クウも戦闘してもらうからな?」


「ワウッ!」


 蒼としては、凛久の成長が1番の目的だが、従魔のクウもついでに鍛えるつもりだ。

 凛久の助けにもなるし、蒼としては少しでも戦力の増強になればいいと考えたからだ。

 蒼から話しかけられたクウは、まるで任せてと言うかのように、尻尾を振って声を上げた。


「それに、下層に行くには4人じゃ危ないかもしれない。念のため、世界に散らばっていた花紡衆の数人がタゴートの町に向かっている」


「あと一週間ほどで到着する予定です」


 このダンジョンは、できてからかなりの年月が経っている。

 それだけの期間攻略されず成長を続けて下層の魔物となると、どれほどの強さなのかは蒼たちにも分からない。

 そのため、下層へ向かう時は花紡衆の者を増やしてから向かうつもりだ。

 その花紡衆の者たちが到着するのがいつなのか。

 蒼は風巻へ視線を送るだけで問いかけ、風巻も視線の意図を理解して返答した。


「そうか。じゃあ、下層に向かうにしても一週間後だな。それまでに中層の魔物が相手でも大丈夫なように鍛えてやる」


「お手柔らかに頼むよ……」


 このダンジョンの中層だと、今の凛久にはかなり危険な領域だ。

 そこを一週間で慣れろと平然と言う蒼に引きつつ、凛久は魔法による戦闘を再開させたのだった。



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